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第2章
いざ
しおりを挟む月日が経ち、ついに今日はウィール国立学園に入学する。つまり、小説のストーリーが進み始めるということだ。
イルと2人で校門の前に立つ。
「ついに、だね」
「うん、少し緊張する...」
これまで、イルとはたくさん作戦を練ってきた。登場人物との接し方、予想外な事への対応など、僕たちが行動を変えた事による影響なども、複数考えた。15歳になった今、いつまでも子ども気分ではいられない。結局、僕の魔法は土魔法と緑魔法以外、増えることはなかった。だから、それ以外で補えるよう、勉強には力を入れ努力したつもりだ。イルはいつの間にか魔法が上達していて、15歳になり魔力測定をした時には、炎、雷、水の3つの魔法が、全て上級になっていた。
サクスム子爵家でのお茶会の出来事は、帰った後イルと侯爵ご夫妻にも話し、それ以降のパーティーは全て侯爵家で開くことになった。もちろん、侯爵家でその養子のことを悪く言う人は出なかったため、安心して社交の練習に役立てることができた。
貴族らしい立ち振る舞いに少しは近づいたと思う....多分
入学して早々、緊急事態が発生した。なんと、小説では同じクラスだったイルとエウテルが、別のクラスになってしまった。そして、何故か小説では別のクラスだったグランが、僕と一緒だったのである。原因としては、おそらく僕がヴァディエ家に養子入りしたから。どうやらこの学園では、兄弟は同じクラスになりにくいみたい。しかし、平民以外は階級によってクラスが決まるのに、元々伯爵だった僕と、公爵子息であるグランが何故同じなのだろうか。
加えて、この学園の寮は、一年時のクラスごとにまとまっているため、グランと出会してしまう可能性が高くなってしまった。
...とりあえず、無害な人間だと分かってもらえるように頑張ろう。
「....久しぶりだな」
「..お、お久しぶりです、同じクラスの人間として...どうぞ宜しくお願いします..」
席まで隣でした。
僕は呪われているのかもしれない。グラン自体を嫌っているわけではないが、イルと僕の安泰な未来にするには、どうか避けたい人なのだ。
しかし、こうなってしまった以上、毎日顔を合わさざるを得ない。彼の前ではずっとニコニコしていよう。いや、彼の前以外でもだけど。赤目だけど、無害だよって、逆に魔力が弱いことを盾にしてどうにか嫌われないようにしたい。それで、イルの手助けに集中するんだ。僕なんかいなくてもイルはなんでもこなせそうだけど。
...相変わらず彼の周りの空気は冷たい。暖かい黒色の目も、何故か冷たく感じる。そして、何故か僕をじっと見ている。
「....あの、グラン様?僕の顔に何か...」
いや、赤目が気になるのか?あの時は触れられなかったけど、やっぱりグランも僕を悪魔の子だって思ってるのかな。
「本当に、前と雰囲気が変わったな。貴方は本当にエウテル・キタラか?」
「え」
「...いや、何でもない。何年も経てば人は変わるのは当たり前のことだ。気にしないでくれ」
びっくりした...僕がエウテルじゃないってバレたのかと思った。今回は自己解決(?)してくれて助かったが、どうやらグランは勘が鋭いみたいだ。油断したらバレるかもしれない。「お前は誰だ?」なんて言われたら、人生終了まっしぐらだ。気をつけよう。
クラスの顔合わせが終わった頃、早速僕の赤目について皆コソコソ話している。カラコンがあれば、こんな事にはならなかったのだろうが、生憎この世界にはそういう技術がない。魔法でいけるだろうと思ったが、どんなに魔力が強くて、上級魔法を持つ人でも、何故か髪色しか変えられないみたいだ。もしかしたら、この世界では目は何か特別な意味を持っているのかもしれない。教師の目もあるため、表立っていじめはしてこないだろうが、一応気をつけておくに越したことはない。
気分が沈みながら、廊下を歩いて寮に向かっている途中、外がザワザワしているのに気づいた。気になって窓に近寄ると、外には生徒がたくさん集まっていた。
「メニル・リードレっていう、ものすごく美しい容姿の平民がいるんだってさ」
と、誰かがつぶやいた。
メニルは確か、入学式から半年経ったぐらいに噂が出始めたはず。それなのに何故今日?入学式早々ストーリーから外れすぎではないか。僕が養子に入った事による影響は、メニルとは全く関係ないはずなのに。
イルに早く伝えなきゃ。
焦って周りが見えていなかったエウテルは、自身の兄であるヒューズ・キタラが僕を見ていたのに気づかなかった。
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