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002 『前世の記憶』
しおりを挟む『身分と有能の因果関係は?』
ふむ。
第一王子からの質問。
ぶっちゃけ。
有るでしょう?
身分の高さは学習能力に影響を及ぼす可能性が高い。
当然といえば当然かなと思う。
庶民は勉強する時間すら与えられず労働に勤しんでいるのだ。
そうしなければ明日のご飯が食べられない。
切迫した状態。
語学だのマナーだの馬術だの学んでいる暇などない。
どこの世界に馬持ちの庶民がいるのだ。
いや。農夫とか持ってそうだけども。
馬車関係の仕事も持っていそうね?
結構いるかしら。
まあ、それは置いておいて。
命令された事を、苦しくても理不尽でもやり抜かなくてはならないのだ。
お金の為に。
お金がない。
ただそれだけの為に。
自分の命と同義の時間を切り売りしているのが庶民。
意外と切ないのよ?
王子とはまた違った種類の苦しみを持っている。
その中で学力を高くするのは難しい。
ーーけれど。
それを今、言ってどうなるのだろう?
毒殺未遂によって死にかけた王子にそんな正論を言って何が生まれるのだろう?
コミュニケーションに必要なのは正論じゃない。双方の幸せだ。
それが故に、アリシアは教え子の言葉を否定しない。
否定から生まれるものは、苦痛と対立だ。
そんなものは、今は必要としていない。
そもそもアリシアはチート級のスペシャル教師だ。
なにせ前世の記憶がある。
前世でも、くどくも教師。
中高教諭一種、初等教諭二種、保育士プラス幼稚園教諭を持った0歳から十八歳までを網羅した年齢に死角無しの念には念の入った教師だ。
日本では中高教諭一種を持っていると、職歴三年で初等教諭二種免許が取得可能になる。
大学で六十二単位取得により保育士免許の取得が可能になり、保育園勤続三年で幼稚園教諭免許が取得可能になる。
全ての試験にパスをすると、なんと全年齢教師だ。
そんなものを目指す人間はほとんどいないが、しかしながら前世のアリシアは全て取得した。
筋金入りの教師だ。
ゆくゆくは校長になろうと考えていた。
何と言っても、校長は教師界では一番の権力者であり高給取りだ。
素晴らしい。
そこには夢がいっぱい詰まっている。
希望で胸がいっぱいだったのに、突然死んだ。
ジャングルジムから転落したのだ。
不慮の事故というやつである。
歳だったからね。
手にハンドクリームをべったり塗ったわけよ。
滑ったね。
ものの見事に。
せめて子供を助けて死にたかったが、あっけなく一人で死んでしまった。
もう少しで主任になりそうだったのに……。
悔いが残っちゃっていけない。
いや。
つまり……。
何が言いたいかというと。
生徒の言葉を簡単に否定する教師はゴミ?
そういう事。
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