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第1章
期待
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意気込んでみたのはいいものの、この世界については、小説でかかれたこと以外は全く知らない。
ましてや、悪役令息の取り巻きの生い立ちなんてそんな書かれるものでもないし。今知っている情報と言えば、キタレ伯爵の次男だということだけ。
今は三男のお披露目パーティー中らしいし、僕もそろそろ会場に戻らないとだよな。
ここの次男はちゃんと両親に愛されて育ってきたのかな、それとも、僕と同じで無関心だったのかな?
とりあえず、会場に向かうことにした。
1分ほど歩いていると、賑やかになってきたので、きっとこの近くが会場だろう。
そう確信して会場の中に入ると、そこには、着飾った人たちや、スイーツ中心の食べ物で溢れかえっていた。
もともと人が沢山いる場所があまり好きではないので、誰かに見つかって会話が始まったらまずいと思って、目立たないように端っこを歩きながら家の入り口を探す。
なんとなく、僕は必要なさそうだったので。
キョロキョロと、辺りを見回していると、メイドっぽい格好をした人が近づいてきた。
(やばい!不審者だと思われたかな、、)
慌てて下を向いてうずくまっていると、そのメイドは怪訝な顔をしながらこう聞いてきた。
「エウテル様...?何故外に出ておられるのですか?」
「...へ?」
外に出てたらダメなのか?
僕の反応が気に食わなかったのか、メイドはムッとして、
「早く邸の中へお入りください」
と、強い口調で僕が邸に入るのを促す。
なんか...エウテル嫌われてないか?
エウテルは幼少期から性格が悪かったのかなあ、
ちょっと残念だな。
僕は転生しても誰にも愛されない運命だったみたいだ。前前世で大罪でも犯したのかな
こんな時こそ音楽をやりたいんだけど、流石に自由に動けないよな
メイドの目上の人である僕への態度がこれだから、両親はどんな感じなんだろう。もっと酷いことにあってたりして...
メイドのお導きもあり、やっと自分の部屋に着くことができた。
「ここでしばらくの間過ごしていてください。」
そうピシャリと言ってメイドは出て行った。
(大分嫌われてるんだな)
とりあえず、辺りを見回してみる。
「うわあ~」
何もない。
ベットとか日常に必要そうなのはあるにはあるんだけど、本棚もないし、もちろん楽器もない。
この人、何をして今まで生きてきたんだろう。
部屋の中を見回すたびに、僕の心は暗くなっていく。
「愛されないなら、せめて自由に生きたいなあ」
そんなこと、叶うわけないってわかってる。だって貴族だし、伯爵だし。
でも、僕だって人間だ。幸せになりたい気持ちはたっぷりとある。
もう愛されないのには慣れたし、これからも期待はしない。愛されなくていいから、自由になってずっと音楽と生きていきたい。
「神様は意地悪だなあ」
いや、きっと神様なんていないんだと思う。もし、神様がいるのなら、僕のどこがダメで、こんな運命になったのかを聞きたい。
(存在自体がダメなんだろうな。)
なんて、すぐ貧弱な思考になってしまうのもだめなのかな。
でも、音楽だけが本当に僕の味方なんだ。これがなくなってしまったら、壊れてしまうかもしれない。
(いや、もっとポジティブに生きないと。)
心を強く持つためにも、ポジティブに生きて、大好きな音楽で幸せになるんだ。
そう誓って部屋の中へと進む。
(日記とか、ありそうだよな)
小説の中で、エウテルは文字を書くのが好きとか書いてあったしな。本とかは部屋の中に一切ないけど。
部屋の中央付近に位置している机の引き出しを漁ってみる。
「あ、あった」
案外すぐに見つかった。日記は2冊目に突入しているみたいだ。表紙には、エメラルドのような宝石が埋まっている。流石貴族といったところか。
「あれ?開かない」
本を開こうとしたところ、びくともしなかった。しかし、鍵があるわけでもないし、でもちゃんと表紙には日記って書いてあるし、、
(どういうことだ?)
10分くらいだろうか、ずっと立ちすくんで悩んでいたら、
コンコン
「エウテル様」
さっきとは違う女性の声だ。
メイドかな?
「どうぞ」
「失礼致します」
入ってきたのは、予想通りメイドだった。
栗色の髪、瞳に、頬にそばかすを散らした可愛らしい女性だった。見た目は18歳くらいだ。
「お茶を持って参りました。」
ニコニコと笑うそのメイドは、僕に対して好意的な感じだった。
(もしかして、嫌われてない?)
ちょうど悩んでいたこともあってので、確かめるために話しかけてみた。
「あの、日記の開きかたを忘れちゃったんだけど、知ってたりしない?」
「日記でございますか」
「うん」
「申し訳ございません。日記はリズ様の私事ですので、私は存じ上げておりません。」
そのメイドは、申し訳なさそうな顔をして、頭を下げた。さっきのメイドがあんな態度だったし、少し期待していいかも?
「あ、あの「お茶が冷めますので、お召し上がりください」」
「あ...わ、わかりました、、」
今、めっちゃ被せられた...
接し方は人それぞれだし、あからさまな態度取りすぎて解雇されないようにこの人はしてるのかな。
残念。やっぱり僕は誰にも好かれてないのかも。
まだメイドには2人しか会ってないけど。
勝手に期待して残念がって、僕ってめんどくさい人間だな。もう期待しないって誓ったばっかなのに。
そう自嘲して、お茶を飲んだ。
「!!」
ガシャン!!!
な、なんだ、、?
口に入れた瞬間から、舌が痺れて痛い
...毒?手も痺れてきた。
助けを求めようと、メイドの方を見やると、
驚くことにメイドは笑っていた。
「な、なんで、、」
毒を入れたのはメイド...?どうして...
そこまで嫌われていたの?一体エウテルは何をしたんだ...
(転生してすぐ死ぬとは...)
無念にも僕の意識はそこで途切れた。
ましてや、悪役令息の取り巻きの生い立ちなんてそんな書かれるものでもないし。今知っている情報と言えば、キタレ伯爵の次男だということだけ。
今は三男のお披露目パーティー中らしいし、僕もそろそろ会場に戻らないとだよな。
ここの次男はちゃんと両親に愛されて育ってきたのかな、それとも、僕と同じで無関心だったのかな?
とりあえず、会場に向かうことにした。
1分ほど歩いていると、賑やかになってきたので、きっとこの近くが会場だろう。
そう確信して会場の中に入ると、そこには、着飾った人たちや、スイーツ中心の食べ物で溢れかえっていた。
もともと人が沢山いる場所があまり好きではないので、誰かに見つかって会話が始まったらまずいと思って、目立たないように端っこを歩きながら家の入り口を探す。
なんとなく、僕は必要なさそうだったので。
キョロキョロと、辺りを見回していると、メイドっぽい格好をした人が近づいてきた。
(やばい!不審者だと思われたかな、、)
慌てて下を向いてうずくまっていると、そのメイドは怪訝な顔をしながらこう聞いてきた。
「エウテル様...?何故外に出ておられるのですか?」
「...へ?」
外に出てたらダメなのか?
僕の反応が気に食わなかったのか、メイドはムッとして、
「早く邸の中へお入りください」
と、強い口調で僕が邸に入るのを促す。
なんか...エウテル嫌われてないか?
エウテルは幼少期から性格が悪かったのかなあ、
ちょっと残念だな。
僕は転生しても誰にも愛されない運命だったみたいだ。前前世で大罪でも犯したのかな
こんな時こそ音楽をやりたいんだけど、流石に自由に動けないよな
メイドの目上の人である僕への態度がこれだから、両親はどんな感じなんだろう。もっと酷いことにあってたりして...
