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第1章
1-6 返品可能?
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パチパチと、目を瞬く。
思考が追いつかない。
目の前には金髪碧眼の大きな人形。
その見覚えがない人形に、焦ってバッグを引き寄せ財布を手に取り中身を机の上にひっくり返す。
出て来たのは見覚えのない領収書が一枚に、青色のカードが一枚。
──また、やってしまった。
たまに。……ごくたまに、酔っぱらってしまった時に、こうやって高い買い物をしてしまう事がある。
だから普段はあまり飲みすぎないように気をつけているけど、昨日は嫌なこと続きだった。目の前に並んだごちそうに目がくらみ、ちょっとだけワクワクとしていた事も否めない。
分かっていてもやってしまうから、こういう時はなるべく仕方がないと思うようにもしている。ただ、困るのがその時の記憶が少しだけ曖昧になってしまうということで……
それに、やっぱりどれだけ仕方がないと思うようにしていても、普段意識的に節約している分、やってしまった時の罪悪感は半端ない。若干ショックを受けつつも、返品できるのであればさっさと返品してしまいたいと考えて、机の上の領収書を手に取った。
果たしてこの人形は返品できるのかどうかを考えながら、領収書に書かれているお店の名前をスマホで検索した。だけどその店名は検索をかけてみても全く出てこない。電話番号や住所を確認する為に、もう一度領収書を見た。手書きの領収書には、店名、金額のみが記載されている。その一番下、小さく書かれている文字に目が留まる。
※当店では、お客様の目の前で検品をおこなっております。いかなることがございましても、返品、交換には応じられません。
それを目にした瞬間、早く何とかしないとと焦っていた気持ちがガクンと落ちる。電話するまでもなく、答えが突きつけられたことにはぁーと大きなため息が出た。
今日が仕事が休みの土曜日で良かったかもしれない。そんな事を思いながら、やってしまったことに絶望する。
──ついでに言うと、なんか頭が痛い。
そういえば、朝起きてからの一連の出来事に取り乱して、頭が痛い事をすっかり忘れていた。ひとまずは頭痛止めを飲もうと思い、その場から立ち上がると朝食を準備する。現実逃避をするように机の上にあるタブレットの電源をつけ、お気に入りの動画を再生した。
だけど、その動画の内容なんて当然頭には入ってこない。
悲しい気持ちを誤魔化すように流れる動画をぼんやりと見ながら過ごしていると、タブレットの隣に置いていたスマホが震えた。
画面にはバイクのアイコンと″優斗”の名前。慌ててアプリを開いた。
《会いたい。今日会える?》
こういう時に限って、そんな連絡が来る。
ドタキャンされた事を許せたわけじゃない。だけど、"会いたい”の文字と、昨日会えなかった事も手伝って、昨日の事などどうでも良くなる。
彼に会いたい。と言う気持ちが強くなる。
《おはよう! 会えるよ》
考える間もなく返信して、そうと決まればと気持ちを切り替えると準備を整える。
クローゼットから今持っている中で一番のお気に入りの服を引っ張り出して、昨日よりも気合を入れてメイクする。その間にスマホに入ってきた内容で、時間と場所を確認して、敷きっぱなしの布団も、問題の人形もそのまま放置してマンションを出た。
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パチパチと、目を瞬く。
思考が追いつかない。
目の前には金髪碧眼の大きな人形。
その見覚えがない人形に、焦ってバッグを引き寄せ財布を手に取り中身を机の上にひっくり返す。
出て来たのは見覚えのない領収書が一枚に、青色のカードが一枚。
──また、やってしまった。
たまに。……ごくたまに、酔っぱらってしまった時に、こうやって高い買い物をしてしまう事がある。
だから普段はあまり飲みすぎないように気をつけているけど、昨日は嫌なこと続きだった。目の前に並んだごちそうに目がくらみ、ちょっとだけワクワクとしていた事も否めない。
分かっていてもやってしまうから、こういう時はなるべく仕方がないと思うようにもしている。ただ、困るのがその時の記憶が少しだけ曖昧になってしまうということで……
それに、やっぱりどれだけ仕方がないと思うようにしていても、普段意識的に節約している分、やってしまった時の罪悪感は半端ない。若干ショックを受けつつも、返品できるのであればさっさと返品してしまいたいと考えて、机の上の領収書を手に取った。
果たしてこの人形は返品できるのかどうかを考えながら、領収書に書かれているお店の名前をスマホで検索した。だけどその店名は検索をかけてみても全く出てこない。電話番号や住所を確認する為に、もう一度領収書を見た。手書きの領収書には、店名、金額のみが記載されている。その一番下、小さく書かれている文字に目が留まる。
※当店では、お客様の目の前で検品をおこなっております。いかなることがございましても、返品、交換には応じられません。
それを目にした瞬間、早く何とかしないとと焦っていた気持ちがガクンと落ちる。電話するまでもなく、答えが突きつけられたことにはぁーと大きなため息が出た。
今日が仕事が休みの土曜日で良かったかもしれない。そんな事を思いながら、やってしまったことに絶望する。
──ついでに言うと、なんか頭が痛い。
そういえば、朝起きてからの一連の出来事に取り乱して、頭が痛い事をすっかり忘れていた。ひとまずは頭痛止めを飲もうと思い、その場から立ち上がると朝食を準備する。現実逃避をするように机の上にあるタブレットの電源をつけ、お気に入りの動画を再生した。
だけど、その動画の内容なんて当然頭には入ってこない。
悲しい気持ちを誤魔化すように流れる動画をぼんやりと見ながら過ごしていると、タブレットの隣に置いていたスマホが震えた。
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彼に会いたい。と言う気持ちが強くなる。
《おはよう! 会えるよ》
考える間もなく返信して、そうと決まればと気持ちを切り替えると準備を整える。
クローゼットから今持っている中で一番のお気に入りの服を引っ張り出して、昨日よりも気合を入れてメイクする。その間にスマホに入ってきた内容で、時間と場所を確認して、敷きっぱなしの布団も、問題の人形もそのまま放置してマンションを出た。
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