15 / 42
第1章
2人で過ごす夜
しおりを挟む
侯爵様にはああ言われたけど、やっぱり一晩で答えを出すことにした。というか、答えはほぼ決まっていたんだ。けれど、僕が小心者だから、確定することができないでいた。
寝室に入ったあと、僕はベッドの上で悩むことにした。しばらく無駄な悩みを続けていると、コンコンと、ドアの叩く音が聞こえた。
(こんな時間に誰だろう?)
「イルだよ!入ってもいい?」
イル?どうしたんだろう?
「ど、どうぞ..」
イルは入ってきて早々、驚きの言葉を口にした。
「ねえルテ、今日一緒に寝てもいい?」
「一緒に?」
「うん!少しお話ししたくて。」
「...はい!誰かと一緒に寝られるの初めてだから嬉しいです」
「っ...じゃあお邪魔するね」
そう言ってイルは僕の隣に腰掛ける。
「ここでの暮らしはどう?不自由してない?」
「全然そんな事ないです!むしろ今までで一番良い場所で...目が合うとみんな挨拶してくれるし、話しかけてくれる人もいるんです。特にシンとリファーは気さくに接してくれて、嬉しいです!」
「そう。よかった!僕もリズが居てくれて毎日楽しいよ!」
そうリズは満面の笑みで応える。
(やっぱり綺麗だな~)
なんて推しの顔面をニコニコ見ていたら、
「だからさ、やっぱり僕はここで暮らして欲しいんだ。これからも。」
「え」
「ルテって、自分が思っているよりも結構自己肯定感が低いっていうか、自分が嫌われる前提で話している節があるんだよね。だから、今回のことも、それで悩んでるのかなって。」
「...」
周りからは、そう見えていたんだ。でも、前世でも、今世でも、周りから嫌われていたのは事実だし、多分、イルや侯爵家のみんなは今は僕に好意的だから、その中で過ごすのがすごく幸せなんだ。けど、迷惑をかけて、嫌われてしまうのが怖い。一回天国を見ると、地獄を見るのがこんなにも怖いだなんて、思ってもみなかった。
こういうのを、イルに伝えたいけど、伝えて失望させるのが怖い。こんなにひ弱な考えを持ってる人だったなんてって。だから言い出せない。
なかなか返事をしない僕に、イルは怒らずに、
「ルテ、そんなに思い悩む必要はないよ。もっと気楽に考えてみようよ。」
と、優しく言ってくれた。気を遣わせちゃったな。やっぱり僕はダメ人間だ...。
パチッ
「いたっ」
急におでこに衝撃が...デコピン?
「ほら、また自分が悪いなんてこと考えてるでしょ。まずまずさ、確かにルテを伯爵家から救い出すためっていうのもあるけど、僕はルテにここにいて欲しいから父上にこの提案をしたんだよ。」
「イルが提案したのですか?」
「そう。ルテに傷ついて欲しくないっていうのもあるけど、ルテと一緒に居たいから。小説のことも、僕たちの絆が深ければ深いほど、破滅回避の可能性が高くなるしね!作戦もたくさん立てられるし。」
確かに、破滅回避のためには2人の協力が必要だし、そのためには信頼が必要不可欠だ。
でも、それ以上に、僕と一緒にいたいって思ってくれてたことが嬉しい。あんまり、自分のことを卑下し過ぎても、自分が病んでいくだけで、周りには迷惑かけるだけなのかな。もう少し、自分の考えを改めてみようかな、少なくともここでは。
「ルテはどっちで暮らしたい?」
それはもちろん、
「ここで暮らしたい...」
「ルテはもっとルテの思うままに生きてよ。ルテのしたいことを、幸せだと思うことをするべきだよ!」
「したいこと...」
「そう!周りの目なんか気にしないでさ!しかも、転生したとはいえまだ12歳だよ?!大人の顔色なんて窺ってちゃダメでしょ!!」
そうだ、自分が子供なのをすっかり忘れてた。でも意外と、子供らしい態度をとっていた気がするけど。....思うままに、か。
「そういえば、僕たちお互いのこと全然知らないよね、ルテがしてて一番幸せだと思うことはなに?」
イルは期待満々といえるキラキラの目で僕を見て言う。幸せだと思うこと...それは、
「音楽。僕にとって...音楽が1番大切で、僕を幸せにしてくれるんです。」
「音楽!!じゃあ楽器とかやってたの?」
「ギターを趣味でちょっと...」
「じゃあギターはルテにとって1番の宝物なんだね!」
「!そう!1番、1番の宝物なんです!」
僕に興味もなかった親からのプレゼントで貰ったギターが、宝物なんだ。
そういえば、こっちに来てから一回も音楽に触れてないな。色々とありすぎて、少しだけ忘れていたけど、今ちょっと余裕が出てきたら、急に音楽不足だったのを思い出して、心も体も急激に音楽を求めている...。
「ねえ、この一連が終わったら、何か聴かせてよ。僕、ルテが奏でる音が聞きたい!」
「え...ほ、本当に僕なんかで良いのですか?」
「だから、いつも言ってるでしょ!!ルテがいいの!!」
膨れっ面で可愛く怒られて、僕は笑ってしまった。
「この世界、ギターとかあるのかな...」
「うーん、あるんじゃないかなあ...なかったら、作らせよう!!」
貴族の特権!!とか言って、胸を張ってるイルが可笑しくて、また笑ってしまった。
それにイルもつられたのか、笑い出して、2人してベットの上で笑っていた。
笑い疲れたのか、いつの間にか僕たちは深い眠りについていた。
寝室に入ったあと、僕はベッドの上で悩むことにした。しばらく無駄な悩みを続けていると、コンコンと、ドアの叩く音が聞こえた。
(こんな時間に誰だろう?)
「イルだよ!入ってもいい?」
イル?どうしたんだろう?
「ど、どうぞ..」
イルは入ってきて早々、驚きの言葉を口にした。
「ねえルテ、今日一緒に寝てもいい?」
「一緒に?」
「うん!少しお話ししたくて。」
「...はい!誰かと一緒に寝られるの初めてだから嬉しいです」
「っ...じゃあお邪魔するね」
そう言ってイルは僕の隣に腰掛ける。
「ここでの暮らしはどう?不自由してない?」
「全然そんな事ないです!むしろ今までで一番良い場所で...目が合うとみんな挨拶してくれるし、話しかけてくれる人もいるんです。特にシンとリファーは気さくに接してくれて、嬉しいです!」
「そう。よかった!僕もリズが居てくれて毎日楽しいよ!」
そうリズは満面の笑みで応える。
(やっぱり綺麗だな~)
なんて推しの顔面をニコニコ見ていたら、
「だからさ、やっぱり僕はここで暮らして欲しいんだ。これからも。」
「え」
「ルテって、自分が思っているよりも結構自己肯定感が低いっていうか、自分が嫌われる前提で話している節があるんだよね。だから、今回のことも、それで悩んでるのかなって。」
「...」
周りからは、そう見えていたんだ。でも、前世でも、今世でも、周りから嫌われていたのは事実だし、多分、イルや侯爵家のみんなは今は僕に好意的だから、その中で過ごすのがすごく幸せなんだ。けど、迷惑をかけて、嫌われてしまうのが怖い。一回天国を見ると、地獄を見るのがこんなにも怖いだなんて、思ってもみなかった。
こういうのを、イルに伝えたいけど、伝えて失望させるのが怖い。こんなにひ弱な考えを持ってる人だったなんてって。だから言い出せない。
なかなか返事をしない僕に、イルは怒らずに、
「ルテ、そんなに思い悩む必要はないよ。もっと気楽に考えてみようよ。」
と、優しく言ってくれた。気を遣わせちゃったな。やっぱり僕はダメ人間だ...。
パチッ
「いたっ」
急におでこに衝撃が...デコピン?
