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第2章
転生者三昧
しおりを挟む「イル!」
やっとイルを見つけたと思ったら、イルはメニルの近くまで来ていたらしく、険しい表情をしていた。
「...ルテ」
イルが珍しく不安そうな顔をする。もしやすでにメニルと一悶着あったのだろうか。自分も不安になってくる。
「イル、緊急事態だよ...なんで、なんでメニルがもう出てきてるのかな?僕たちの行動による影響はまだないと思うんだけど..」
イルは、いまだに険しい表情のまま。
「ルテ...もしかしたら、メニルも転生者なのかもしれない」
それは、思ってもみなかった言葉だった。
「転生者って...だから行動が早くなったってこと?」
「そう。メニルを見かけたんだけど、小説のときと話し方と癖が違っていたんだ。小説のメニルは、おっとりとした話し方で、両手を前で握る癖があったんだ。だけど、今のメニルは猫被りな話し方で、横の髪をいじる癖があるみたい。」
そこまで違う点が見つかってしまったのなら、ほぼほぼ彼は転生者で確定なのかもしれない。
「でも、闇魔法を使って誰かが操っている、なんてこともあるかもしれないよ」
「たしかに、その可能性もあるね。でも、そしたら操っている人は誰なのかな?僕たちの行動による影響でそこまでなるの?」
「そ、そっか...たしかに、」
イルの言う通りだ。僕たちを排除したい人がいても、メニルを使う理由が分からない。
「じゃあ、メニルはやっぱり転生者なのかな?」
「確定でいいと思うけど、今後の様子を見てこれからの計画を立てよう」
それにしても、もしメニルも転生者だとしたら、この世界は転生者三昧ではないか。あまりにもいっぺんに多すぎでは?ひとつの世界に3人も転生者がいるのはいささかおかしい気もするが、そんなことを気にしている場合ではないことを思い出す。
ガサッ
「「!!?」」
後ろから物音がした。そして、人の歩いてくる音。誰だ?僕と向かい合っていておそらくその人物が見えているであろうと、イルを見てみると、真っ青な顔をしていた。
「やっと見つけた」
そう声をかけてきたのは他でもないメニルだった。何故か勝ち誇ったような笑みを浮かべて歩いてくる彼は、明るい癖っ毛の茶髪に蜂蜜色の瞳を持っている。
なぜ、そんなにドヤ顔をしているのか。その答えは、彼の背後にいた。
「...バトラ様?」
イルが青い顔でそう呟く。そう、メニルの後ろに、バトラが付いてきていたのだ。
「イルじゃないか。こんな所で何をしているのだ?」
サラサラの金髪に碧眼の、この国の第一王子は悪びれもなく聞く。
「それはこっちのセリフです。貴方は一体彼と何をしているのですか?」
イルが少し怒っているような、焦っているような声で聞く。まさか、メニルの行動が早すぎて、すでにバトラを攻略してしまったなんてことはないだろうな....
「ああ、彼のことか。彼はつい先程まで多くの人々に囲まれていてな。困っていたので助けたついでにこの学園を案内していたんだ。俺は事前に敷地を全て把握していたからな。」
そうバトラが説明する。よかった。逢瀬とかではなかったみたいだ。心なしかイルもほっとしている気がする。しかし、メニルの言葉でそんな安易な考えはすぐに消え去った。
「え~、バトラ様とはもっとな・か・よ・くなったじゃないですかぁ」
そう言ってバトラの腕に抱きつく。
「ちょっと!」
イルが怒った声を上げる。
「王子に抱きつくなど、あってはなりません。また仮にも殿下には婚約者がいらっしゃいます。」
もっともな指摘だ。そう易々と王子に抱きついたら普通は不敬で処されるだろう。
それなのにメニルは、
「え...怖いよぅ、バトラ様ぁ~」
などと、猫撫で声でよりバトラに抱きつく。なるほど、イルが彼は絶対に転生者だって言っていたことがよくわかる。小説のメニルはまずこんな話し方はしない。
これは、バトラの対応によってイルとバトラの関係にヒビが入ってしまう可能性がある。頼む!どうかここは正しい答えを言ってくれー!
「まあ、イルもそう強く言ってやるな。彼は平民なのだから、少しの不敬は問わない。」
絶望。メニルはこれぞとばかりに勝ち誇った顔。
イルがやばいと思って顔色を窺うと、予想外に彼は無表情だった。
「そうですか。わかりました。では、失礼致します。」
いや、無表情ではなかった。去り際、とても泣きそうな顔をしていた。このポンコツ殿下めー!こっそりひと睨みして、イルの後を追う。
イル、大丈夫かな...
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