156 / 158
【百五十五話】エピローグ1 ラプンツェル。
しおりを挟む
エピローグに入ります。
ミシェールの視点になります。
×××××××××××××××
高い塔に閉じ込められるといえば『ラプンツェル』かしら?
私は長い螺旋階段を登って妹に会いに行く。
オリヴィアお姉様の取りなしで、地下牢から貴族牢に移っていた。
ドアは施錠してあり、見張りもいるのだが、地下牢とは比べものにならないくらい清潔で過ごし易い。
この貴族牢は、第三公爵令嬢ティアナが幽閉された場所と同じだ。
ティアナが私に毒をぶっかけて、ここに囚われていたのだ。
今は容疑も晴れ、外に出ているのだが……。
彼女の罪は、殺人未遂から薬を騙し取られたという罪に変わっていた。
貴族牢に入るような罪じゃない。
殺人未遂とは雲泥の差だ。
どちらかというと、沢山の毒を栽培していたという方が大きな罪になる訳だが、それは全て王家預かりになるという事で落ち着いている。
つまり今の所彼女は、厳重注意、管理の徹底、情状酌量の上、執行猶予中のような状況だ。情状とは状況等を鑑み、考慮する事。酌量とは事情を汲み取った扱いをする。
そして執行猶予は、罪の償いを直ぐに執行せず、期間を決めて様子を見、その期間中、罪を犯さなければ、刑を執行しないという事だ。
前世でもあるあるの、超が付く甘々刑の代表。
まあ、薬の管理をもっと徹底しろよ? 次あったら罪にするぞ。
という所だ。
彼女は毒の栽培地を王宮内に移し、特殊薬草の管理という、仕事をしている。
新規に作った、王宮薬師、薬室部門、麻酔科特殊薬草温室管理人いというのが正式名称。
ちなみに上司は一人も存在せず、部下も一人も存在しない。
正真正銘の一人科らしい。
まあ、小さな温室だしね、今の所、薔薇の管理人の方がずーーーっと身分が上だったりする。
薔薇とは権威も歴史も違う上に、特殊薬草って苦しい命名からも分かるように、きな臭い匂いがプンプンする、あまり表立って活動してはいけない雰囲気がする科なのだろう。
家は、離籍したまま、元第三公爵令嬢となっている。
執行猶予期間が終われば戻る事も可能だが、ティアナ自体、あまり家は好きではなさそうだし、家の方も別に戻って来なくて結構という雰囲気なので、このままなし崩しになるかもしれない。
まあ公爵令嬢っていう身分で、毎日温室の雑草を抜かれても微妙に困るわよね。
私は最上階に辿り着き、牢番にしっかりとお菓子の差し入れをしてから、シンデレラの牢に入った。
貴族用の牢なので、小さな二間になっている。
シングルベッドだけが置いてあるベッドルームと応接間。
その応接間にいたシンデレラが私に飛び付いて来た。
薔薇の匂いがふわりとする。
「お姉様、ミシェールお姉様。大好き」
彼女は私の背中に手を回し、ギュッと抱き締める。
ここに来ると彼女は決まって私を強く抱くのだ。
薔薇色の頬に透き通った蒼色の瞳。
綺麗な腰まである金色の髪。
随分と顔色が良くなった。
手足も温かくなり、生気が戻った。
「お姉様、大好き。私を助けてくれた大好きなお姉様」
そう言って、まるで宝物を抱くように、何度も何度も私を抱くのだ。
「大好き。大好き。ミシェールお姉様だけが私を見てくれる。私の大切な大切な人」
私は柔らかい金髪を撫でる。
縁あって姉妹になった私の妹ーー
「さあ、一緒にお菓子を食べましょう?」
私は持って来たお菓子とお茶を取り出す。
「今日は何のお菓子ですか?」
「今日は、あなたの好きな苺パイよ」
シンデレラが嬉しそうに笑う。
私は紅茶から立ち上る湯気を感じながら、心が温かくなっていくのが分かった。
ああ。
目の前で妹が笑う。
塔の窓からは、陽射しが入り。
そして苺パイは変わらず甘酸っぱい。
「シンデレラ」
「はい?」
「あなたがこの牢に移れるよう、取り計らって下さった、オリヴィアお姉様の結婚式が決まったわ」
そう。
最後の最後、心を砕いてくれたオリヴィアお姉様の結婚が決まった。
「綺麗なブーケを作るわよ。白薔薇にブルースターを添えるの」
白い薔薇の周りを、星のような水色の小花で彩る。
水色は彼と彼女を結び付けた色だから、必ず入れたい。
私の尊敬するお姉様。
私はここであたなの幸せを祈りながら、一本一本ブーケを作ります。
心を込めて作ったら、お姉様に届けるわ。
そうして、彼にも同じ花で作ったブートニアを。
新郎の胸に付ける小さな花飾りだ。
妹と一緒に。
心を込めて。
どうかーー
幸せになって下さい。
ーー私のたった一人のお姉様。
ミシェールの視点になります。
×××××××××××××××
高い塔に閉じ込められるといえば『ラプンツェル』かしら?
