2 / 2
その後
しおりを挟む
澄み渡る空の眩しさに、鬱々としないのは随分久しぶりのことだ。天気もいい、絶好の結婚式日和だ。
ミッシェルの結婚式に出席するなんてつい一年前までは思いもよらなかった。それもこれも全て今日義兄となる彼のおかげだ。
この日のために各地から集められた選りすぐりの精鋭たちが奏でる演奏とともにミッシェルは大公閣下のエスコートで入場する。これは、彼女が公爵家ではなく大公家の後見で嫁ぐことを意味した。若干悔しいが仕方がない。
誰もが彼女を見ていた。彼女はこの一年で飛躍的に美しくなったが、今日はさらに美しい。
ミッシェルと目が合い、彼女はにっこりと笑った。
私の隣には婚約者が立っている。生まれは下級貴族だが、非常に優秀で、何より人柄に優れていた。両親を隠居させたあとの公爵領をあっという間に掌握するくらいに。
上の方の人員はほとんど彼の友人が占めている。乗っ取り状態だが、私にどうにかできることでもなかったので何も言わなかった。
私が子を生みさえすればなんとかなる。そしてこの世界ではそれは簡単なことだった。
逆に言えば簡単に子供ができるということだからそこだけはしっかりと釘を刺しておいた。その愛人との仲は清いままにしろと穏やかな言い方で。それだけは譲れない。
使用人たちは私に良くしてくれている。
ああ、なんて幸せなんだろう。
誰もが見つめる先で、ミッシェルと王太子となった王子が誓いのキスを交わした瞬間、天から光が降り注いだ。
二人に光が降り注ぎ、二人の手に集まる。
光が収まったとき二人の左の薬指に指輪が嵌っていることを最前列に座っていた私は見ることが出来た。
なんということだろう。二人は神の祝福を受けたのだ。
神の威光の前に自然と一人、また一人と膝をつき右手を胸に当てていく。もちろん、私も。
神様って本当にいるんだなあとしみじみと脳天気なのはレイチェルくらいでそれ以外がどれほどそれを恐れたか彼女は知らない。
不妊にされていたことも、不妊を癒していただいたこともレイチェルは知る必要がない。
ただ婚約者のみが知り、そして悔い改めるべきことなのだから。
ミッシェルと王子の儀式が終わり、休むことなく二人は移動していく。集まった国民の祝福を受けるためだ。
夜会の前に休憩を取っているとき、壁越しにこちらにまで聞こえるほど大きな歓声が響いた。
ミッシェルの結婚式に出席するなんてつい一年前までは思いもよらなかった。それもこれも全て今日義兄となる彼のおかげだ。
この日のために各地から集められた選りすぐりの精鋭たちが奏でる演奏とともにミッシェルは大公閣下のエスコートで入場する。これは、彼女が公爵家ではなく大公家の後見で嫁ぐことを意味した。若干悔しいが仕方がない。
誰もが彼女を見ていた。彼女はこの一年で飛躍的に美しくなったが、今日はさらに美しい。
ミッシェルと目が合い、彼女はにっこりと笑った。
私の隣には婚約者が立っている。生まれは下級貴族だが、非常に優秀で、何より人柄に優れていた。両親を隠居させたあとの公爵領をあっという間に掌握するくらいに。
上の方の人員はほとんど彼の友人が占めている。乗っ取り状態だが、私にどうにかできることでもなかったので何も言わなかった。
私が子を生みさえすればなんとかなる。そしてこの世界ではそれは簡単なことだった。
逆に言えば簡単に子供ができるということだからそこだけはしっかりと釘を刺しておいた。その愛人との仲は清いままにしろと穏やかな言い方で。それだけは譲れない。
使用人たちは私に良くしてくれている。
ああ、なんて幸せなんだろう。
誰もが見つめる先で、ミッシェルと王太子となった王子が誓いのキスを交わした瞬間、天から光が降り注いだ。
二人に光が降り注ぎ、二人の手に集まる。
光が収まったとき二人の左の薬指に指輪が嵌っていることを最前列に座っていた私は見ることが出来た。
なんということだろう。二人は神の祝福を受けたのだ。
神の威光の前に自然と一人、また一人と膝をつき右手を胸に当てていく。もちろん、私も。
神様って本当にいるんだなあとしみじみと脳天気なのはレイチェルくらいでそれ以外がどれほどそれを恐れたか彼女は知らない。
不妊にされていたことも、不妊を癒していただいたこともレイチェルは知る必要がない。
ただ婚約者のみが知り、そして悔い改めるべきことなのだから。
ミッシェルと王子の儀式が終わり、休むことなく二人は移動していく。集まった国民の祝福を受けるためだ。
夜会の前に休憩を取っているとき、壁越しにこちらにまで聞こえるほど大きな歓声が響いた。
0
お気に入りに追加
11
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

聖女は聞いてしまった
夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」
父である国王に、そう言われて育った聖女。
彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。
聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。
そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。
旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。
しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。
ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー!
※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです
山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。
今は、その考えも消えつつある。
けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。
今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。
ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~
玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。
その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは?
ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる