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【八十五話】深追いする? 浅追いのまま?
しおりを挟むさてーーー
その教育者とやらを。
深追いするか、しないか。
当然、目の前にいるティアナは知っている訳だから、締め上げれば良いという事になる。
しかしーーー
真っ向から、「誰よ、教えなさい」と言った所で吐くかしら?
性格的に。
吐くという行為は、基本保身から来る行為だ。
この誇り高い令嬢が、公爵家を離席してまで覚悟を決めてた事。
彼女に保身は存在しない。
となると、締め上げは賢明な判断ではないのだろう。
下手をしたら死なれるし。
じゃあ、どうする?
そもそも、これまでの話の内容から、絞り込まれているのだ。
先ずは第二王子様よりも身分が高い。
これは以前から分かっていた事。
その上でキーワードは、兄弟だ。
建国法を持ち出してまで、あれだけひけらかしたのだ。
兄弟関係というものが、大きな核になっている筈だ。
そう考えれば、もうーーー
事実上、絞り込みは終わっている。
そもそも、その部分が複雑に絡み合っている可能性は高いが、暫定教育者とやらと、私を殺そうとした人間は違うのだ。
殺そうとした犯人は、目の前のティアナ・オールディス。
この人だ。
私は手に持っていたワイングラスを傾け、彼女の頭からトクトクと流して行く。
彼女の黒髪を伝って、ドレスを濡らして行く。
赤ワインだから、彼女の服に染み込んで、真っ赤に染め上げる。
血みたいよね?
もう少し濃かったら。
血液そのもの。
「ティアナ様、お返しですわ。もうお会いする事もないかと思いますが、やられたことは倍返しです。このワインには遅効性の毒が仕込まれています。毒の効力は今晩十二時からですわ? それまで後生よ? 自由にして差し上げてよ?」
再度、空になったグラスに赤ワインを注いで、ティアナに差し出した。
グラス越しに彼女と目が合う。
日本人のような黒い瞳。
嫌いじゃなかったわ。
ティアナ・オールディスの瞳の色。
前世で見慣れた色だから。
私は彼女に向かってニッコリと微笑んだ。
さようなら、気高い私のクラスメイト。
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