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『ヒール110』

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『ヒール110』



「トレイルとみんなは私をわかっていない。名指しで決闘を申し込まれたのだ。受けなければ負けたに等しい。私は一人でも戦う」
「そう来ると思ったわ。昔と変わらない。負けず嫌いなところが」
「みんな宿に帰っていい。私が3人を相手する」

 相手の人数は3人。
 パピアナは一人で戦うつもりだろう。
 昔のことはわからないが、パピアナは引けない性格をしている。
 一歩も引かない構えをした。

「どうするトレイル、パピアナは戦う気満々だし、相手はパピアナを誘っている感じだよ」
「俺も戦う、パピアナ一人にはさせないさ」
「トレイルなぜ?」

 俺の参戦に戸惑うパピアナ。

「決まっているだろ、パピアナは俺の大事な仲間だ。竜の守りのメンバーだ。今までも俺をたすけてくれた。俺はパピアナという良い仲間に恵まれたと思っている、だから困った時は一人になんてしないさ」

 森の王の頃とは違う生き方を教えてくれたと思う。

「な、な、なにを言ってるのよバカっ」
「私も参戦する。パピアナだけだと負ける心配があるしな。それにこの男が気に食わないからな」
「ミヤマもかよ」

 ミヤマから参戦の決意があったものの、パピアナは言葉では嬉しそうではないが、俺には嬉しそうにも思えた。

「俺と戦いたいなら、いつでも相手になってやるよ美人のドワーフさん」
「今ここで戦うか?」
「店じゃあだめよ!」
「店に迷惑はかけたくない。俺達はこの店に良く通っている常連客なんでな。外で決闘をさせて欲しいがいいかソロフレーズ?」

 いきなりミヤマとアモーレグーンが戦いになりそうなので外を提案してみる。

「あ~~ら、別に外でも店でも構わないわ。それじゃ外にしましょう。パピアナ、よろしいですね」
「望むところ」

 魔法の子猫の3人は外に出る。
 俺たちも続けて外に行き、人影あまりない広場にと進めた。
 周りは特に人はいないし、戦うにはいいかな。

「トレイル気をつけて。魔法の子猫は楽に勝てる相手じゃなくてよ」
「ありがとう。ローズの分まで頑張るよ」

 今回は俺とミヤマとパピアナが戦うとなり、ローズとシシリエンヌは控えてもらう。
 その為、後ろで観戦する。
 ローズは不安そうに見ていたのは、相手の魔法の子猫パーティーについて情報を持っていたからだろう。
 決して弱い相手ではないかもしれない。

「パピアナ、ここを決闘の地にしようどうだ?」
「好きにしろ。私はどこでもいい。それで対戦形式は決まっているのか。私がソロフレーズと残りの2人もいっぺんに相手してやってもいいぞ」
「あ~~ら、調子に乗るあたりは変わっていないな。昔のままだ。能力も変わってなければ我々には勝てない。一人ずつ戦うのもいいですが、3人対3人同時に戦う方が面白いでしょ」
「3人一緒に戦うのは俺は構わないよ」
「了解トレイル」
「いつでも戦える!」
「了解ミヤマ」
「決まったらしいわね」
「パピアナはソロフレーズと良く戦ったのだろ。どんな風なタイプなんだい。教えてくれたら戦いやすい。特に男のアモーレグーンを教えてくれ」

 ミヤマが詳しい相手の情報をきいた。
 俺も知りたいし、情報があったほうが戦いやすいのは確かだ。

「そうね、この町に来る前にトレイルに会う前のこと。あの3人とは顔見知りだったの。戦った結果は互角が多かった。それから私はこの町に来て冒険者と戦っていて、トレイルがやって来たから出会った。あれから私は成長しているし、後悔させてやりたい」
「わかった、やはりエルフ族だから魔法を使うのかい?」
「そうね、3人とも魔法を使える。基本エルフ族はみんな魔法の適正がある。生まれつき魔力が強い。男のアモーレグーンは短気な面があり、イライラしやすくて、火属性魔法を使えた。女のアンダーロットは回復魔法の使いだった。きっと今も変わらないはずだ。そしてリーダーのソロフレーズは光属性魔法が使えた」
「なるほど攻撃魔法と回復魔法が使えるのか。バランスの取れたパーティーだな」

 パピアナの説明ではヒール使いもいるらしいな。
 俺と同じヒール魔法の。
 ランクはCランクで俺たちの竜の守りと同じランク。

「あ~~ら、トレイルさん、相談中でしょうが、こちらから攻撃しますよ。エターナルシャインを受けなさい!」
「来るわ!」

 戦いの攻撃は相手のソロフレーズからだった。
 俺たちが相談していたのをチャンスと見たからだ。
 魔法は全員に有効な範囲だった。
 強烈な光が襲ってきた。

「いつもと同じねソロフレーズ。私も負けられないので、ホーリーサークルでお返しする!」

 エターナルシャインに対してパピアナが魔法で対抗。
 魔法が激しく衝突した。
 空中で衝突し両魔法が打ち消された。
 ほほ互角ってとこか。

「あ~~ら、今のを防ぐ。少しは成長したと思える。しかし私はもっと成長してますから。エターナルシャイン」
「どうかしら、この程度で勝った気? 笑わせないで!」

 その後はパピアナと魔法の攻め合いが続く。
 パピアナと互角なので、決して侮れない相手なのは間違いない。
 魔法の能力は嘘ではなく、かなりの魔法使いだ。
 そして次の戦いになりそうな。
 男のエルフのアモーレグーンだ。

「エルフ族を名のるなら、俺を忘れては困る。俺は火魔法が得意だ。受けてみなドワーフ、死んでも知らないがな。ファイアボール」
「良くしゃべる男だ。早く打ってこいよ」

 ミヤマが挑発するとアモーレグーンは魔法を詠唱し、手から炎のボールを射撃して来た。
 ボールは凄い速さでミヤマに迫る。
 大丈夫か?

「うううう、熱い!!」

 ボールをハンマーで防御したまでは良かったが、炎のボールはミヤマが思ったよりも強かった。
 ハンマー全体が熱で熱くなり、ミヤマはハンマーを放してしまった。
 火傷したかな。

「はははははっ、俺のファイアボールを防げぐのは難しいぞ。火傷するからだ。つまりは防ぐのは無理ってことだ。わかったかドワーフ」
「熱いけど、我慢できない熱さじゃなくてよ」
「ミヤマ、ヒールしておく。手を火傷したろ?」
「頼むトレイル」
「魔王竜ヒール」



体力を240回復しました。
経験値を240獲得しました。



 手の火傷なので比較的軽傷で済んだらしい。
 しかし侮れないのはわかった。
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