悪役令息の取り巻きになっても、音楽はできますか?!

ユパンキ

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第1章

キタラ伯爵家2〈イル視点〉

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 諜者から情報が入った。

 「十分すぎるな。」

 うちの騎士団の諜者が、キタラ伯爵家の使用人として紛れ込んで、さりげなく聴取をしたところ、使用人、特にいじめの主犯格にいるメイドたちは、みんなお喋りだったようで、あっさり証言が取れた。自慢すらしてきたらしい。
 
 『坊ちゃまはどこかに消えたけど、報告さえしなければ、旦那様たちは気づかずに、私たちが一生懸命働いてると思い込んでいるから、働かずに金がもらえるのよ!!』
 
 『ちょっとムカついたことがあったら、坊ちゃまを鞭で叩いてストレス発散するの!抵抗しないから、スッキリするまでできるわ!!』
 
 『坊ちゃまが消える前の日、私が死なない程度の毒を飲ませたの。あの苦しむ姿は見ものだったわ!!あんな赤い目、気持ち悪いものだからつい!これに耐えきれなくなって、逃げ出したのかもね!どうせ道中でのたれ死んでいるわ!!』
 『『『アハハ!!!』』』

 などと、なんと胸糞の悪い...!

 「胸糞が悪いわ...!!」

 母上も同じことを思っていたようで、ものすごく怒っていた。
 結局、嫌がらせの種類は20個程。それを聞いたとき、僕たちは絶句した。なぜ、ルテはこれを耐えれていたのかわからない。僕はもう、虐めてきた奴らを全員殺してやりたい勢いだ。絶対に許さない!!母上はもう、ショックで泣き崩れていた。

 「どう報復してくれよう。」

 父上も、怒りで額に血管が浮き上がっていた。
 両親がこんなに怒るのは初めてで、少し驚いたけど、おかげで僕は冷静になることができた。

 「まずは、ルテに伝えますか?」
 「そこが迷いどころなんだよなあ」

 確かに、もうこれ以上ルテに傷ついてほしくない。でも、ルテが知らないで、こちらが勝手に制裁を行ってもいいのかな?ルテはそれを望んでいない可能性もあるし。
 
 「いつかはルテも知らなければならない日が必ず来ます。辛いことは、早めに解消しておくべきでは?」

 「それもそうだわ。いつまでも蟠りを残しておくわけにもいかないわよね。」

 「そうだな。うん...よし。このことは、エウテルに伝えてから対応を考えるようにしよう。そこでだが...イル、お前が話してはくれないか?あの子はまだ完全に私たちを信用したわけではない。そんな人たちに囲まれて辛い話を聞かされるのはごめんだろう。エウテルはイルには、結構心を開いている気がするのでな。」
 「元からそのつもりです!!」

 「よろしい。では、話すタイミングはイルの自由でいい。私たちはいつでも待っている。」
 そう言って父上は優しい笑顔を見せた。

 両親が、こんなに頼もしい人たちでよかった。ルテは、ちゃんと聞いてくれるかな。少しでも辛そうな顔をしたら話すのは一旦止めよう。まだ時間はある。ゆっくり進んでいけばいい。

 
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