メイドのお導きもあり、やっと自分の部屋に着くことができた。
「ここでしばらくの間過ごしていてください。」
そうピシャリと言ってメイドは出て行った。
(大分嫌われてるんだな)
とりあえず、辺りを見回してみる。
「うわあ~」
何もない。
ベットとか日常に必要そうなのはあるにはあるんだけど、本棚もないし、もちろん楽器もない。
この人、何をして今まで生きてきたんだろう。
部屋の中を見回すたびに、僕の心は暗くなっていく。
「愛されないなら、せめて自由に生きたいなあ」
そんなこと、叶うわけないってわかってる。だって貴族だし、伯爵だし。
でも、僕だって人間だ。幸せになりたい気持ちはたっぷりとある。
もう愛されないのには慣れたし、これからも期待はしない。愛されなくていいから、自由になってずっと音楽と生きていきたい。
「神様は意地悪だなあ」
いや、きっと神様なんていないんだと思う。もし、神様がいるのなら、僕のどこがダメで、こんな運命になったのかを聞きたい。
(存在自体がダメなんだろうな。)
なんて、すぐ貧弱な思考になってしまうのもだめなのかな。
でも、音楽だけが本当に僕の味方なんだ。これがなくなってしまったら、壊れてしまうかもしれない。
(いや、もっとポジティブに生きないと。)
心を強く持つためにも、ポジティブに生きて、大好きな音楽で幸せになるんだ。
そう誓って部屋の中へと進む。
(日記とか、ありそうだよな)
小説の中で、エウテルは文字を書くのが好きとか書いてあったしな。本とかは部屋の中に一切ないけど。
部屋の中央付近に位置している机の引き出しを漁ってみる。
「あ、あった」
案外すぐに見つかった。日記は2冊目に突入しているみたいだ。表紙には、エメラルドのような宝石が埋まっている。流石貴族といったところか。
「あれ?開かない」
本を開こうとしたところ、びくともしなかった。しかし、鍵があるわけでもないし、でもちゃんと表紙には日記って書いてあるし、、
(どういうことだ?)
10分くらいだろうか、ずっと立ちすくんで悩んでいたら、
コンコン
「エウテル様」
さっきとは違う女性の声だ。
メイドかな?
「どうぞ」
「失礼致します」
入ってきたのは、予想通りメイドだった。
栗色の髪、瞳に、頬にそばかすを散らした可愛らしい女性だった。見た目は18歳くらいだ。
「お茶を持って参りました。」
ニコニコと笑うそのメイドは、僕に対して好意的な感じだった。
(もしかして、嫌われてない?)
ちょうど悩んでいたこともあってので、確かめるために話しかけてみた。
「あの、日記の開きかたを忘れちゃったんだけど、知ってたりしない?」
「日記でございますか」
「うん」
「申し訳ございません。日記はリズ様の私事ですので、私は存じ上げておりません。」
そのメイドは、申し訳なさそうな顔をして、頭を下げた。さっきのメイドがあんな態度だったし、少し期待していいかも?
「あ、あの「お茶が冷めますので、お召し上がりください」」
「あ...わ、わかりました、、」
今、めっちゃ被せられた...
接し方は人それぞれだし、あからさまな態度取りすぎて解雇されないようにこの人はしてるのかな。
残念。やっぱり僕は誰にも好かれてないのかも。
まだメイドには2人しか会ってないけど。
勝手に期待して残念がって、僕ってめんどくさい人間だな。もう期待しないって誓ったばっかなのに。
そう自嘲して、お茶を飲んだ。
「!!」
ガシャン!!!
な、なんだ、、?
口に入れた瞬間から、舌が痺れて痛い
...毒?手も痺れてきた。
助けを求めようと、メイドの方を見やると、
驚くことにメイドは笑っていた。
「な、なんで、、」
毒を入れたのはメイド...?どうして...
そこまで嫌われていたの?一体エウテルは何をしたんだ...
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無念にも僕の意識はそこで途切れた。
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