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『ヒール70』

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『ヒール70』



 肉料理店で突然にサリオスやジェンティルが現れるハプニングがあった。
 サリオスは認めなかったが、明らかに俺に対して向けた嫌がらせにはまいった。
 店内のお客は俺達に目を向けているのが伝わる。

「みんなして私達の方を見てるような。きっとサリオスと言い争ったからでしょう」
「そりゃそうよね、伝説のパーティーである森の王が来た。そしたらサリオスやジェンティルとケンカみたいにして言い合う。周りから見たら、私達って森の王レベルのパーティーと思われる」
「完全にパピアナが原因かな。一番に文句を言っていたもん」

 ローズから指摘されたパピアナは、

「いいじゃない、いいじゃない、森の王と比較されて、同じランクに思われるのは悪いことどころか歓迎、むしろ森の王の上のSSランクでもいい」
「パピアナは勝ち気だな。森の王よりも上に自分を置くなんて」
「当たり前よ、あんなのに下に見られたくないもの」
「これ以上居ると、恐れられるから店から出ようよ」
「出るぴょん」

 森の王と比較されるパーティーは少ないし、世界にも数える程度だろう。
 パーティーランクは上のランクに行けば行く程に少なくなる。
 特にAランクともなれば国家からも特別にクエストを依頼される存在となり、報酬もケタ違いと聞く。
 その上のランクのSランクである森の王は、もはや英雄扱いされ、ギルドからも尊敬されてしまい、誰も俺に対して嫌がらせしているなんて信じる者はいないのが現実かな。
 そこは仕方ないし、いくら主張しても無駄だろうから、今は俺が強くなり、パーティーランクを上げていくことに集中したい。
 パーティーランクが上がれば、それは世間的な目、冒険者から、ギルドからも評価されるのと同じ。
 短期間でDランクになれたのだから、頑張ればさらに上がると思う。
 ただし、余りにもお客から怖い物的な目で見られるので、店を出た。
 





 今日はギルドに居た。
 冒険者ギルドでクエストを探す。
 掲示板ではミヤマが物色している姿。
 気に入らないのか、掲示板を叩いたりしているのが不安。

「トレイル。お話があるの」

 そこへ俺に受付嬢が話しかけてきた。
 何だろうか。
 俺に話して。

「なんです?」
「クエストの件なんですね。実はトレイルに任せたいクエストがあるの」

 受付嬢の方からクエストの紹介をしてくるので、俺は興味を持った。

「トレイル、ギルドからクエストを紹介されるて初めてよ、聞いてみようよ」
「そうだな。どんなクエストか教えてください」

 隣にいたローズも同じ気持ち。

「はい、トレイル達に関係しているクエストなんです。領主の館がありましたよね。トレイルの活躍もあり領主は住んでいません。騎士団から拘束されてますので、それに一緒にいた猫人のメイドも開放され、現在は空き家になってます」
「私も開放されたぴょん!」
「そうでしたねシシリエンヌ。そこで、領主の館をしばらくの期間、冒険者ギルドが管理することになりました」
「管理?」

 家主がいないので、管理するわけか。

「館は持ち主がいなくて国が直接管理します。そこで問題になったのが、領主はたくさんの金銀やら財宝やら、絵画も所有しているそうです。金儲けは上手くいっていたのは騎士団と組んで、違法な取り引きをしたりして儲けていたらしいの。それらの財宝類も一緒に管理しますと決まった。そうなると話は物騒な話になるの」
「もしかして、館の財宝を狙う人が現れるとか」
「ローズ、感が鋭いです。国がギルドに依頼したのはもちろん内密だったのに、すでに色々な所に広まっているらしい。領主の財産を狙うのが現れるとなると、その財産を守る仕事が発生する」
「今の話からすると、私達に館の警備をして欲しい依頼てことかな」
「ずばり当たりです」

 館にある財産を狙うのが居るのか。
 世の中には悪い奴が必ずいると聞くが、本当にいるようだ。
 冒険者ギルドは国が行う行政機関でもあるから、管理を任されたと考えられる。
 領主の館は大邸宅だったのは、実際に見た俺が保証する。
 普通の金持ちのレベルではなかったからな。

「トレイル、受けてみよう。ギルドから任されるなんてめったにないし、評価も上がるかもよ」
「私も興味ある。自分がいた館だし、館の内部にも誰よりも詳しいぴょん!」
「シシリエンヌもやる気だな。わかったよ受けてみよう」

 ローズもだが、特にシシリエンヌが積極的だったから、俺は受けたくなる。

「トレイル、それでは受けてもらえますね。これはまだ他の冒険者、パーティーには紹介してません。掲示板にも出していないクエストになる」
「受けます。それでいつから始めたらいい?」
「さっそく本日の一日お願いします。なぜなら明日には国から財産を没収しに来るそうで、それまでの期間でいいの」
「わかりました。今日一日盗賊から守ればいいのですね、やります」
「ありがとうトレイル。お願いして良かった」

 受付嬢へ受けるのを承諾したら、喜んでくれて笑顔になった。
 クエストを探しに来ていたので、いいクエストが見つかったと思いたい。
 詳しい依頼内容は聞いておく。
 その後にまだクエストを探してあるパピアナとミヤマを見ると、未だに探していて、意見が違うのか言い合いになっていた。

「ねぇ、パピアナとミヤマも呼びましょう」
「お~い、パピアナ、ミヤマ、こっちに来るぴょん!」

 シシリエンヌに呼ばれて来た2人に今の依頼の話を話したところ、

「何、もう決めただと!」
「私が探している間に決めたのか。それを早く言ってくれ、ミヤマが変なクエストばかり探して困った。未発見のダンジョンにて、採掘するクエスト」
「うるさい、パピアナこそ。肉料理のお手伝いとか」
「もっと良いのが決まった。今日から直ぐに開始する」
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