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【百三十話】夜と昼の繋がる場所。
しおりを挟む彼の指先が首筋に添う。
添った場所に、彼の体温を残して行く。
私は涙に濡れた瞳で彼を見る。
彼のエメラルド色の瞳が近づく。
そして私の首筋に口づけを落とす。
繰り返される。
降るようなキス。
私は目を瞑って、瞼に満天の星空を見る。
シンデレラ。
私の腹違いの妹。
彼女の事を、一番良く知っているのは私なのではないだろうか?
いやーー
言葉を選べば……。
彼女の長所を長所と判断していたのは……私だけ。
ならば……。
私にだけ分かる何かがあるはず。
彼女は、一途な性格で。
そして、単純で。
思い込みが激しくて。
物事の見通しが利かない。
目の前の事象を、線で繋げる事が出来ない。
ある意味素直で。
ある意味稚拙。
シンデレラ。
私の年子の妹。
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私は止まりかけていた涙が、また零れる。
「……ミシェール」
「…………」
「……君の瞳は、まるでローズクオーツだね」
紅水晶の事だ。
薄ピンクをした石英。
「涙に濡れていると、余計に水晶の輝きが増す」
「………ルーファス」
「何?」
「お願いがあるの?」
「お願い。今この雰囲気で、お願いか………」
彼は少し笑う。
「言ってごらん、ミシェール」
「……明日、牢屋に毛布の差し入れがしたいわ」
「……もう一度言って、ミシェール」
「…………」
え?
言い直しの要求………。
聞こえていない訳ないから、言い方が違うという事?
「どこにキスして欲しい?」
ルーファスが優しく問う。
「…………瞳に」
彼がローズクオーツみたいだと言ってくれた場所に。
私はそっと目を閉じる。
彼の口づけが、瞳に落ちる。
涙が拭われるような感触。
目を開けると、やっぱり彼は少し笑っている。
「次はどこ?」
次。
私達がキスをしていない所ってどこなのだろう?
額も。
頬も。
首筋も。
瞳も。
「願い事を口にして?」
「………シンデレラの牢屋に温かいお茶を持って行きたいわ」
「……じゃあ、どこにキスをする」
「…………額」
「ハイ、不正解ね。お茶はなし」
「……………」
……ー。
不正解だと叶えられないの?
もう少し慎重に答えた方が良い?
「ヒント。服を脱がなければ出来ない所です」
「…………っ」
脱げと言うことですかっ。
悪質です。
第二王子様!
「………足?」
苦し紛れに答える。
足はどうだろう?
脱がなくても、スカートを捲れば行けそうなので不正解なのかな?
私はドキドキしながら答えを待っていると、彼はスカートをそっと上げて、太腿の内側にキスをした。
…………。
私は全身が硬直する。
凄い際どい場所。
太腿の内側って………。
感触で身が竦みそうになった。
「はい。これでお茶ゲットね」
そう言ってルーファスは笑う。
私は笑えない。
どうして差し入れを賭けたゲームのような事になっているの?
不謹慎な上に、私が圧倒的に不利。
これはXゲームですか?
取り敢えず、毛布とお茶の差し入れ権を手に入れた。
前途多難です………。
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