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第22話 悪夢から救い出してくれたのは――――
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目を覚ましてすぐには理解出来なかった。
正確には思い出せなかった。
それは、まさに寝ぼけている時の感覚だ。
嫌な夢を見て、混乱したまま目を覚ました時のボーっとした感覚。
そんな状態のまま、目の前にアリシアがいたものだから私は酷く混乱してしまった。
「…え、え…。…アリシア???…どうして……」
アリシアは私の顔を見ると、やけに安心したような、ほっとしたような顔をした。
「ちゃんと起きてくれた…。良かった…」
「夢魔はもう倒したんですから、大丈夫って言ったじゃないですか」
アリシアの後ろからひょこりと顔を出したのはマーニャだ。
その表情は、今となっては見慣れた呆れ顔。
「あ」
ここで私は、この日、夢魔を倒すつもりで自分が眠りについたことを完全に思い出した。
しかし、どれだけ記憶を辿ってもそこにアリシアはいなかったはずだ。
それに、マーニャ、今「夢魔はもう倒した」って言わなかった?????
「…ちょっと待って…ちょっと待ってくださる???どうしてアリシアがここに…いますの? それに、わたくしに取り憑いていた夢魔はー…………」
私のしどろもどろの問いに答えたのはマーニャだ。彼女の方も何故かどこか決まり悪そうな表情で口を開く。
「その、ですね…。貴女の夢から引きずり出した夢魔なんですが、アリシアが倒してしまったんですよ。…私も手伝いはしましたけれど… ほぼほぼ一人で、です」
「え、ええええっ!?」
私は驚いてアリシアを見る。
アリシアは、頬を指で掻きながら、何故か気まずそうな顔をしている。
「…あはは…。…必死で、良くわかんないうちに倒しちゃった…」
「春妖精の巫女の実力を見せられた気がしますね…本当に凄い魔力でした…」
私は唖然としてしまった。
あれだけ私が夢魔を倒してアリシアを守るんだなんて思っていたのに、目が覚めたら全てが終わっていたどころか、そのアリシアが私を助けてくれたなんて…。
「で、でも、どうしてアリシアがここに…?????」
「…アリシアは、貴女の様子が最近おかしいことを心配していたみたいで…」
「え…?」
「…だ、だって、毎日奇声を上げて飛び起きるとかマリエッタさんに聞いて…何か悪いものにでも取り憑かれてしまったんじゃないかって心配で…」
「…う…確かに取り憑かれていたのは事実でしたけれど…」
「…それで、私も医務室に相談に行こうとしてたら、マーニャさんとエリスが話してるの聞いちゃって…」
「き、聞いてたんですの?!」
盗み聞きしてごめんね…と可愛らしく、もとい申し訳なさそうに目を伏せるアリシア。
私が慌てて視線をマーニャに向けると、そう言うことです…と、何処か何かを達観したような表情で深く頷いていた。
再び視線をアリシアに向けると、アリシアは話しの続きを語り始める。
「エリスとマーニャさんが二人で戦うって聞いて、私、心配で心配で眠れなくって…。だから、こっそり宿舎を抜け出して…来ちゃった…」
「…で、でで、でも、この部屋には…部屋の前にも…」
「あ、見張りの人にはお願いしたら通してくれたよ?」
――あぁ、もう警備ガバガバか!!(もしくはアリシアの魔性の可愛さのせい…)
私が複雑な思いでうごご…となっていると、不意にじわりと目に涙を浮かべたアリシアが私に抱きついてきた。
「!?」
「もうもう…!!!!エリスのバカ!!!凄く凄く心配したんだから!!!」
「あ、アリシア????」
「いくらエリスとマーニャさんが強くたって、魔物相手なんて何が起こるかわからないのに、どうしてこんな無茶したの?このままエリスが目を覚まさなかったらどうしようって…私、私…」
アリシアは、抱きついた私の胸に顔を埋めて泣いてしまっていた。私をぎゅっと抱きしめながら、わんわん泣いてしまっている。
「ご、ごめんなさい… アリシア… その、そんなに心配してくれるなんて、わたくし…思ってもみなくて…」
「…うーーーっ………バカ!バカ!エリスのばかぁ!」
私の苦し紛れの言い訳に納得してくれるはずもなく、アリシアは泣きながらも余計に怒ってしまったようだった。
私の胸元で、上目遣いに私を睨みながらキャンキャンと吠える。
「…まぁ、私も同罪ではありますが、確かに無茶をやらかそうとしたのはエリスレア様ですからね…。しっかり反省して、アリシアに叱られてください」
マーニャはそんな風に、どこか投げやりに言い放つと、それじゃあおやすみなさいとさっさと部屋を出て行ってしまった。つまり、この部屋に残されたのは私とアリシアの二人だけと言うことになる。
夜の、自分の部屋に、アリシアと二人っきり!?抱き合ってる!?と言う要素だけ取り出せば、ドキドキしちゃうシチュエーションなのだけど、内心私はそれどころではなかった。
アリシアを泣かせてしまったという罪悪感と、彼女が私の為に泣いてくれているという優越感みたいな良くない感情が綯い交ぜになってなんだか酷く複雑な気持ちになってしまったのだ。
抱きついたままのアリシアの身体に、ためらいがちに手を回して優しく抱きしめる。
抱き返しても良いのかな?って不安だったけれど、彼女が嫌がったり振り払ったりする様子がなかったので、私は心底ホッとした。
この後、アリシアは何とか泣き止んでくれたのだけど、こんな夜更けにアリシアを一人で宿舎に帰すわけにはいかないので、今日はこのまま私の部屋に泊まって貰うことになったり、その後のアリシアの言動によって私は大いに心を乱され動揺したりすることになるのだけど… この時の私はまだ、それを知る由も無かった。
正確には思い出せなかった。
それは、まさに寝ぼけている時の感覚だ。
嫌な夢を見て、混乱したまま目を覚ました時のボーっとした感覚。
そんな状態のまま、目の前にアリシアがいたものだから私は酷く混乱してしまった。
「…え、え…。…アリシア???…どうして……」
アリシアは私の顔を見ると、やけに安心したような、ほっとしたような顔をした。
「ちゃんと起きてくれた…。良かった…」
「夢魔はもう倒したんですから、大丈夫って言ったじゃないですか」
アリシアの後ろからひょこりと顔を出したのはマーニャだ。
その表情は、今となっては見慣れた呆れ顔。
「あ」
ここで私は、この日、夢魔を倒すつもりで自分が眠りについたことを完全に思い出した。
しかし、どれだけ記憶を辿ってもそこにアリシアはいなかったはずだ。
それに、マーニャ、今「夢魔はもう倒した」って言わなかった?????
