上 下
67 / 158

【六十六話】キング降臨

しおりを挟む

 私はしみじみと納得していた。

 なるほど。





 私とルーファスの婚約が内々の事だった理由がハッキリ分かった。

 海洋王国フィラルを慮っての事だったのね。





 口約束なのか、正式な約束だったのか、そこは国と国の事だから分からないけれど。





 現王妃様が嫁ぐに当たって、何らかの約束がなされたのよね。

 精霊の加護を継いだものが出れば、婿もしくは養子に欲しい的な種類の。





 まあ、双方その時点では、そんなに大事に考えていなかった。

 何故なら、直系の姫と言えども姫である。





 保険のようなものと考えていたはず。

 なぜならば、水の精霊ウンディーネは女性の形を取る。





 対というものの考え方からか、もしくは好み的なのかも知れないが、男性を好むのだ。





 つまりは王女方面に宿る可能性など、万に一つくらいに考えていたはず。

 怖いわね。

 一万分の一。





 好みの子に宿るのでしょうからルーファスが好みだったのねー。

 とは言っても、この家系はみんな美形なのだろうが。





 私はフィル様の顔をみながら、幾世代も前の建国期を思う。

 初代国王に似ているのかしら? フィル様とルーファスって。





 同じ王妃様の産んだ御子でも、第一王子様はアッシュベリー王国の血筋が色濃く出ている気がする。





 金髪碧眼は国王陛下の色だ。

 アッシュベリー王国はそういう色を輩出しやすい。





「申し訳ありません。ご事情を知らなかった事とはいえ、婚約してしまったのですが、一体どうすれば?」





 どう返事をして良いか分からず、取り敢えずは相手の出方を聞いてみる。

 もちろん一応聞くだけなのだが。





 フィル様と私じゃ、どんな約束を交わしても、約束になんてならない。

 彼もハッキリとお忍びと言っているではないか。





 つまりは国王としてではなく、一人の人として会っているのだ。

 身分を名乗らないってそういう事でしょ?





「予定通りに、一の姫の婿にと押すつもりだ。方法は色々あるが、断れない選択肢というのは、多分に存在する」





 ちょっと暗雲。

 断れない選択肢か。





 あれだけ富を築いている海洋国だものね。

 塩とか、かなり良い線いくのかしら?





 そもそも何故現王妃様はアッシュベリー王国に嫁いだのだろう?

 公爵なり侯爵なりに降嫁させておけば、こんなまどろっこしい話にはならなかったのに。





 自分のとこの貴族ならば、婿に迎えようが、養子に迎えようが、何の問題もない。

 二つ返事で了承だ。





 理由があるんだろうな……。

 血が濃すぎるとか。





 国内では血の繋がってない公爵家とか探す方が難しいのかな。

 まあ、どこの国でも似たり寄ったりだが。





 私は、カールトン公爵が父ではなかった場合、王家との血縁は一滴もなくなる。

 庶民よねー。





「まあ、我が娘は物分かりが良いからな。愛妾の一人や二人何の問題もない」



「………」 





 ん?

 今、私の事言われた?

 愛妾?





 フィラル国、次期国王は他国から迎えるなんて事は、さすがに出来ない筈よ。

 国民的にもありえない。





 つまり、第一王女が女王になり、その婿にルーファスという事よね。

 これなら、国民は納得だ。





 なんせ、自国の姫が産んだ王子である。

 婿なら何の問題もない。





 その婿に一人くらい愛妾がいようが、構わんと。

 そう言ったんだよね?





 それが私か。

 女王の婿というのは、もちろん後宮を持たない。





 婿の御子を増やすことには価値はないのだ。

 複数の婚姻が必要なのは女王様の方。





 けど、それは。

 きっと建前よね?





 フィラル王国としては、ルーファスの子こそ、何人でも欲しいわよね?

 可能性の話だ。





 精霊の加護を受け継ぐ可能性。

 どういう仕組みになっているか、分からないけど。





 精霊の加護を受けた、本人か兄弟の子に出る?





 その辺の事情はフィラル国の担当部署の方が詳しいだろうが。

 基本的には先祖の前例を繋いで行くことだ。





 だが、もちろん他国の人間は追うことは出来ない。

 そもそも基本的に、誰に顕現しているか公にされないのだ。





 ふむ。

 なるほど。





 愛妾か……。

 私は考え込む。





 かなり自由の効いたポジションじゃないか。

 但し権力的なものは一切なそうだが。





 しかし、自国で王子妃をするよりは百倍楽。

あの水の都で、ゴンドラにでも乗りながら読書。





 良いわね。

 なかなか良い条件よ。





 国外追放?

 とは形が違うが、国外には出られる。





 そういう生き方っていうのも有りかしら?





 片手間に商売なんかも……ね?

 出来ちゃったりして……ね?





 私はというと一国の王にすっかり丸め込まれそうになってます。

 大丈夫?





 よく考えれば、アッシュベリー王国に取って、利が全く無い選択じゃない?

 どうなのかしら?
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。 沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。 だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。 モブなのに魔法チート。 転生者なのにモブのド素人。 ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。 異世界転生書いてみたくて書いてみました。 投稿はゆっくりになると思います。 本当のタイトルは 乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜 文字数オーバーで少しだけ変えています。 なろう様、ツギクル様にも掲載しています。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜

晴行
恋愛
 乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。  見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。  これは主人公であるアリシアの物語。  わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。  窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。 「つまらないわ」  わたしはいつも不機嫌。  どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。  あーあ、もうやめた。  なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。  このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。  仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。  __それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。  頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。  の、はずだったのだけれど。  アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。  ストーリーがなかなか始まらない。  これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。  カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?  それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?  わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?  毎日つくれ? ふざけるな。  ……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)

どくりんご
恋愛
 公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。  ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?  悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?  王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!  でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!  強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。 HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*) 恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

処理中です...