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第1話 何度死んでもゾンビだらけの終末世界
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"死んだほうがマシ"
そんな言葉を簡単に言えるのは実際に死んだことがない奴の言葉だと思う。
…とは言え、死んだことがある奴の方が少ないとは思うので無理もないことなんだろう。事実、私だって最初は"そう"思っていた。
終わりのない恐怖と絶望に押し潰されそうになりながら、息を顰めて耐え忍ぶ日々を送るくらいなら、一瞬で楽になれる方が良いと考えるのはごく自然なことだろう。
けれど、"死"はそんな楽なものではなかったんだ。
これは人類がゾンビウイルスに感染しゾンビと化した世界に転生してしまった"私"が、死ぬことを繰り返しながらも、生き延びる為に戦い続ける物語である。
私は住宅地の一角にある物陰に隠れ、ふらふらと歩いている男性のゾンビがもう少し近づいてくるのを待つ。
手にはバールを両手で握り締め、力いっぱい振るう心の準備を完了している。
幸い相手は一体。
ゾンビが複数いるなら、バレたらほぼほぼ殺される。囲まれて嬲り殺しにされる前に、息を殺し、忍び足でこの場を去っているところだが、相手が単体なら話は別だ。
この周辺を探索して物資を探したい私にとって、周囲をウロウロしているゾンビの数を減らすことは生存できる時間を少しでも伸ばす為には大事なことなのである。
ゾンビたちが集まってグループになったりしないうちに各個撃破しておくに越したことはないと言う訳だ。
私が最大で生きられた時間は今のところわずか3日間。
最初にこの世界に来た時には、訳が分からないまま飛び出してきたゾンビに食いつかれ、生きたまま肉を食い千切られ、死ぬまで痛みに苦しむというとんでもない死に方をした。
あの瞬間ほど早く殺してくれと願ったこともなかっただろう。
その後、ようやく意識を失って、痛みと苦しみから解放されたと思ったのに…気が付いた時にはまた同じゾンビパンデミックな世界へと戻ってきてしまっていた。
姿かたちは別人になっていたし、自分が死んだ地点へと戻れば、先ほどまでの自分と同じ姿をしたゾンビがウロウロしているんだから、もう私は気が狂いそうになった。
"死に戻り"ですらない。どう言う訳かは全くわからないが、自分が死んだ瞬間に、同じ世界の別人に転生しているのだ。
何度でもコンテニュー出来ると言えば聞こえは良いが、その実、永遠にこのゾンビ世界を生きて・死に続けなければならないということである。
神様がいるのなら、こんな終わりのない地獄で私に一体何をさせようとしているのか問い詰めたくなる。
(……なんて、考えてても仕方ない。今は、アレを始末しないと……)
男性のゾンビがゆらりと方向転換し、こちらに背を向けた。
私は、物陰から表へとそっと出て行くと、バールを構えたまま、忍び歩きでゾンビの背後へと忍び寄る。
(…この位置なら……せーのっ………)
私はバールを振りかぶり、ゾンビの頭へと思い切り振り降ろした。
グシャっという何度聞いても聞きなれない嫌な音と共に、地面に血しぶきが飛ぶ。
ゾンビの身体が地面に倒れ込むのを確認してから、さらに私はバールをゾンビの頭へと数度振り降ろす。
ゾンビは悲鳴なんて上げない。苦しんだりもしない。けれど、四肢がビクビクと動いている間は、まだ生きている可能性がある。
だから、私はそんな動きが無くなるまで、何度でも硬い金属の棒をゾンビの頭へと打ち付け続けた。
目の前に倒れたゾンビがピクリとも動かなくなった頃、私は手にジンジンとした痺れのような感覚を覚えていた。
殴ると殴った方も痛い…なんて、聞いたことはあれど、自分で体験することになるなんて思ってもみなかった。
