57 / 158
【五十六話】一人目は。
しおりを挟む
私は目の前の好青年に向けて、オホホと柔らかめに笑った。
しかしーー
もちろん内心では動揺しています。
アレレ?
どうしてこうなった?
私は絞殺犯を探していたのだ。
四人の令嬢と会うつもりでいた。
けれど、目の前にいるのはどう見ても青年。
我が国でも陛下、皇后陛下の次に知れ渡っていそうなお顔。
「ところで、我が妹君」
「はい、何でしょうか」
妹とキタ。
うん義理の妹ね。
「僕の事は、殿下ではなく。お兄様と」
「はい。失礼じゃなければ、喜んで」
非公式な場とはいえ、第一王子様をお兄様と呼ぶことになりました。
えっと……。
私はというと、昨日一日ぐっすり寝て、お昼頃、呑気に目を覚まし、フルーツを搾ったジュースを飲み、テラスでのんびりした後、柔らかいパンを一枚食べ、明日の準備を整えると、夕食に野菜ジュースを飲んで、寝た。
物凄い健康的な生活だ。
もちろん缶ジュース的なものはないので、野菜ジュースとは人参とリンゴのジュース。
いやー。
絞りたては美味しいね。
こういう美味しいものを食べると、貴族に生まれることが恵まれていることだと実感する。
で、目の前の青年はというと、アッシュベリー王国の王太子様ですよね。
うん。
なぜ、王太子様と会っているのかと言うと。
王太子様の方から、何度も要望が来ていたらしい。
理由は、自分の目で弟の結婚相手を見定めるため。
と言っても、私と王太子様は学園で二年間被っている。
まったく知らないという程でもないが、直接話したことがあるかと言われると、一度もないとしか言い様がない。
同年代の第二王子様とは違う。
そして、見定めるとか言われている。
すみません。
こんな娘で。
「僕はね、学園では君のお姉さんに当たるオリヴィアと同窓でね。四年間一緒に学んだものだよ」
「そうですわね、お兄様。姉が大変お世話になりました」
「ほんとにね……。オリヴィアという子は、困った子というか強引な子というか押しが強いというか……。彼女と同窓だった事で女性というものを色々学んだよ」
王太子様は深い溜息をお付きになられた。
すみません。
姉がとんでもない事を。
色々しでかしてるのだろうとは思っていましたが、想像以上だったんですね。
「すみません、お兄様。姉はお兄様に好意を持っていたようで、きっと積極的に行動して、ご迷惑をお掛けになっていたのだと思います」
「まあ、君が想像している好意とは種類が違うと思うけど、迷惑というか騒動というか、沢山あったね。君のお姉さんがいるところ騒動ありといようなものだったから」
そう言うと、王太子様が紅茶を一口お飲みになった。
何か、第二王子様とは違う優雅さなのよねー。
金髪碧眼の、いわゆる王子様王子様した見掛けなのだが、その割につかみ所がないというか。
ちなみにここは、王宮内のラウンジ。
人払いもされていて、王太子様と私のみだ。
しかし、多分、天井裏に影が二人。
王太子様の影と、第二王子様の影。
セイもなんで四人のうちの一人が王太子様だなんて言うんだろう。
どこをどう見ても彼は真っ白じゃないか。
「王太子様の前で、いったい姉は何をしでかしていたのでしょう? よかったらお聞かせ下さいませ」
「例えば、僕を慕ってくれる令嬢に水を掛けたりとか? 座学で勝負を持ちかけて来たりとか。男子の授業に潜り込んだりとか?」
王太子様は遠い目をして語っている。
ホント迷惑な姉ですね。
何なんでしょうか?
目的がさっぱりです。
男子の授業に潜り込んでどうする?
何がしたいのか実の妹にも分かりません。
「一番困ったのは、弟の魔法に付いて、何度も探りを入れられた事だね」
「………」
それは困りますね!
ていうか、どうやって嗅ぎ付けたの?!
凄くない?
私が今の今まで知らなかった事なのに。
「でも、今回の落馬事件で完全にオリヴィアにもバレたよね」
「………」
すみません(涙目)
四年間も死守していた秘密が、私如きの為に(涙)
「君、事故のことどれくらい知ってるの?」
「?」
「乗馬ってさ、鐙にしっかり足を通すでしょ?」
「はい」
確かに、土踏まずのところまでしっかり入れる。
鐙の歴史は、乗馬に革命をもたらした訳だが、もちろん全てに置いて完璧な訳ではない。
「落馬したとき、鐙が抜けずに頭から落ちることは良くある事なんだけど、君の場合も例に漏れず、頭を強打した」
そうなんだ。
そういう詳細は、今初めて知ったかも。
つまり、ルーファスは気を使って言わなかったんだ。
私が怖がるといけないから。
セイですら、そんな事は言わなかった。
つまりこの人は、絶対的な味方ではないのかも知れない。
でもーー
アッシュベリーの建国法。
兄は弟を可愛がり、弟は兄に敬意を。
兄弟仲は上手く行っているのよね……?
「頭蓋骨挫傷。内部の出血が酷くて、もう助からない状態だったらしいよ?」
想像すると、今でも少し怖い。
落ちた瞬間と、強打したとこまでは憶えてる。
そう。
私は、頭を強く打ったのだ。
十四日間も意識を失っていたのだから。
つまりは死んでいた。
死んでいた命なのだ。
それを第二王子様が繋いでくれた。
私は、彼に、もっと感謝すべきね。
何も分かってないんだから。
「君の紅い髪は、オリヴィアを思い出させるね」
そう言って、王太子様は私の髪を見つめていた。
そっくりだと、微かに呟いたのが聞こえた。
ええ。
似てますよね。
よく言われます。
しかしーー
もちろん内心では動揺しています。
アレレ?
