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第1章
早すぎる再会
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目が覚めると、絨毯の上だった。
見知らぬ天井に思わずびっくりする。
(そうだ、転生したんだった)
毒を飲んだはずだけど、生きてる?毒じゃなかったのか?でも体はまだ痺れているし、頭も痛い。やっぱり毒だったんだろう。意外にエウテルの体が頑丈だったのか、毒がそこまで強くなかったのか。
気絶したまま居場所が変わっていないから、メイドはあの後普通に部屋を出て行った後誰も呼ばなかったのだろう。
毒を飲まされて目が覚めた。もうここでは、前世以上に周りに期待してはいけないと。
もう両親にも期待しない。どうせほったらかしだし、嫌われているのだろう。もちろん兄弟も。
誰も信用しない。これからは自分と音楽のためだけに、幸せな生活を目指す。
...死にたくないのなら、初めから死ぬ可能性があるところにいなければ良いのでは?エウテルがほったらかしにされているのなら、急にいなくなっても誰も気にしないだろう。むしろ、いらないお荷物が自分から消えてくれて好都合だ。
この家から出て平民になって、そこで自由に音楽をやろう。路上でライブなんかしたら、少しは稼げるかな?もし駄目だったら、どこかでバイトしながら、コツコツ生活費を貯めて、あとは音楽に注ぎ込もう。
イルだけが、心残りだ。推しになっちゃったし...でも、転生者だということはほぼ確定だし、なんとかやっていけるのでは?エウテルなんかいてもいなくても結末は変わらないだろうし。街でばったり会ったら挨拶でもしておこうかな。
この家にいたままだと命が危ないと感じたので、とりあえず外に出る準備をする。カーテンを開けると、陽の光がエウテルの部屋に差し込み、小鳥が鳴いている。もう朝らしい。会場は片付けられているので、もうパーティーは終わったのだろう。この家を出ていくのにはうってつけの時間だ。
そういえば、エウテルは小説の挿絵には後ろ姿しか描かれていなかったのを思い出して、気になったのでドアのそばにある姿見を見る。
「綺麗....」
想像以上に美形だった。これでモブだったなんて、なんか勿体無いと思った。潤羽色の髪に、瞳....いや、待てよ
(右目だけ赤い)
中世ヨーロッパが舞台にしては少し和風な、臙脂色。黒い髪と合わさってなんだか日本風の二次元のキャラクターみたい。結構おしとやかな顔つきなんだなー。悪役の取り巻きって顔じゃない。
前世は本当に平凡な見た目だったから、自分がこんな見た目だって実感が湧かない。でも、気に入ってよかった。顔まで嫌いになってたら、自己肯定感が低すぎる人間になってたかもだから。
クローゼットの中を見てみたけど、平民の街で着られるような服はなかったので、荷物は軽い。
「よし。」
もう覚悟は決めた。転生して早々にってちょっとあれだけど、僕は平民として生きていくんだ。
大好きな音楽と共に生きて、小説のように面倒ごとには巻き込まれない。僕は自由になるんだ。
そう誓って窓からこっそり外に出た。
(一階でよかった。)
貴族の部屋が一階っておかしい気もするけど、もう僕には関係ない。
「よし、いくか。」
「どこに行くの?」
「え?」
僕は声のした方を見る。
するとそこには少年が立っていた。イルだ。
「えっ..と、なんでこんなところにイル様が、、、?」
「うーん、なんでかな?」
「え?」
なんでかな?とは?どういう意味だろう。無意識に来たとか?
そんなことを考えていると、イルが近づいてくる。
「ほら、行こう?」
そう言ってイルは僕の手を掴む。
「ちょ、ちょっと待ってください!行くってどうこに..?何かご用がありましたか、、、?」
僕がそう言うと、イルはキョトンとする。そしてすぐに笑い出した。
「あははっ、何言ってるの?こんな所に用はないよ。いや、用はあるかな。ルテに。」
「私に?」
イルはコクッと頷く。すると、僕のほうをチラリと見たあと、こう言った。
「僕はルテの境遇を知っている。」
「!!」
やっぱり、彼も転生者だったのか?
