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【百四十六話】賭けの見返り。
しおりを挟む私とルーファスは息を潜めて天井裏にいた。
天井裏!?
天下の公爵令嬢が天井裏って……(笑)
有り得ないわー。
マジで有り得ない。
けどさーー
隣で黒装束を着ている人物は、この国の頂点に君臨する人物の息子。
これもこれで有り得ないったら(笑)
私達はというと、オリヴィアお姉様の命令で天井裏にいるのだ。
命令というか……。
「同席されちゃあ、上手く行くものもいかないわね」
と言われ。
じゃあ、どうすれば? ということになったのだが。
「第二王子様には、闇に紛れる特技がお有りになるとか……」
と語尾を濁すように即されて……。
『王弟は影を担う』というアッシュベリー王国の裏の仕来りの事よね……?
つまり、それを使ってみたら?
と言われたのだ。
マジかーー……。
そんな事まで精髄している、姉が怖い……。
なんで知ってるのー?
……というか。
王子に向かって、「天井裏で聞き耳を立てれば?」って提案する?
神経太すぎ。
彼にその道の道理が身に付いているとしても、私は?
私はまるきり素人だ。
素人の公爵令嬢を天井裏に上げるなんて、考えつかないわよね?
というか普通に危ないわ。
私も見よう見まねで黒装束だ。
これって……。
憧れのくノ一よねー。
間近でこちらを見ているルーファスに笑いかけると、彼は少し呆れて溜息を吐く。
あはは。
笑えるー。
なにこの絵面ー……。
楽しい。
あの後、ルーファスは姉に向かって。
「成人後の話として、頭に入れておこう……」
とか言ったのよ?
まあ、これはオッケーというか。
逃げ道を作りつつ、憶えておくというか。
確約は出来ないけどみたいな。
消極的同意のようなものかしら。
そもそもが生まれてもいない子供であり、王族の婚姻は最終的に陛下が采配を下すわけで。
返事だって、それくらいしか出来ないわよね?
そこはオリヴィアお姉様だって分かっている筈。
そもそも第二王子の子供というの立場は、微妙に複雑だ。
王の子供ですら臣籍降下させられるのに、第二王子の子供となれば、臣籍降下などウェルカムだろう。
そうでなくとも、女児は結婚と同時に臣籍降下の可能性大だ。
他国に嫁ぐなんていうのも、もちろんあるが……。
それはさせたくないのだろう。
手が届かなくなりますから。
そうなれば、息の掛かった公爵家なんて非常に都合が良いではないか。
という話だ。
第二王子様に取っても、別段悪い話じゃない。
それ故に、オリヴィアお姉様の望みは受け入れ易い。
お姉様って、このさじ加減が絶妙よね?
フィラル国とて、女児には用はないのだろうし……。
そんな訳で、次の段取りになった訳だ。
お姉様が「いつでも良いわよ?」とか言うので、とっとと日にちを合わせ、今日を迎えた訳。
私は早ければ早いほど良かった。
何故ならシンデレラの対応は、時間の勝負だから。
なんとしても、今日のこの日を境に塔へ移したい。
あの冷たい牢獄には置いて置けないでしょ?
あの、花ばかり弄っている哀れな妹に、テーブルくらい用意してやりたいじゃない?
私は天井下の気配に神経を傾けるのだった。
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