ゾンビとは言え、見た目はおおむね人間だ。人の形をしたものを鈍器でぶん殴るのには最初は抵抗もあった。
…とは言え、最初は不意打ちで、二度目は戸惑っているうちに、三度目はパニックを起こしている間に…と、何度も何度もゾンビに殺されているうちに、死にたくない・殺されたくないという思いが、ついに倫理観を上回ったと言うことだろう。
いかに、上手くゾンビを殺して自分の身を守るか…を考えるようになっていった。
転生し、目が覚めてすぐに武器になるものを手に入れることが出来た時は幸いだ。武器になるものが何もないままゾンビと遭遇し、転生して数分で次の人生を始めなくてはならなくなってしまったこともある。
せめて楽に死ねるならまだしも、ゾンビに殺される時には、いちいち早く殺してくれと思うくらいの痛みを味わうことになるのだから、あんな思いは二度と味わいたくない…。
身体は生まれ変わって元気になっても、食いつかれた時の痛み、肉を引きちぎられる時の激痛…燃えるような熱さ…。思い出すだけで吐きそうになる。
本当なら少しでも安全な場所に引きこもっていたいくらいだ。
けれど、本当に厄介なことにこんな世界でこんな状況でも、お腹は減るし、身体は汚れる。運よくゾンビから隠れることが出来たとして、そのまま引きこもっていたら餓死待ったなしという訳である。
(…ゾンビに食い殺されるぐらいなら餓死した方がマシ…かも知れないけど…)
隠れ家にしている住宅の洗面所にある鏡に映った自分の顔を見て、つい表情を顰めてしまう。
顔立ち自体は悪くない。サラサラの赤毛のショートボブも可愛らしい髪型でちょっと気に入ってはいる。
…けれど、返り血と埃でひどく肌は汚れているし、目の下にはクマがはっきり浮いているし、何よりすっかりやつれてしまっている。
何度も何度も速攻で死んで転生するを繰り返したものだから、この顔が何人目の私なのかもう正確には覚えていないけれど、かつての私が死んだ地点では、以前の私が今はゾンビとして元気に歩き回っていることだろうと考えると、あまり思い出したくもなかった。
そんな言葉を簡単に言えるのは実際に死んだことがない奴の言葉だと思う。
…とは言え、死んだことがある奴の方が少ないとは思うので無理もないことなんだろう。事実、私だって最初は"そう"思っていた。
終わりのない恐怖と絶望に押し潰されそうになりながら、息を顰めて耐え忍ぶ日々を送るくらいなら、一瞬で楽になれる方が良いと考えるのはごく自然なことだろう。
けれど、"死"はそんな楽なものではなかったんだ。
これは人類がゾンビウイルスに感染しゾンビと化した世界に転生してしまった"私"が、死ぬことを繰り返しながらも、生き延びる為に戦い続ける物語である。
私は住宅地の一角にある物陰に隠れ、ふらふらと歩いている男性のゾンビがもう少し近づいてくるのを待つ。
手にはバールを両手で握り締め、力いっぱい振るう心の準備を完了している。
幸い相手は一体。
ゾンビが複数いるなら、バレたらほぼほぼ殺される。囲まれて嬲り殺しにされる前に、息を殺し、忍び足でこの場を去っているところだが、相手が単体なら話は別だ。
この周辺を探索して物資を探したい私にとって、周囲をウロウロしているゾンビの数を減らすことは生存できる時間を少しでも伸ばす為には大事なことなのである。
ゾンビたちが集まってグループになったりしないうちに各個撃破しておくに越したことはないと言う訳だ。
私が最大で生きられた時間は今のところわずか3日間。
最初にこの世界に来た時には、訳が分からないまま飛び出してきたゾンビに食いつかれ、生きたまま肉を食い千切られ、死ぬまで痛みに苦しむというとんでもない死に方をした。
あの瞬間ほど早く殺してくれと願ったこともなかっただろう。
その後、ようやく意識を失って、痛みと苦しみから解放されたと思ったのに…気が付いた時にはまた同じゾンビパンデミックな世界へと戻ってきてしまっていた。