「…ちょっと待って…ちょっと待ってくださる???どうしてアリシアがここに…いますの? それに、わたくしに取り憑いていた夢魔はー…………」
私のしどろもどろの問いに答えたのはマーニャだ。彼女の方も何故かどこか決まり悪そうな表情で口を開く。
「その、ですね…。貴女の夢から引きずり出した夢魔なんですが、アリシアが倒してしまったんですよ。…私も手伝いはしましたけれど… ほぼほぼ一人で、です」
「え、ええええっ!?」
私は驚いてアリシアを見る。
アリシアは、頬を指で掻きながら、何故か気まずそうな顔をしている。
「…あはは…。…必死で、良くわかんないうちに倒しちゃった…」
「春妖精の巫女の実力を見せられた気がしますね…本当に凄い魔力でした…」
私は唖然としてしまった。
あれだけ私が夢魔を倒してアリシアを守るんだなんて思っていたのに、目が覚めたら全てが終わっていたどころか、そのアリシアが私を助けてくれたなんて…。
「で、でも、どうしてアリシアがここに…?????」
「…アリシアは、貴女の様子が最近おかしいことを心配していたみたいで…」
「え…?」
「…だ、だって、毎日奇声を上げて飛び起きるとかマリエッタさんに聞いて…何か悪いものにでも取り憑かれてしまったんじゃないかって心配で…」
「…う…確かに取り憑かれていたのは事実でしたけれど…」
「…それで、私も医務室に相談に行こうとしてたら、マーニャさんとエリスが話してるの聞いちゃって…」
「き、聞いてたんですの?!」
盗み聞きしてごめんね…と可愛らしく、もとい申し訳なさそうに目を伏せるアリシア。
私が慌てて視線をマーニャに向けると、そう言うことです…と、何処か何かを達観したような表情で深く頷いていた。
再び視線をアリシアに向けると、アリシアは話しの続きを語り始める。
「エリスとマーニャさんが二人で戦うって聞いて、私、心配で心配で眠れなくって…。だから、こっそり宿舎を抜け出して…来ちゃった…」
「…で、でで、でも、この部屋には…部屋の前にも…」
「あ、見張りの人にはお願いしたら通してくれたよ?」
――あぁ、もう警備ガバガバか!!(もしくはアリシアの魔性の可愛さのせい…)
私が複雑な思いでうごご…となっていると、不意にじわりと目に涙を浮かべたアリシアが私に抱きついてきた。
「!?」
「もうもう…!!!!エリスのバカ!!!凄く凄く心配したんだから!!!」
「あ、アリシア????」
「いくらエリスとマーニャさんが強くたって、魔物相手なんて何が起こるかわからないのに、どうしてこんな無茶したの?このままエリスが目を覚まさなかったらどうしようって…私、私…」
アリシアは、抱きついた私の胸に顔を埋めて泣いてしまっていた。私をぎゅっと抱きしめながら、わんわん泣いてしまっている。
「ご、ごめんなさい… アリシア… その、そんなに心配してくれるなんて、わたくし…思ってもみなくて…」
「…うーーーっ………バカ!バカ!エリスのばかぁ!」
私の苦し紛れの言い訳に納得してくれるはずもなく、アリシアは泣きながらも余計に怒ってしまったようだった。
私の胸元で、上目遣いに私を睨みながらキャンキャンと吠える。
「…まぁ、私も同罪ではありますが、確かに無茶をやらかそうとしたのはエリスレア様ですからね…。しっかり反省して、アリシアに叱られてください」
マーニャはそんな風に、どこか投げやりに言い放つと、それじゃあおやすみなさいとさっさと部屋を出て行ってしまった。つまり、この部屋に残されたのは私とアリシアの二人だけと言うことになる。
夜の、自分の部屋に、アリシアと二人っきり!?抱き合ってる!?と言う要素だけ取り出せば、ドキドキしちゃうシチュエーションなのだけど、内心私はそれどころではなかった。
アリシアを泣かせてしまったという罪悪感と、彼女が私の為に泣いてくれているという優越感みたいな良くない感情が綯い交ぜになってなんだか酷く複雑な気持ちになってしまったのだ。
抱きついたままのアリシアの身体に、ためらいがちに手を回して優しく抱きしめる。
抱き返しても良いのかな?って不安だったけれど、彼女が嫌がったり振り払ったりする様子がなかったので、私は心底ホッとした。
この後、アリシアは何とか泣き止んでくれたのだけど、こんな夜更けにアリシアを一人で宿舎に帰すわけにはいかないので、今日はこのまま私の部屋に泊まって貰うことになったり、その後のアリシアの言動によって私は大いに心を乱され動揺したりすることになるのだけど… この時の私はまだ、それを知る由も無かった。
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