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【九十話】ファーストダンスは弟と。

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 私はキースにエスコートしてもらいながら、パーティ会場に戻る。

 中央に入ったりはしない。





 次の曲になったら、そっと端に入ろうと思う。





「ミシェールお姉様は、いつもより背が高いですね」



「そうそう。今日は十センチのヒールを履いてるのよ」





 ドレスを少し捲ってキースに靴を見せると、彼は慌てたようにスカートを下げさせる。





「他の男の前で、足を見せないで下さい」



「あら、ごめんなさい」





 相変わらず過保護な弟ね。

 頬を染めて可愛いったら。





「ところで、なんでシンデレラと踊らないのよ?」



「ミシェールお姉様はどうしてそんなに鈍いんですか? オリヴィアお姉様なら一発ですよ?」





 なんですってー。

 姉に向かって鈍いって言った?





 酷いじゃないの。

 オリヴィアお姉様なら一発って。





 …………。

 オリヴィアお姉様なら、一発……。





 そうなんだ。

 確かにあの姉は鋭い。





 王宮のラウンジで、影の存在を看破された時を思い出していた。

 人の一挙手一投足で理解するのよね、あの人。





 ちょっと悔しいじゃない。

 同じ血を分けた姉に完敗なんて。





 私だって、それなりに鋭い方を自負しているわ。

 オリヴィアお姉様ほどじゃないだけよ?





 と思いたい。

 あの姉。シンデレラの意中の人も看破してたのよねー。





 しかしは、分からないのだからしょうがない。

 ここは、ハッキリキッパリ言って貰おうじゃないか。





「で、どうしてなの?」





 キースは少し困ったように言い淀む。





「困るからです」



「何か困るの?」



「ミシェールお姉様は僕の事を何だと思っていますか?」



「徹頭徹尾、可愛い弟」



「シンデレラお姉様には他意があるからです」



「他意って?」



「そこまで言わせるんですか。察して下さい」



「察せないから聞いてるのよ、約束よ。答えなさい」





 私、エラそー。





「好意を寄せられているという事です」





 キースは言い難い事を言い切ったとばかり、やり切った感。

 ホッとしてさえいる。



 何、自分だけホッとしてるのよ?

 爆弾発言ですけど……。



「…………」





 私は、聞き間違えたんじゃないかと呆然とする。



 ハイ?



 今、なんて言ったの??





 なんで、姉が弟に好意を寄せるの?

 意味分かんない。





「姉が弟を好意的に思うのは当たり前でしょ」





 最後の望みとばかり、おずおずと聞く。





「そういう意味じゃありません。恋情の話です」





 うわー。

 言い難いと言っている事を、最後まで言わせちゃったよ?



 

 キースったら。

 開き直ってね?





 恋情って……。

 愛とか恋とかの恋情でオッケー?





「あんた達、姉弟よね?」



「血は繋がってませんけどね」





 ん?

 キースとシンデレラって血が繋がってないの?





 何で?

 キースとシンデレラって先妻の子でしょ?





 同腹の兄弟じゃないの??





 え?





 私のお父様とお母様がご結婚をした時、弟と妹が出来たのよ?

 そのタイミングで良いはずよ?





 母が後妻に入って、先妻の子と合流して四姉弟。

 合ってるわよね?





 私とはともかく、シンデレラとはかなり濃い血で繋がっている筈でしょ?

 違うの??





 私はちょっと頭が混乱していた。





 じゃあ、キースって?





 誰の子??????





  
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