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『ヒール105』

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『ヒール105』



勇者パーティー編


 



「おい、ジェンティル。歩いているだけなら、ダンジョンのマッピングを頼む。それくらいならやってくれよな」
「そうだよ、俺とサリオスは真面目に戦っているのだから」
「嫌よ」

 キッパリと断る。

 サリオスがお願いしたのはダンジョンのマッピング。
 マッピングは単純な構造のダンジョンだったら問題は起きないが、複雑な構造で尚かつ階層が深くなるとマッピングという地図のように詳細なメモを取るのが必須となる。
 階層にある階段の数、場所。
 トラップがあったなら、どんなトラップか。
 隠し扉や、鍵が必要な扉の場所。
 休憩出来そうな地点。
 階層にかかる時間などだ。
 階段はわからなくなると帰る際に不便で、余計な時間がかかる場合もある。
 最悪な場合は帰れずに死に繋がる。
 また休憩地点は大事な点で、長いダンジョンでの戦いになると、エネルギーの補給も必要だ。

「何?」

「だから、嫌よと言ったのよ。何で私がマッピングなんてやらなきゃならないの。私のやる仕事じゃなくてよ」
「オマエなぁ、今日は3人しかいないんだ。新たな雑用係を雇っている時間がなかったんだ。そこは協力してくれよな」

「やりたくないし。どうせこの程度の魔物しかいないのだし、ダンジョンの階層は単純よ。次の階層あたりでドラゴン出てきて倒して終わり。ああ、早く終わらせて帰りたい」
「ちぇっ、いつもの癖が出たな。ムジカが代わりにマッピング頼む」
「えっ、俺が?」
「悪いがマッピング苦手なんで」
「仕方ねえな、今回だけだ」

「深いな、まだ最下層に到着しない」
「情報では浅い階層でドラゴンが出現したと聞いた。もう現れてもおかしくない。間違いだったのか」

「どうなってんのよムジカ。全然ドラゴンいる気配ないじゃない。うちらが怖くて逃げたのかしら」
「そんなわけねだろ。俺だってわけわからないんだ」
「違うダンジョンに来たってことないか。ねえ合ってるわよね」
「ダンジョンはここだ。ちゃんと確認した。それは間違いない」

「弱い魔物ばっかりで、変よ」
「なんだジェンティル。それじゃ俺を疑っているみたいだな。俺が間違いしてダンジョンに入ったと聞こえる」

 ムッとしてムジカは言った。

「あっそう、そう聞こえたなら、そう思っていていいわ。私は今イライラしてきてるからね」

 一瞬だが切り詰めた空気が起きる。
 
「イライラしてるのは、ジェンティルだけじゃないぜ」
「やめろ、二人とも。言い合うのは。ここはダンジョンでドラゴンと戦うんだ。ジェンティルは協力をしろ。早くダンジョンから出たいだろ」
「そりゃ出たい、ドラゴン見つけて冒険者救出しよう」
「トレイルがいたら」
「ふん、あいつは可愛かったのに、この前会ったら可愛くない。ちょっと生意気になってたわね」
「理由は不明だ。何かトレイルは隠している俺に」

 トレイルがいたなら、マッピングも自分からしていただろうにと。

 そして信じられないくらいに強くなって成長。
 あり得ない速度だった。
 サリオスの経験上、トレイルの最長速度は異常。
 普通の冒険者の域を超えているとしかなくて、知っているトレイルとは別人に感じた。
 魔物と戦えるようなレベルじゃなかったのに、いまではパーティーまで結成して冒険している。
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