確認のために、聞いてみる。
「それは、あなたも転生者だからですか?」
この予想が当たっていなかったら、終わりかもしれない。
だけど、そうだと僕の勘が言っている。
イルは一瞬驚いた顔をしたあと、フッと笑って頷いた。
「うん。そうだよ。」
「やっぱり、そうだったんですね。」
イルはこう続けた。
「ここがBL小説の世界だってことも知ってる。」
「え」
「"あなたも"ってことは、ルテもなんだよね」
「あ」
しまった。墓穴を掘ってしまった。
「やっぱり。最初に出会ったときに話し方が違うからびっくりしたもん」
あのとき『あれ、なんか違う』と言っていたのはそういうことだったのか。なら納得だ。
「ねえルテ。ここから脱出しない?」
見知らぬ天井に思わずびっくりする。
(そうだ、転生したんだった)
毒を飲んだはずだけど、生きてる?毒じゃなかったのか?でも体はまだ痺れているし、頭も痛い。やっぱり毒だったんだろう。意外にエウテルの体が頑丈だったのか、毒がそこまで強くなかったのか。
気絶したまま居場所が変わっていないから、メイドはあの後普通に部屋を出て行った後誰も呼ばなかったのだろう。
毒を飲まされて目が覚めた。もうここでは、前世以上に周りに期待してはいけないと。
もう両親にも期待しない。どうせほったらかしだし、嫌われているのだろう。もちろん兄弟も。
誰も信用しない。これからは自分と音楽のためだけに、幸せな生活を目指す。
...死にたくないのなら、初めから死ぬ可能性があるところにいなければ良いのでは?エウテルがほったらかしにされているのなら、急にいなくなっても誰も気にしないだろう。むしろ、いらないお荷物が自分から消えてくれて好都合だ。
この家から出て平民になって、そこで自由に音楽をやろう。路上でライブなんかしたら、少しは稼げるかな?もし駄目だったら、どこかでバイトしながら、コツコツ生活費を貯めて、あとは音楽に注ぎ込もう。
イルだけが、心残りだ。推しになっちゃったし...でも、転生者だということはほぼ確定だし、なんとかやっていけるのでは?エウテルなんかいてもいなくても結末は変わらないだろうし。街でばったり会ったら挨拶でもしておこうかな。
この家にいたままだと命が危ないと感じたので、とりあえず外に出る準備をする。カーテンを開けると、陽の光がエウテルの部屋に差し込み、小鳥が鳴いている。もう朝らしい。会場は片付けられているので、もうパーティーは終わったのだろう。この家を出ていくのにはうってつけの時間だ。
そういえば、エウテルは小説の挿絵には後ろ姿しか描かれていなかったのを思い出して、気になったのでドアのそばにある姿見を見る。
「綺麗....」
想像以上に美形だった。これでモブだったなんて、なんか勿体無いと思った。潤羽色の髪に、瞳....いや、待てよ
(右目だけ赤い)
中世ヨーロッパが舞台にしては少し和風な、臙脂色。黒い髪と合わさってなんだか日本風の二次元のキャラクターみたい。結構おしとやかな顔つきなんだなー。悪役の取り巻きって顔じゃない。
前世は本当に平凡な見た目だったから、自分がこんな見た目だって実感が湧かない。でも、気に入ってよかった。顔まで嫌いになってたら、自己肯定感が低すぎる人間になってたかもだから。
クローゼットの中を見てみたけど、平民の街で着られるような服はなかったので、荷物は軽い。
「よし。」
もう覚悟は決めた。転生して早々にってちょっとあれだけど、僕は平民として生きていくんだ。
大好きな音楽と共に生きて、小説のように面倒ごとには巻き込まれない。僕は自由になるんだ。
そう誓って窓からこっそり外に出た。
(一階でよかった。)
貴族の部屋が一階っておかしい気もするけど、もう僕には関係ない。
「よし、いくか。」
「どこに行くの?」
「え?」
僕は声のした方を見る。
するとそこには少年が立っていた。イルだ。
「えっ..と、なんでこんなところにイル様が、、、?」
「うーん、なんでかな?」
「え?」
なんでかな?とは?どういう意味だろう。無意識に来たとか?
そんなことを考えていると、イルが近づいてくる。
「ほら、行こう?」
そう言ってイルは僕の手を掴む。
「ちょ、ちょっと待ってください!行くってどうこに..?何かご用がありましたか、、、?」
僕がそう言うと、イルはキョトンとする。そしてすぐに笑い出した。
「あははっ、何言ってるの?こんな所に用はないよ。いや、用はあるかな。ルテに。」
「私に?」
イルはコクッと頷く。すると、僕のほうをチラリと見たあと、こう言った。
「僕はルテの境遇を知っている。」
「!!」
やっぱり、彼も転生者だったのか?
確認のために、聞いてみる。
「それは、あなたも転生者だからですか?」
この予想が当たっていなかったら、終わりかもしれない。
だけど、そうだと僕の勘が言っている。
イルは一瞬驚いた顔をしたあと、フッと笑って頷いた。
「うん。そうだよ。」
「やっぱり、そうだったんですね。」
イルはこう続けた。
「ここがBL小説の世界だってことも知ってる。」
「え」
「"あなたも"ってことは、ルテもなんだよね」
「あ」
しまった。墓穴を掘ってしまった。
「やっぱり。最初に出会ったときに話し方が違うからびっくりしたもん」
あのとき『あれ、なんか違う』と言っていたのはそういうことだったのか。なら納得だ。
「ねえルテ。ここから脱出しない?」
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