姿かたちは別人になっていたし、自分が死んだ地点へと戻れば、先ほどまでの自分と同じ姿をしたゾンビがウロウロしているんだから、もう私は気が狂いそうになった。
"死に戻り"ですらない。どう言う訳かは全くわからないが、自分が死んだ瞬間に、同じ世界の別人に転生しているのだ。
何度でもコンテニュー出来ると言えば聞こえは良いが、その実、永遠にこのゾンビ世界を生きて・死に続けなければならないということである。
神様がいるのなら、こんな終わりのない地獄で私に一体何をさせようとしているのか問い詰めたくなる。
(……なんて、考えてても仕方ない。今は、アレを始末しないと……)
男性のゾンビがゆらりと方向転換し、こちらに背を向けた。
私は、物陰から表へとそっと出て行くと、バールを構えたまま、忍び歩きでゾンビの背後へと忍び寄る。
(…この位置なら……せーのっ………)
私はバールを振りかぶり、ゾンビの頭へと思い切り振り降ろした。
グシャっという何度聞いても聞きなれない嫌な音と共に、地面に血しぶきが飛ぶ。
ゾンビの身体が地面に倒れ込むのを確認してから、さらに私はバールをゾンビの頭へと数度振り降ろす。
ゾンビは悲鳴なんて上げない。苦しんだりもしない。けれど、四肢がビクビクと動いている間は、まだ生きている可能性がある。
だから、私はそんな動きが無くなるまで、何度でも硬い金属の棒をゾンビの頭へと打ち付け続けた。
目の前に倒れたゾンビがピクリとも動かなくなった頃、私は手にジンジンとした痺れのような感覚を覚えていた。
殴ると殴った方も痛い…なんて、聞いたことはあれど、自分で体験することになるなんて思ってもみなかった。
ゾンビとは言え、見た目はおおむね人間だ。人の形をしたものを鈍器でぶん殴るのには最初は抵抗もあった。
…とは言え、最初は不意打ちで、二度目は戸惑っているうちに、三度目はパニックを起こしている間に…と、何度も何度もゾンビに殺されているうちに、死にたくない・殺されたくないという思いが、ついに倫理観を上回ったと言うことだろう。
いかに、上手くゾンビを殺して自分の身を守るか…を考えるようになっていった。
転生し、目が覚めてすぐに武器になるものを手に入れることが出来た時は幸いだ。武器になるものが何もないままゾンビと遭遇し、転生して数分で次の人生を始めなくてはならなくなってしまったこともある。
せめて楽に死ねるならまだしも、ゾンビに殺される時には、いちいち早く殺してくれと思うくらいの痛みを味わうことになるのだから、あんな思いは二度と味わいたくない…。
身体は生まれ変わって元気になっても、食いつかれた時の痛み、肉を引きちぎられる時の激痛…燃えるような熱さ…。思い出すだけで吐きそうになる。
本当なら少しでも安全な場所に引きこもっていたいくらいだ。
けれど、本当に厄介なことにこんな世界でこんな状況でも、お腹は減るし、身体は汚れる。運よくゾンビから隠れることが出来たとして、そのまま引きこもっていたら餓死待ったなしという訳である。
(…ゾンビに食い殺されるぐらいなら餓死した方がマシ…かも知れないけど…)
隠れ家にしている住宅の洗面所にある鏡に映った自分の顔を見て、つい表情を顰めてしまう。
顔立ち自体は悪くない。サラサラの赤毛のショートボブも可愛らしい髪型でちょっと気に入ってはいる。
…けれど、返り血と埃でひどく肌は汚れているし、目の下にはクマがはっきり浮いているし、何よりすっかりやつれてしまっている。
何度も何度も速攻で死んで転生するを繰り返したものだから、この顔が何人目の私なのかもう正確には覚えていないけれど、かつての私が死んだ地点では、以前の私が今はゾンビとして元気に歩き回っていることだろうと考えると、あまり思い出したくもなかった。
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