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第1章
提案
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「...私たちの家族になってはくれないか?」
....
「え?」
「今は一応、保護という形で、我が家に住んでもらっているのだが、エウテルには正式に私たちの家族になってほしいと思っている。」
...まって、どういうこと?伯爵家に戻れって話じゃないの?疑問が多すぎて、しばらくポカンとしていた。そんな僕を見て侯爵様が、
「もちろん嫌であればちゃんと言って欲しい。無理強いはしたくない。」
「嫌じゃないです!!」
はっ、つい言ってしまった。でも、嫌じゃないのは本当だ。むしろここに居るのが今一番幸せなんだ。でも、どうやって家族になるんだろう?勝手にこのまま帰らずにいたら誘拐とかの容疑にかけられないのかな...伯爵家はどう言ってくるんだろう..
「父上、お言葉ですが、少々説明が足りないように思います。」
「そうよ。両親との誤解が解けたばかりなのに、急に侯爵家に来いだなんて、困惑しかないわよ。」
ナイスイルと夫人。そう。そこが聞きたかったんだ。なんで家族になろうなんて言ったのか。
「む。そうだな。急にすまなかった。緊張してしまってな...」
侯爵様でも緊張するんだ...いつも堂々としてて爽やかでかっこいいからちょっと意外かも...
「私たちの家族になろうと言ったのは、もちろん養子にということだ。今回のことを経て、このままエウテルを伯爵家に返しても良いのだろうかと私たちは考えた。」
「...私たち?」
「そうだ。この3人でな。」
いつの間にか、そんなことを話してたんだ...僕のために、時間を割いてこんなことをしてくれてたなんて、なんて心の優しい人たちなんだろう。
「それで、エウテルを今の状態で伯爵家に返してしまえば、今回の二の舞になってしまうような気がしてな。脅威は去ったと思ったが、まだ潜んでいるんだ。...わかるね?」
「...もしかして、兄弟のことですか?」
「そうだ。いずれは2人にも誤解を解いてもらわなければならないが、メイドたちに結構なことを吹き込まれたみたいで今日会うことさえしてくれなかっただろう。」
確かに、事実を話す前に、拒絶されたもんな。
「それが、すぐに誤解を解くことがどれだけ難しいかを物語っている。両親はエウテルを赤目に偏見を持たず愛しているが、兄弟も赤目に偏見を持っていないとは限らない。今回のメイドたちと同じ考えかもしれない。色々と吹き込まれたわけだしな。」
「だから、エウテルが伯爵家に戻ったらその2人に何をされるかわからないだろう。両親もそんな事は望んでいないだろうし。」
「エウテルの返答を聞き次第、両親に話をつけに行く。もちろん、ゆっくりでいい。急かさないから、少しだけでも、考えてはくれないか...?」
そこまで考えてくれていたなんて、なんで侯爵家のみんなは僕にこんなに良くしてくれるのだろう。
両親に愛されていると知った時は、確かに嬉しかったけど、やっぱりここにいる時が幸せだ。あっちに行けば、罪悪感に溢れた両親に気を遣われ、兄弟の誤解は解けずにまた虐められるなんてこともあるかもしれない。そんな所にいて、幸せなのか...?確かに血のつながった家族のもとで住むのが一番良いんだろうけど、僕にとっては幸せじゃない。今世は幸せになるって決めたんだ。独りぼっちの人生はもういやだ。そして、まだ僕は侯爵家のみんなに恩返しをしていない。今戻ってしまったら、その機会がなくなってしまうかもしれない。
でも...
「...本当に僕なんかが宜しいのですか?」
僕が居ても、ただ迷惑をかけるだけかもしれない。使用人の仕事量も増えるし。
「ルテだから良いんだよ。」
そうイルが僕の手を掴んで言った。
「僕はルテと家族になれるのなら、とても嬉しい。兄弟がいないから、弟が出来たみたいでね!」
イルの笑顔が眩しい。でも、やっぱり不安だ。また問題に侯爵家を巻き込んでしまうかもしれない。周りの人を傷つけたくない。いや、傷つけるのが怖いんだ。自分が傷つけてしまったということが。結局、僕は自分の保身に走る。僕は、侯爵家に相応しくない。
「少し、考えさせてください...」
でも、答えを出さないままここに居座るのは迷惑だ。
「一晩、一晩で答えを出します。だから、少し待っていてくれませんか...?」
おそるおそる侯爵様を見ると、穏やかな顔で、
「わかった。一晩と言わず、自分が納得するまで考えるが良いよ。なあに、決まっていないからといってエウテルを追い出すわけがないさ。」
まるで自分の考えが見透かされたみたいで、少し恥ずかしかった。
....
「え?」
「今は一応、保護という形で、我が家に住んでもらっているのだが、エウテルには正式に私たちの家族になってほしいと思っている。」
...まって、どういうこと?伯爵家に戻れって話じゃないの?疑問が多すぎて、しばらくポカンとしていた。そんな僕を見て侯爵様が、
「もちろん嫌であればちゃんと言って欲しい。無理強いはしたくない。」
「嫌じゃないです!!」
はっ、つい言ってしまった。でも、嫌じゃないのは本当だ。むしろここに居るのが今一番幸せなんだ。でも、どうやって家族になるんだろう?勝手にこのまま帰らずにいたら誘拐とかの容疑にかけられないのかな...伯爵家はどう言ってくるんだろう..
「父上、お言葉ですが、少々説明が足りないように思います。」
「そうよ。両親との誤解が解けたばかりなのに、急に侯爵家に来いだなんて、困惑しかないわよ。」
ナイスイルと夫人。そう。そこが聞きたかったんだ。なんで家族になろうなんて言ったのか。
「む。そうだな。急にすまなかった。緊張してしまってな...」
侯爵様でも緊張するんだ...いつも堂々としてて爽やかでかっこいいからちょっと意外かも...
「私たちの家族になろうと言ったのは、もちろん養子にということだ。今回のことを経て、このままエウテルを伯爵家に返しても良いのだろうかと私たちは考えた。」
「...私たち?」
「そうだ。この3人でな。」
いつの間にか、そんなことを話してたんだ...僕のために、時間を割いてこんなことをしてくれてたなんて、なんて心の優しい人たちなんだろう。
「それで、エウテルを今の状態で伯爵家に返してしまえば、今回の二の舞になってしまうような気がしてな。脅威は去ったと思ったが、まだ潜んでいるんだ。...わかるね?」
「...もしかして、兄弟のことですか?」
「そうだ。いずれは2人にも誤解を解いてもらわなければならないが、メイドたちに結構なことを吹き込まれたみたいで今日会うことさえしてくれなかっただろう。」
確かに、事実を話す前に、拒絶されたもんな。
「それが、すぐに誤解を解くことがどれだけ難しいかを物語っている。両親はエウテルを赤目に偏見を持たず愛しているが、兄弟も赤目に偏見を持っていないとは限らない。今回のメイドたちと同じ考えかもしれない。色々と吹き込まれたわけだしな。」
「だから、エウテルが伯爵家に戻ったらその2人に何をされるかわからないだろう。両親もそんな事は望んでいないだろうし。」
「エウテルの返答を聞き次第、両親に話をつけに行く。もちろん、ゆっくりでいい。急かさないから、少しだけでも、考えてはくれないか...?」
そこまで考えてくれていたなんて、なんで侯爵家のみんなは僕にこんなに良くしてくれるのだろう。
両親に愛されていると知った時は、確かに嬉しかったけど、やっぱりここにいる時が幸せだ。あっちに行けば、罪悪感に溢れた両親に気を遣われ、兄弟の誤解は解けずにまた虐められるなんてこともあるかもしれない。そんな所にいて、幸せなのか...?確かに血のつながった家族のもとで住むのが一番良いんだろうけど、僕にとっては幸せじゃない。今世は幸せになるって決めたんだ。独りぼっちの人生はもういやだ。そして、まだ僕は侯爵家のみんなに恩返しをしていない。今戻ってしまったら、その機会がなくなってしまうかもしれない。
でも...
「...本当に僕なんかが宜しいのですか?」
僕が居ても、ただ迷惑をかけるだけかもしれない。使用人の仕事量も増えるし。
「ルテだから良いんだよ。」
そうイルが僕の手を掴んで言った。
「僕はルテと家族になれるのなら、とても嬉しい。兄弟がいないから、弟が出来たみたいでね!」
イルの笑顔が眩しい。でも、やっぱり不安だ。また問題に侯爵家を巻き込んでしまうかもしれない。周りの人を傷つけたくない。いや、傷つけるのが怖いんだ。自分が傷つけてしまったということが。結局、僕は自分の保身に走る。僕は、侯爵家に相応しくない。
「少し、考えさせてください...」
でも、答えを出さないままここに居座るのは迷惑だ。
「一晩、一晩で答えを出します。だから、少し待っていてくれませんか...?」
おそるおそる侯爵様を見ると、穏やかな顔で、
「わかった。一晩と言わず、自分が納得するまで考えるが良いよ。なあに、決まっていないからといってエウテルを追い出すわけがないさ。」
まるで自分の考えが見透かされたみたいで、少し恥ずかしかった。
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