私は長い螺旋階段を登って妹に会いに行く。
オリヴィアお姉様の取りなしで、地下牢から貴族牢に移っていた。
ドアは施錠してあり、見張りもいるのだが、地下牢とは比べものにならないくらい清潔で過ごし易い。
この貴族牢は、第三公爵令嬢ティアナが幽閉された場所と同じだ。
ティアナが私に毒をぶっかけて、ここに囚われていたのだ。
今は容疑も晴れ、外に出ているのだが……。
彼女の罪は、殺人未遂から薬を騙し取られたという罪に変わっていた。
貴族牢に入るような罪じゃない。
殺人未遂とは雲泥の差だ。
どちらかというと、沢山の毒を栽培していたという方が大きな罪になる訳だが、それは全て王家預かりになるという事で落ち着いている。
つまり今の所彼女は、厳重注意、管理の徹底、情状酌量の上、執行猶予中のような状況だ。情状とは状況等を鑑み、考慮する事。酌量とは事情を汲み取った扱いをする。
そして執行猶予は、罪の償いを直ぐに執行せず、期間を決めて様子を見、その期間中、罪を犯さなければ、刑を執行しないという事だ。
前世でもあるあるの、超が付く甘々刑の代表。
まあ、薬の管理をもっと徹底しろよ? 次あったら罪にするぞ。
という所だ。
彼女は毒の栽培地を王宮内に移し、特殊薬草の管理という、仕事をしている。
新規に作った、王宮薬師、薬室部門、麻酔科特殊薬草温室管理人いというのが正式名称。
ちなみに上司は一人も存在せず、部下も一人も存在しない。
正真正銘の一人科らしい。
まあ、小さな温室だしね、今の所、薔薇の管理人の方がずーーーっと身分が上だったりする。
薔薇とは権威も歴史も違う上に、特殊薬草って苦しい命名からも分かるように、きな臭い匂いがプンプンする、あまり表立って活動してはいけない雰囲気がする科なのだろう。
家は、離籍したまま、元第三公爵令嬢となっている。
執行猶予期間が終われば戻る事も可能だが、ティアナ自体、あまり家は好きではなさそうだし、家の方も別に戻って来なくて結構という雰囲気なので、このままなし崩しになるかもしれない。
まあ公爵令嬢っていう身分で、毎日温室の雑草を抜かれても微妙に困るわよね。
私は最上階に辿り着き、牢番にしっかりとお菓子の差し入れをしてから、シンデレラの牢に入った。
貴族用の牢なので、小さな二間になっている。
シングルベッドだけが置いてあるベッドルームと応接間。
その応接間にいたシンデレラが私に飛び付いて来た。
薔薇の匂いがふわりとする。
「お姉様、ミシェールお姉様。大好き」
彼女は私の背中に手を回し、ギュッと抱き締める。
ここに来ると彼女は決まって私を強く抱くのだ。
薔薇色の頬に透き通った蒼色の瞳。
綺麗な腰まである金色の髪。
随分と顔色が良くなった。
手足も温かくなり、生気が戻った。
「お姉様、大好き。私を助けてくれた大好きなお姉様」
そう言って、まるで宝物を抱くように、何度も何度も私を抱くのだ。
「大好き。大好き。ミシェールお姉様だけが私を見てくれる。私の大切な大切な人」
私は柔らかい金髪を撫でる。
縁あって姉妹になった私の妹ーー
「さあ、一緒にお菓子を食べましょう?」
私は持って来たお菓子とお茶を取り出す。
「今日は何のお菓子ですか?」
「今日は、あなたの好きな苺パイよ」
シンデレラが嬉しそうに笑う。
私は紅茶から立ち上る湯気を感じながら、心が温かくなっていくのが分かった。
ああ。
目の前で妹が笑う。
塔の窓からは、陽射しが入り。
そして苺パイは変わらず甘酸っぱい。
「シンデレラ」
「はい?」
「あなたがこの牢に移れるよう、取り計らって下さった、オリヴィアお姉様の結婚式が決まったわ」
そう。
最後の最後、心を砕いてくれたオリヴィアお姉様の結婚が決まった。
「綺麗なブーケを作るわよ。白薔薇にブルースターを添えるの」
白い薔薇の周りを、星のような水色の小花で彩る。
水色は彼と彼女を結び付けた色だから、必ず入れたい。
私の尊敬するお姉様。
私はここであたなの幸せを祈りながら、一本一本ブーケを作ります。
心を込めて作ったら、お姉様に届けるわ。
そうして、彼にも同じ花で作ったブートニアを。
新郎の胸に付ける小さな花飾りだ。
妹と一緒に。
心を込めて。
どうかーー
幸せになって下さい。
ーー私のたった一人のお姉様。
0
お気に入りに追加
166
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜
ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。
沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。
だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。
モブなのに魔法チート。
転生者なのにモブのド素人。
ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。
異世界転生書いてみたくて書いてみました。
投稿はゆっくりになると思います。
本当のタイトルは
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜
文字数オーバーで少しだけ変えています。
なろう様、ツギクル様にも掲載しています。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜
晴行
恋愛
乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。
見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。
これは主人公であるアリシアの物語。
わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。
窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。
「つまらないわ」
わたしはいつも不機嫌。
どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。
あーあ、もうやめた。
なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。
このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。
仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。
__それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。
頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。
の、はずだったのだけれど。
アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。
ストーリーがなかなか始まらない。
これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。
カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?
それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?
わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?
毎日つくれ? ふざけるな。
……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)
どくりんご
恋愛
公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。
ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?
悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?
王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!
でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!
強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。
HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*)
恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)
悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました
葉月キツネ
ファンタジー
目が覚めると昔やり込んだ乙女ゲーム「白銀の騎士物語」の悪役令嬢フランソワになっていた!
本来ならメインヒロインの引き立て役になるはずの私…だけどせっかくこんな乙女ゲームのキャラになれたのなら思うがままにしないと勿体ないわ!
推しを含めたイケメン近衛騎士で私を囲ってもらって第二の人生楽しみます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる