悪役令息の取り巻きになっても、音楽はできますか?!

ユパンキ

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プロローグ

突然の出来事

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 「聞いてるのって言ってんのよ!!」

 急に刺されて、死んだと思えば、女性が目の前にいて、しかもドレスを着ているとなると、、
 (天国か地獄....?それとも、夢?)
 思わず自分の頬をつねる。
 (痛い...夢じゃない)
 こんなやり方じゃあわかるわけないけど。
とりあえず、この状況を打破せねば。

 「す..すみません、ここってどこですか?」
 
 「は?」

 流石に第一声がこれはやばかったか。しかし、どういう状況で、ここがどういう場所なのかもわからない今は、聞いている聞いてないなどと、安易に答えては後悔する気がする。
 
 そして、今気づいたが、自分の発する声に少し違和感がある。こんなに涼やかな声だっただろうか...

 「ここはウィール王国よ。何阿呆な事言ってるの、自分の生まれを忘れてしまったのかしらね?」
 
 ウィール王国...?どこだそれは。ウィーンみたいな名前だがまずウィーンは国ではなく首都だ。
 (でもどこかで聞いたことがあるような無いような...)
 とにかく、ウィールだとしても、ウィーンだとしても、僕は日本から出たことがないし、さっきまで会社にいたし...

 (てことは、転生...ってことなのか?)
 
 「その...僕の名前とかは、、、」

 「はあ?!名前まで忘れてしまったの?とうとう本当に阿呆になってしまったみたいね、、、」
 
 「あの...ちょっと衝撃で頭が混乱してしまって、、、」

 「なによ!私がゴリラだって言いたいの?」

 「ち、違います!!」

 「はあ。まあいいわ。 
いいわね!あなたの名前はエウテル・キタラよ!キタラ伯爵家の次男!!わかった?!!」

 「はいぃぃぃ」
 強気に教える女性に恐縮してしまい、ブルブル震えながらなんとか返事をした。

 「それで...この状況は、、、」

 キッッッ
 「ヒッ」

 その大きい目で僕を睨む。だいぶ怒っているようだ。僕がこの体に乗り移る前にエウテル・キタラは何かしでかしていたのだろうか...
 転生直後にそれは苦しいかも..

 「申し訳ございません!!本当に記憶が散乱していて、、、!!御教えいただけないでしょうか!!!」
 
 知っている範囲内で最大限の敬語を使って土下座する。
 何もしでかしてませんように!!!

 「いい?三度目の正直。これで終わりよ。
そんな怯えた顔しないでちょうだい。私が悪者みたいじゃない。
 今はキタラ伯爵家、あなたのところの三男のお披露目パーティー。少し休憩しようと庭に来たところにあなたが倒れていたのよ。何かブツブツ呟いていたから、気味が悪くて無理やり起こしたの!!」

 なんと、エウテルの家のパーティーだったのか。それにしても三男か、、さっきこの女性はエウテルは次男だって言ってたよな、、、
 (次男...か..)

 


 「ありがとうございました。ようやく思い出してきました。このご恩は一生忘れません。」

 とりあえず、状況も確認できたし、ひとまず安全なところに行こう。

 「重いわね、、まあ、思い出したのならなによりよ!
 私は...私の顔を見ただけで怯えてるのだから、身分まで言ってしまったら、また気絶するかもしれないし、隠しておいてあげるわ。では、ごきげんよう。」

 そう言って見た目共に活発な女性はこの場を離れていった。


 (よし、自分も動くか)

 避難場所を探しに歩き始める。
そういえば、自分が転生したことに対して、あまり驚いてないな..
 前の世界にあまり思い入れがないのか、そこまで悲しくもない。逆に、愚痴の捌け口から解放されてスッキリしている。

 (それにしても、また次男か)

 次男となると、やっぱり両親にはあまり関心が向けられていないのかな..
いや、ここは貴族社会っぽいし、何か前世と違うところがあるかもしれないと思ったけど、持つ希望は僕の中には持ち合わせていなかった。
  
 (もう、期待しないほうがいい。)

 そう結論づけて、また避難場所を探し始めたそのとき、

 
 「あ!あのっ!」
 
 「キタラさんっ!」

 誰かに呼び止められた。

 
 振り向くと、そこには絶世の美少年とも言える、至極色の髪と瞳をもつ12歳くらいの少年がいた。

 (あれ、でも目線が同じだ)
 ということは、僕も12歳くらいなのか。
なんて呑気に考えていたが、彼と目が合った瞬間急に頭痛が襲った。

 「うあぁぁ」
 いたい、あつい。なんだこれは、何かが頭に流れてくる。ぽっかり空いていた穴に、忘れていた記憶が次々と入ってくる。

 「!!」
 「大丈夫ですか?!」



 そうだ。ここは、



僕が学校で読んでいた小説の世界だ。








 
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