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『ヒール75』

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『ヒール75』



「何度も何度も切っても回復してきやがる。トレイルの魔力は無限か?」
「さあね、トレイルの魔力が無限かはわからない。たとえ剣で切られても、負けたくないぴょん」



「魔王竜ヒール」

体力を440回復しました。
経験値を440獲得しました。

レベルが818に上がりました。


「こんなの有りかよ。卑怯だぞ兎。団長と正々堂々と戦え!」
「盗賊に言われたくないぴょん」

 周りの盗賊からの声にも受け返す。
 大丈夫だ、受け返す余裕もある。

「団長も相当疲労している。チャンスだぞシシリエンヌ!」
「わかった。団長さん、倒れなさい、魔神の槍」

 体力面で有利なシシリエンヌとは逆に体力は消耗する団長。
 戦いが長引けば長引く程に団長は不利になるのが、やっと気づいたらしい。
 仲間の盗賊も気づいたが、すでに体力切れて立つことさえ出来ないでいる10人。
 俺のヒールとシシリエンヌのコンビは盗賊も困らせる力があった。

「負けるか、俺は元Cランク冒険者のウィザードだぞ、名も知らぬ冒険者どもに負けてなるものか!」

 団長も恐らくは苦しいだろう。
 限界に近いはずで、シシリエンヌと最後に近い戦いになるはずだ
「魔王竜ヒール」


体力を450回復しました。
経験値を450獲得しました。

レベルが819に上がりました。


「竜の守りになるぴょん!」
「オレ、オレが、負ける」
「やった、団長が倒れた!」

 剣をすり抜けて槍が脇腹に刺さった。
 少しして団長は地面に倒れていった。
 とても悔しそうな顔をしていたのが印象的だった。

「倒した倒したぴょん!」
「よくやったわ!」

 ローズが隠れていた茂みから出てきてシシリエンヌのところへ。
 パピアナとミヤマも駆け寄り抱き合う。

「ひとりで本当に倒したわね。竜の守りパーティーに入る資格は十分よ。私が認めるわ」
「パピアナが認めるなら俺も認めるよ」

 良く戦ったと思う。
 決して団長は弱くなかったからで、パピアナも見ていてそこをわかっていて言った。

「団長ウィザードめ、私達から財宝を盗もうなんて考えがあるから、こうなる。相手が悪かったな!」
「ぐほっ!」

 倒れている団長に上からハンマーで殴るミヤマ。
 よほど憎いのか。
 俺ならこれ以上のダメージは与えないが。

「団長が負けた。まさか団長が負けるなんて」
「まさか兎一匹に負けた」
「しかも少女に!」

 仲間の盗賊は信じられないと言った感想を述べるのは、盗賊団のメンバーは20代から40代までいるのに、まだ10代のシシリエンヌに負かされたからだった。

「盗賊団は全員倒れた。自力では立てそうにないから安心だ。後は冒険者ギルドに任せよう。俺達の役割は終わりだろう」
「他に盗賊団がいるかもよ」
「まだ居るのかな。居るかもな」

 盗賊団が一つとは限らないと指摘された。
 言われてみると一つじゃなく二つあるかもな。

「契約の明日の朝まで館に居て警備は続けるしかないわね。でもシシリエンヌが居るから大丈夫よ」
「それもそうね」
「トレイル、盗賊は捕らえておいて。私達は館で休むから」
「俺がやるのか」

 なぜか面倒な盗賊の世話をさせられた。

「トレイル、トレイル。それに竜の守り、思い出したぞ。確か最近聞いた名前だ。ギルドでも話題になっているルーキーの冒険者パーティーがあると聞いたことがあった。噂になる原因はマジックメイジやオークを討伐したと。その名は竜の守り。そしてリーダーはトレイルだった。まさか俺達の前に現れるとは」
「団長、言っておくけど、うちの竜の守りはマジックメイジだけじゃないよ。この前はバーニングのいる風の陣パーティー。殺し屋シャークウォーニンも倒したのを覚えておいてね」
「なんだと! あの殺し屋のシャークウォーニンを倒したのか!」

 団長はローズの話に衝撃を受けていた。
 思っている以上に俺達は噂になっているらしい。

「はい」
「嘘だろ最悪だ。館を狙ったのが失敗だった。運が悪かった」
「残念ね。盗賊は二度としないことね」
「盗賊できなくしておいてやろう、ほらっ!」
「うごっ!」

 ハンマーが団長の腹に落ちる。
 それも2度3度と落とされて、死ぬほど苦しそうだ。
 ミヤマが仲間で良かったな。
 敵だったら、ゾッとする。
 団長並びに盗賊団いちみを全員を捕え、館に逃げないようにしておく。
 騎士団が財産を全て回収に来るまでの間まで、館を完全に警備していたら完了だ。
 俺達は館の部屋に。
 特に何もすることのない時間。
 それぞれが好きに過ごす。
 俺は椅子に座り、盗賊について考えていた。
 盗賊をも自分たちで倒せるまでになったことに、成長したことに嬉しくなった。
 サリオスのパーティーから追方された時とは大きく違って、自分が成長した証だ。
 追方された時に盗賊と戦える力は全く無かったし、あり得なかった。
 ミヤマはハンマーを拭いていて、大事にしていて、パピアナは大部屋の絵や壺を見ていた。

「暗闇の牙は全員動けなくした。残りの時間まで待つのみ。安心しちゃいけないと思うけど」
「どうしたローズ、何かみんなに隠しているのかな?」
「うん、館にいて時間経ったでしょ、そしたらお腹空いたの。館なら食品があるんじゃないかなと思った」

 何のことかと思えば、空腹の話か。

「ローズに賛成、私も食べたい。館の調理場ならば食材やらありそうだな。トレイルもどうだ?」
「俺も食べたいけど、あるのかな」

 調理場は見てないから、あるのかはわからないな。

「もしかしたらシシリエンヌは知ってるとか?」
「知ってますとも。館に住まわされていたし、調理場でも働いたから。案内してあげるぴょん」
「助かるわ!」
「行きましょう」

 館に住まわされていたシシリエンヌは調理場も知ってて当然か。
 あとは食材があるかだな。
 領主のことだから良い食材とか集めてそうだ。
 
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