どうしてこうなった?
私は絞殺犯を探していたのだ。
四人の令嬢と会うつもりでいた。
けれど、目の前にいるのはどう見ても青年。
我が国でも陛下、皇后陛下の次に知れ渡っていそうなお顔。
「ところで、我が妹君」
「はい、何でしょうか」
妹とキタ。
うん義理の妹ね。
「僕の事は、殿下ではなく。お兄様と」
「はい。失礼じゃなければ、喜んで」
非公式な場とはいえ、第一王子様をお兄様と呼ぶことになりました。
えっと……。
私はというと、昨日一日ぐっすり寝て、お昼頃、呑気に目を覚まし、フルーツを搾ったジュースを飲み、テラスでのんびりした後、柔らかいパンを一枚食べ、明日の準備を整えると、夕食に野菜ジュースを飲んで、寝た。
物凄い健康的な生活だ。
もちろん缶ジュース的なものはないので、野菜ジュースとは人参とリンゴのジュース。
いやー。
絞りたては美味しいね。
こういう美味しいものを食べると、貴族に生まれることが恵まれていることだと実感する。
で、目の前の青年はというと、アッシュベリー王国の王太子様ですよね。
うん。
なぜ、王太子様と会っているのかと言うと。
王太子様の方から、何度も要望が来ていたらしい。
理由は、自分の目で弟の結婚相手を見定めるため。
と言っても、私と王太子様は学園で二年間被っている。
まったく知らないという程でもないが、直接話したことがあるかと言われると、一度もないとしか言い様がない。
同年代の第二王子様とは違う。
そして、見定めるとか言われている。
すみません。
こんな娘で。
「僕はね、学園では君のお姉さんに当たるオリヴィアと同窓でね。四年間一緒に学んだものだよ」
「そうですわね、お兄様。姉が大変お世話になりました」
「ほんとにね……。オリヴィアという子は、困った子というか強引な子というか押しが強いというか……。彼女と同窓だった事で女性というものを色々学んだよ」
王太子様は深い溜息をお付きになられた。
すみません。
姉がとんでもない事を。
色々しでかしてるのだろうとは思っていましたが、想像以上だったんですね。
「すみません、お兄様。姉はお兄様に好意を持っていたようで、きっと積極的に行動して、ご迷惑をお掛けになっていたのだと思います」
「まあ、君が想像している好意とは種類が違うと思うけど、迷惑というか騒動というか、沢山あったね。君のお姉さんがいるところ騒動ありといようなものだったから」
そう言うと、王太子様が紅茶を一口お飲みになった。
何か、第二王子様とは違う優雅さなのよねー。
金髪碧眼の、いわゆる王子様王子様した見掛けなのだが、その割につかみ所がないというか。
ちなみにここは、王宮内のラウンジ。
人払いもされていて、王太子様と私のみだ。
しかし、多分、天井裏に影が二人。
王太子様の影と、第二王子様の影。
セイもなんで四人のうちの一人が王太子様だなんて言うんだろう。
どこをどう見ても彼は真っ白じゃないか。
「王太子様の前で、いったい姉は何をしでかしていたのでしょう? よかったらお聞かせ下さいませ」
「例えば、僕を慕ってくれる令嬢に水を掛けたりとか? 座学で勝負を持ちかけて来たりとか。男子の授業に潜り込んだりとか?」
王太子様は遠い目をして語っている。
ホント迷惑な姉ですね。
何なんでしょうか?
目的がさっぱりです。
男子の授業に潜り込んでどうする?
何がしたいのか実の妹にも分かりません。
「一番困ったのは、弟の魔法に付いて、何度も探りを入れられた事だね」
「………」
それは困りますね!
ていうか、どうやって嗅ぎ付けたの?!
凄くない?
私が今の今まで知らなかった事なのに。
「でも、今回の落馬事件で完全にオリヴィアにもバレたよね」
「………」
すみません(涙目)
四年間も死守していた秘密が、私如きの為に(涙)
「君、事故のことどれくらい知ってるの?」
「?」
「乗馬ってさ、鐙にしっかり足を通すでしょ?」
「はい」
確かに、土踏まずのところまでしっかり入れる。
鐙の歴史は、乗馬に革命をもたらした訳だが、もちろん全てに置いて完璧な訳ではない。
「落馬したとき、鐙が抜けずに頭から落ちることは良くある事なんだけど、君の場合も例に漏れず、頭を強打した」
そうなんだ。
そういう詳細は、今初めて知ったかも。
つまり、ルーファスは気を使って言わなかったんだ。
私が怖がるといけないから。
セイですら、そんな事は言わなかった。
つまりこの人は、絶対的な味方ではないのかも知れない。
でもーー
アッシュベリーの建国法。
兄は弟を可愛がり、弟は兄に敬意を。
兄弟仲は上手く行っているのよね……?
「頭蓋骨挫傷。内部の出血が酷くて、もう助からない状態だったらしいよ?」
想像すると、今でも少し怖い。
落ちた瞬間と、強打したとこまでは憶えてる。
そう。
私は、頭を強く打ったのだ。
十四日間も意識を失っていたのだから。
つまりは死んでいた。
死んでいた命なのだ。
それを第二王子様が繋いでくれた。
私は、彼に、もっと感謝すべきね。
何も分かってないんだから。
「君の紅い髪は、オリヴィアを思い出させるね」
そう言って、王太子様は私の髪を見つめていた。
そっくりだと、微かに呟いたのが聞こえた。
ええ。
似てますよね。
よく言われます。
0
お気に入りに追加
168
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる