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1年目夏
50 僕と初めてのデート(3)
しおりを挟む楽しい時間はすぐ終わって、お別れの時間になってしまった。
「今日は楽しんでもらえた?」
「うん、とっても楽しかったよ!猫宮くんは?」
「僕も楽しかったよ。離れたくないな。」
明日になれば学校で会えるけど、今日みたいに小春ちゃんを独り占めできない。
僕は駅で小春ちゃんと離れるのが寂しくなっていた。
「明日また会えるよ?」
こう言う時小春ちゃんは意外とドライだったりする。
だから、余計寂しくなってしまう。
僕は人の邪魔にならないように、壁際に寄って小春ちゃんを抱きしめる。
「……また明日、ね?」
「寂しいの僕だけ?」
「私ももちろん寂しいけど、明日も会えるし……。」
困ったように僕の背中をポンポンと優しく叩く。
また一緒に住みたいな。
そんな事言ったら困らせちゃうから言えないけど。
「寂しくないように、小春ちゃんからキスしてほしいな?」
「え、ここで!?」
「うん。してくれないと、離してあげられないかも。」
少しだけわがままを言ってみた。
小春ちゃんが早く帰りたそうにするから、意地悪を言いたくなったんだと思う。
こんな人の多いところじゃ、小春ちゃんは無理って言うと思うし。
「…………、わかった。」
「え?」
小春ちゃんが顔を上げて、軽く触れるだけのキスをしてくれた。
してくれると思わなかったし、キスした後の顔を真っ赤にしている小春ちゃんが可愛い。
「あー、可愛い。」
「もう、したから!したから離してっ!」
「可愛すぎて離してあげられなくなっちゃった。」
次は僕から小春ちゃんにキスをする。
僕から離れようと腕で胸を押してくるけど、小春ちゃんの力じゃ僕は引き離せない。
「僕の事好き?」
「っ……、好き、だから。」
「嬉しい、僕も大好き。」
何度キスしても足りないぐらい好き。
何度も何度も唇を合わせる。
音を立てて、啄むようにキスをする。
ダメだ、全然足りない。
何度唇を合わせても満足できない。
小春ちゃんが可愛すぎて、愛しすぎて、全部を僕のものにしたくなる。
「んっ、ね、こみやくんっ!」
「なあに?」
顔を真っ赤にして少し潤んだ瞳を僕に向けてくる。
どうしたら僕だけの小春ちゃんになってくれる?
「ここじゃ、恥ずかしいから……。」
「誰も居なかったらもっとしていいの?」
「……、うん。だから、もう離して?」
「分かった、ごめんね?小春ちゃんが可愛すぎて我慢できなかった。」
正確には我慢はしている。
本当ならもっともっと小春ちゃんにキスして、抱きしめて、周りの目なんか気にならないぐらい僕に夢中になってほしかった。
「愛してる。じゃあ、また明日学校でね?」
「うん、また明日ね?」
改札に入って、それぞれのホームへ向かう所で別れる。
僕は見えなくなるまで小春ちゃんの後ろ姿を見送った。
見えなくなりそうな所で、小春ちゃんが後ろを振り返って僕を見つけて小さく手を振る。
あぁ、大好きだ。
僕も手を振りかえしたら、小春ちゃんはまた前を向いて見えなくなった。
僕は小春ちゃんにメッセージを送りながら帰路に着く。
今日はとても楽しかった、明日会えるのが待ち遠しい。
小春ちゃんの駅まで送りたかったけど、地元の駅は友達が多いから恥ずかしいって。
もっと小春ちゃんが胸を張って、僕を恋人って紹介できるような男にならなきゃな。
今日のオムライスを食べる小春ちゃんの写真を、スマホの画面に設定する。こうすればいつでも小春ちゃんを見る事ができる。
僕だけの飼い主の小春ちゃん。
早く自分だけの小春ちゃんにしたいって、独占欲が強くなってきている。
猫の時も自分の匂いをつけたりしてたけど、人間になってからは独占欲がさらに強くなっている気がする。
人間は欲深い生き物だと、身をもって感じた。
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