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第2章
相談
しおりを挟む「そうだ。マリーノ王国に王室の別荘があるからそれを使ってくれたまえ。使用人は常に配置しているので安心してくれ」
グランと2人暮らし(期間限定)をすることになってしまった。普通に、そこまで仲が良くない2人を一緒に泊まらせるか?!お泊まり自体も前世含めて初のことなので緊張しかない。お泊まりって、小説や漫画のイメージだと、パジャマパーティーとか、枕投げだけど、グランがそんなことするわけがない!...まずこの世界にそのような概念はないかも?
とりあえず、あと1週間で調査が始まってしまう。足手纏いにならないように、僕も色々準備しなきゃ。
今日も、秘密基地に向かうとロネが居た。彼はまた笑顔で迎えてくれ、僕は演奏を始めた。しかし、どこか上の空だったのだろう。いつもよりぼーっとしている僕に、ロネは心配してくれた。
「何か、心配ごとでもあるのか?今日の君はいつもより元気がない」
「えっ、そ、そんなことないですよ..はは」
「もしよければ、相談してほしい。辛そうな君は見たくないんだ」
そう言って顔をのぞいてくるロネにドキドキして顔が赤くなってしまう。少しなら、相談してもいいだろうか。
「...今度の夏季休暇に、事情があって2人で別荘に泊まることになったんです。でも、その...相手とはあんまり話したことないし、仲が良くなくて」
「....君は、その人のことが嫌いなのか?」
「い、いえ!!とんでもありません!でも...相手が僕のことを嫌っているんです」
「...」
ロネが驚いた顔をした。何か失言してしまっただろうか。不安になってロネの顔を見ると、
「..それは、確証があるのか?」
「あると..思います。幼い頃、彼を傷つけてしまったんです。でも、僕は12歳頃までの記憶がごっそり抜けていて、その事も勿論覚えていなくて.. 言い訳にしか聞こえないですよね」
「!!」
「彼に直接言われるまで、僕がそのような事をした事さえ知りませんでした。だから、さらに彼を傷つけてしまった」
「記憶がないって言うのはどう言う事だ?」
彼が真剣な顔で聞いてくる。しかし、丁度良い理由を考えていなかった。さすがに転生したなんて言えないし...
「毒...そう、毒を飲んでしまった事が原因だと思います」
貴族ならあり得る事だし、これなら大丈夫だろう。転生したあと実際に毒飲んだしね。
「それで記憶喪失に...災難だった」
気の抜けたような彼の反応を見て、どこか悲しいような、ホッとしたような複雑な気持ちになる。失望しただろうか、もう僕のことを嫌いになってしまっただろうか。考えれば考えるほど、ネガティブな思考になっていく。
「苦しい言い訳など、通用しません。事実は変わらない。でも、この体が、彼を傷つけてしまった事を覚えていると思うと、怖くて...彼に近づくと逃げたくなってしまう」
また、傷つけてしまうんじゃないかって、傷つけた僕がグランに近づいていいわけが無いって、そう思ってしまう。
「僕は彼の体にも...心にも傷をつけてしまった
のです。そんな僕と、誰が一緒に長い期間過ごしたいと思いましょうか」
きっとグランはこの先もずっと僕を恨むだろう。それ以上のことをしてしまったのだから。
「でも、この期間でやり遂げないことがあって、勿論彼との協力が必要不可欠なんです」
「...彼と一回、話し合いをしたほうがいいと思う」
「え」
「君の気持ちを、しっかりと伝えてほしい。彼も...気になってるんじゃないかな、ルテの思ってることが」
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