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【百四十五話】代償。

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「オリヴィアは聡明だね」





 そう言って第二王子様が笑った。

 心から笑った訳ではない、彼女の聡明さを讃えて微笑んだのだ。





 これって明らかに、交渉的な話し合いになっている?

 彼女は彼女が持っているカードを一枚ずつ切っているのだ。





 対等に話を進めるために。

 一方的な犠牲は払うのではおかしいと。





 オリヴィアお姉様が彼のお目付役になるのなら、その見返りは何? と聞いているのよね?





 カールトン公爵家ばかりが払うのはおかしい?

 あなたは何を払えますか?

 と聞いている事になる。





 姉は以前に、私には知性も、お金も、美貌もある。

 と言い切っていた。





 彼女が欲しいのは魔法と言っていただろうか?

 その為には、第二王子様がキーになる。





 しかし。

 私と第二王子様が結婚すれば、彼女は第二王子様の義理の姉に当たり、治癒魔法を得られる可能性が高い。





 オリヴィアお姉様もそう算段していたように思う。

 つまりは彼女は、知性も、お金も、美貌も、魔法も、揃ったことになる。





 無敵ですね!

 お姉様。





 我が姉ながら凄すぎます。

 僅かに『性格の良さ』的なものが欠落しているような気もしますが、そこを気にしたらね?





 そもそも性格良しの人間にストッパーは務まらないわ。

 やっぱり、メデューサ系の性格の人間も、この世には必要なのかしらね?





 全員が全員、シンデレラのように直情的だったら、世界が回らない。

 バランスね。バランス。





「私、欲しいものが御座いましてよ?」





 キター。

 メデューサの願い事キター。





 何何?

 何が欲しいのお姉様。





 全てが兼ね備わったお姉様に、何が足りないというの?





「ほう? 欲しいもの」





 第二王子様は顔色一つ変えずに、様子を窺う。





「とても簡単なものでしてよ?」



「では、より具体的に教えてもらおうか? オリヴィア」



「第二王子に深く関係する願い事ですわ?」 



「それはそれは。聞くのが楽しみですね」





 まったく楽しみじゃなさそうね? ルーファス。

 私は会話に口を挟まずに、一人突っ込みを入れる。





「そう言って頂けると嬉しいですわ。この世で精霊のご加護を受けている人間は数える程度しか居りませんもの」



「……どうでしょうか?」



「四大精霊、サラマンダー、ウンディーネ、ノームにシルフ。その精霊が愛した子供達」



「詳しいね、オリヴィア」



「貴族の嗜みですわ、第二王子様」





 嗜みじゃなーい。

 精霊を調べる令嬢なんて、基本いないわ。



 貴族の嗜みって、マナーとかダンスよね?





「つまりはウンディーネの加護が欲しいと」



「それはもちろん妃の実姉として、恩恵を頂きとうございます」





 当然のようにオリヴィアお姉様は言い切ったよ?

 姉特権が炸裂しそうで怖いです。





「水の精霊ウンディーネは女体を取ると言いますね」



「……確かに」



「ウンディーネが愛する男の子、その子に力は受け継がれる。何代遡っても少女には顕現しない」





 マジで詳しいな。

 お姉様。





「でも王妃様は女性です。つまり隔世的には顕現する可能性はゼロではありません。そこで御決断をーー」





 ?

 声の調子が変わった?





「私はウンディーネの血が欲しい。第二王子様の御子様に力が宿るでしょう。男児はもちろん諦めますが、女児ならゆくゆくはカールトン公爵家に臣籍降下をお願い致します。第二王子様とミシェールの娘ならキースも喜びましょう」





 え?





「カールトン公爵家に、カールトン家の血が繋がっていきます。そして精霊の血も……」





 魔王はニコリと微笑んだ。



「とっても楽しい計画ではないですか? わくわくしませんか?」



 姉はまるで何の実験だと突っ込みたくなるような要求をしゃあしゃあと言って来た。







 この人って。

 本当に好奇心と野心が強い人ですよね?





 とんでもない方向に舵が切られました。



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