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【四十八話】影と令嬢の論戦
しおりを挟む分かってないわね。
影くん。
私が今少し説明してあげよう。
偉そうに鼻息を荒くしていると、不本意にも令嬢付きにさせられた影であるセイは、テーブルに置かれたローストビーフのサンドイッチを一口バクリと食べていた。
「ちょっと! 何するの、危ないでしょっ!!」
私は慌てて声を荒らげたが、彼はあっかんべーと舌を出す。
「フーン、バカ令嬢。毒なんて入ってないじゃねーかバーカバーカ」
バカって三回も言ったわね。
いつか言い返してやる!
今、心に決めたわ。
しかし、食べて毒かどうか分かるのね?
スゴイ影力。
古来忍者というのは、動物や植物、薬草や毒に精通しているというが、裏切らないクオリティね。
「分かるだろ。バーカ。味、匂い、色、全てがヒントなんだよ、頭使って生きろよ」
ああ、一方的に言われて言い返せない。
悪役令嬢の名が廃るわ。
頑張りませんと。
「あんた何歳なのよ、ちょっと偉そうよっ」
言った側からバカな発言してしまいましたよ。
失言だわ。
年齢は、人と人との関係に影響を与えない方が健全だ。
むしろ固定観念なのよ。
いやねー。
年齢に頼るなんて。
猛省だわ。
「バカ令嬢。影が年齢なんかバラすわけねーだろ」
口悪ーっ。
十五歳くらいね。
決定よ。
ガキだもの。
「いい? セイはまだお子ちゃまだから分からないかも知れないけれど、男女の関係は意外に複雑なのよ。私を守る事がきっとルーファス殿下を守る事にも繋がるの。分かる?」
言いながら? ちょっとこの論理破綻しているかしらと思い出す。
「分かる訳ねーだろ、バーカ。お前の命はお前の命。第二王子殿下のお命は第二王子殿下のお命だ。今はお前に惚れている様だが、お前が死ねば二三年で忘れて違うお相手が出来る。何の問題もない。命の混同を起こすなよ、バーカ」
………。
ぐうの音も出ない。
その通りですね。
シンプルで正攻法だわ。
変に複雑に考えないから、大切な部分を見失わないのね。
参考になるわ。
第二王子様をお守りする方が、ずっと有意義で大切な事のような気がする。
私を守ってる場合じゃないよ。
既に論破されたっぽい?
「あの、セイさん」
「何だよ、さん付けとかキモい」
いや、論理が正しいのでね、一応の敬意を示したまでよ。
「今、すぐルーファス様の護衛に帰った方が、人類の為のような気がするわ。
帰ろう」
私は帰宅を促した。
巷の一令嬢を守っている場合じゃないわ。
世の為、人の為に第二王子殿下の護衛に戻って下さい。
ホント、それが正しい道だわ。
影に諭されました。
「影を付けて頂いて有難う御座います。お気持ちだけ受け取って置きます。私は私の力でやれるだけやります。とお伝えしてね」
「伝えられるか、バカ。バカも休み休み言え」
影がヤケになってローストビーフのサンドイッチをヤケ食いし始めました。
パサパサですけどね?
今度は作りたてを差し入れするわね。
えっと、お茶でもどうぞ?
喉に詰まりますよ?
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