「ほら、また自分が悪いなんてこと考えてるでしょ。まずまずさ、確かにルテを伯爵家から救い出すためっていうのもあるけど、僕はルテにここにいて欲しいから父上にこの提案をしたんだよ。」
「イルが提案したのですか?」
「そう。ルテに傷ついて欲しくないっていうのもあるけど、ルテと一緒に居たいから。小説のことも、僕たちの絆が深ければ深いほど、破滅回避の可能性が高くなるしね!作戦もたくさん立てられるし。」
確かに、破滅回避のためには2人の協力が必要だし、そのためには信頼が必要不可欠だ。
でも、それ以上に、僕と一緒にいたいって思ってくれてたことが嬉しい。あんまり、自分のことを卑下し過ぎても、自分が病んでいくだけで、周りには迷惑かけるだけなのかな。もう少し、自分の考えを改めてみようかな、少なくともここでは。
「ルテはどっちで暮らしたい?」
それはもちろん、
「ここで暮らしたい...」
「ルテはもっとルテの思うままに生きてよ。ルテのしたいことを、幸せだと思うことをするべきだよ!」
「したいこと...」
「そう!周りの目なんか気にしないでさ!しかも、転生したとはいえまだ12歳だよ?!大人の顔色なんて窺ってちゃダメでしょ!!」
そうだ、自分が子供なのをすっかり忘れてた。でも意外と、子供らしい態度をとっていた気がするけど。....思うままに、か。
「そういえば、僕たちお互いのこと全然知らないよね、ルテがしてて一番幸せだと思うことはなに?」
イルは期待満々といえるキラキラの目で僕を見て言う。幸せだと思うこと...それは、
「音楽。僕にとって...音楽が1番大切で、僕を幸せにしてくれるんです。」
「音楽!!じゃあ楽器とかやってたの?」
「ギターを趣味でちょっと...」
「じゃあギターはルテにとって1番の宝物なんだね!」
「!そう!1番、1番の宝物なんです!」
僕に興味もなかった親からのプレゼントで貰ったギターが、宝物なんだ。
そういえば、こっちに来てから一回も音楽に触れてないな。色々とありすぎて、少しだけ忘れていたけど、今ちょっと余裕が出てきたら、急に音楽不足だったのを思い出して、心も体も急激に音楽を求めている...。
「ねえ、この一連が終わったら、何か聴かせてよ。僕、ルテが奏でる音が聞きたい!」
「え...ほ、本当に僕なんかで良いのですか?」
「だから、いつも言ってるでしょ!!ルテがいいの!!」
膨れっ面で可愛く怒られて、僕は笑ってしまった。
「この世界、ギターとかあるのかな...」
「うーん、あるんじゃないかなあ...なかったら、作らせよう!!」
貴族の特権!!とか言って、胸を張ってるイルが可笑しくて、また笑ってしまった。
それにイルもつられたのか、笑い出して、2人してベットの上で笑っていた。
笑い疲れたのか、いつの間にか僕たちは深い眠りについていた。
14
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説

悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです
魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。
ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。
そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。
このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。
前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。
※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

婚約者の恋
うりぼう
BL
親が決めた婚約者に突然婚約を破棄したいと言われた。
そんな時、俺は「前世」の記憶を取り戻した!
婚約破棄?
どうぞどうぞ
それよりも魔法と剣の世界を楽しみたい!
……のになんで王子はしつこく追いかけてくるんですかね?
そんな主人公のお話。
※異世界転生
※エセファンタジー
※なんちゃって王室
※なんちゃって魔法
※婚約破棄
※婚約解消を解消
※みんなちょろい
※普通に日本食出てきます
※とんでも展開
※細かいツッコミはなしでお願いします
※勇者の料理番とほんの少しだけリンクしてます
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【第2部開始】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~
ちくわぱん
BL
【第2部開始 更新は少々ゆっくりです】ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。

本当に悪役なんですか?
メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。
状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて…
ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる