悪役令息の取り巻きになっても、音楽はできますか?!

ユパンキ

文字の大きさ
上 下
38 / 42
第2章

調査再開...のはずが

しおりを挟む
 
 数日後、僕たちは中間報告のために一旦ウィール王国に戻っていた。

 「...これで以上だ。今後の計画としては、イストリア教会についてだが...」
 グランが調査結果をイルとバトラに伝えてくれた。それを聞いたグランは少し考え込んでこう言った。
 「少しの収穫はあったようだな。おそらく、イストリア教会は黒で間違いない。」
 「なぜなら...俺たちの収穫もイストリア教会だからだ」
 
 バトラの話によると、2人がニアマライア教会に調査しに行ったとき、メニルも教会にいたそうで、彼からも話を聞くことができたらしい。相変わらず彼はバトラにべったりくっつこうとして迷惑だったらしいが、バトラと会えたことにより気が大きくなってしまったのか、大事な情報をいとも簡単に洩らしてくれたそうだ。
 
 「その時に話していたのが、イストリア教会についてだったというわけだ」
 
 メニルはイストリア教会に頻繁に通っているだとか、そこのお偉いさんと繋がっているだとか、明らかに言わない方がよいだろうことを自慢げに話していたそうだ。他にも、重要そうなことをいくつか言っていたらしく、バトラは最終証拠収集に取り掛かるそうだ。時期が訪れたら、ニアマライア教会とイストリア教会を同時に包囲するそうだ。
 
 今後の方針を話し合い、今日はお開きとなった。僕とグランは、明日からまたマリーノ王国で調査を続ける予定だ。
 ということで、僕たちはすぐに馬車に乗り、マリーノ王国に向かった。

 


 マリーノ王国に着いてから、僕たちは前回とは違う平民街へと向かった。こちらもウィール王国の街に比べて賑わっているが、暗い雰囲気が少しあるように感じる。特に路地裏などの暗所は、近づいたら引き摺り込まれそうだ。






ーーーーー
 湿気がこもった薄暗い部屋の中で溜め息を吐く。僕は自分でフラグを立てていたみたいです。

 あれは15分前のこと。グランと一緒に街を歩いていたのだが、どんどんと人が多くなってきて、人混みにもみくちゃにされたせいで彼と離れてしまった。グランは背が高いので、すぐに見つけることができたが、僕は背が低い方なので彼からは見つけられなかったのか、違う方面を探しに行ってしまった。
 そのまま集団に流されて行き着いたのが路地裏だった。表通りがにぎわいで溢れかえっているのが嘘のようにシーンとしていて、自分の呼吸が聞こえるほど静かだった。とりあえず、グランを探すために表通りに出る道がないか探すために歩き出した。
 歩き始めて何分経った頃だろうか、いつまで経っても表に出られやしない。そろそろやばいのではと焦り出したタイミングで、後頭部に衝撃が走り、気を失ってしまった。

 ...そして目が覚めた時にはこの状況だった。口は布で縛られ、両手は部屋に不自然に建っている柱に固定されていた。前世に読んでいた極道漫画にもこういうシーンがあった。それによると、捕まったあとは拷問が待ち受けているが、僕も同じような目に遭ってしまうのだろうか。その様子を想像してしまい、恐怖で身震いする。

 目が覚めてから体感30分ほど経ったころ、奥の扉が開いた音がした。柱に固定されているので、振り向けことができない。足音が近づいてくるのをただ聞くのみ。
 とうとう僕の目の前に姿を現したその人は、誰も予想することが出来ないであろう者だった。
  

 「....」
 
 無論、その人を何と呼べばよいのかわからないほどの者だった。どう呼べば、機嫌を損ねないか。いや、どう呼んでもこの人はなにかと理由をつけて罵ってくるはずだ。そのような者が、何故か僕の目の前にいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです

魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。 ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。 そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。 このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。 前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。 ※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

婚約者の恋

うりぼう
BL
親が決めた婚約者に突然婚約を破棄したいと言われた。 そんな時、俺は「前世」の記憶を取り戻した! 婚約破棄? どうぞどうぞ それよりも魔法と剣の世界を楽しみたい! ……のになんで王子はしつこく追いかけてくるんですかね? そんな主人公のお話。 ※異世界転生 ※エセファンタジー ※なんちゃって王室 ※なんちゃって魔法 ※婚約破棄 ※婚約解消を解消 ※みんなちょろい ※普通に日本食出てきます ※とんでも展開 ※細かいツッコミはなしでお願いします ※勇者の料理番とほんの少しだけリンクしてます

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【第2部開始】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~

ちくわぱん
BL
【第2部開始 更新は少々ゆっくりです】ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

使命を全うするために俺は死にます。

あぎ
BL
とあることで目覚めた主人公、「マリア」は悪役というスペックの人間だったことを思い出せ。そして悲しい過去を持っていた。 とあることで家族が殺され、とあることで婚約破棄をされ、その婚約破棄を言い出した男に殺された。 だが、この男が大好きだったこともしかり、その横にいた女も好きだった なら、昔からの使命である、彼らを幸せにするという使命を全うする。 それが、みなに忘れられても_

処理中です...