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第一章
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「あのー」
琉璃は遠慮がちにそう言うと、ドアの外へと更に一歩踏み出した。
その時、後ろからニャーと鳴き声がした。振り向くとさっきまで琉璃が座っていたベッドの上に黒い猫がちょこんと座っている。
(ねこ?……何処からはいったんだろ?)
少し不思議に思ったが、それよりも猫への興味の方が勝ってしまい、その疑問はすぐに琉璃の頭から消えてしまった。
驚かさないようにそっと黒猫へと近づく。すると猫の方も興味深そうに小首をかしげて琉璃の方に近づいてきた。しかし、こちらから触ろうと手を伸ばすと、さらりと避けられてしまい、触れさせてはもらえない。
(あー、残念)
琉璃がそんなことを思っている間に、黒猫はベッドから降りてドアの方へと近づいた。ドアはさっき琉璃が空けたので少し開いている。しかし黒猫はすぐには出て行かずに、ドアの前で一旦立ち止まると、まるで琉璃に「ついてきて」とでも言ってるかのように振り返った。
その仕草がとてもかわいい。あまりの可愛さにじっっと見つめていると、黒猫はそんな琉璃に少し呆れたようにドアの隙間をすり抜けて部屋を出て行く。
(もしかして、なんか今少し呆れられた?……いや、そんなことないよね)
などと心の中で思いつつ、気になる黒猫の黒くて小さな背中を追いかけた。
黒猫は、琉璃と付かず離れずの距離を取り、まるでこちらを先導するように前を歩いた。
少し進むたびに周りの装飾品や調度品などの煌びやかさにいちいち戸惑ったが、琉璃が何かに気を取られて止まれば、猫も立ち止まり、追いつこうと急いで走れば猫もまた走り出すので、琉璃が猫を見失う心配はなかった。
そうしてたどり着いた広い空間。そこには階下へと続く大きな階段があった。どうやら屋敷は二階建てのようだ。上を見上げると豪華なシャンデリア。それから、どこかの美術館なのかと思うくらいの大きさの天井が広がっている。
気づけば琉璃の口はポカンと開いていた。そして戸惑いと感嘆混じりの息を吐きつつ、広い天井から下の階へと徐々にその視線をおろしていった。
そこもやはり、どこかのイベント会場のホールかと思う程のエントランスが広がり、その先に両開きの大きなドアがあった。
乳白色で埋め尽くされた床を、1人の少年らしき人物が歩いているのが見えた瞬間、琉璃は自然と駆け出していた。
「あ、あの! ちょっと!」
そう声を出しながら、焦って長い階段を駆け降りる。
琉璃は遠慮がちにそう言うと、ドアの外へと更に一歩踏み出した。
その時、後ろからニャーと鳴き声がした。振り向くとさっきまで琉璃が座っていたベッドの上に黒い猫がちょこんと座っている。
(ねこ?……何処からはいったんだろ?)
少し不思議に思ったが、それよりも猫への興味の方が勝ってしまい、その疑問はすぐに琉璃の頭から消えてしまった。
驚かさないようにそっと黒猫へと近づく。すると猫の方も興味深そうに小首をかしげて琉璃の方に近づいてきた。しかし、こちらから触ろうと手を伸ばすと、さらりと避けられてしまい、触れさせてはもらえない。
(あー、残念)
琉璃がそんなことを思っている間に、黒猫はベッドから降りてドアの方へと近づいた。ドアはさっき琉璃が空けたので少し開いている。しかし黒猫はすぐには出て行かずに、ドアの前で一旦立ち止まると、まるで琉璃に「ついてきて」とでも言ってるかのように振り返った。
その仕草がとてもかわいい。あまりの可愛さにじっっと見つめていると、黒猫はそんな琉璃に少し呆れたようにドアの隙間をすり抜けて部屋を出て行く。
(もしかして、なんか今少し呆れられた?……いや、そんなことないよね)
などと心の中で思いつつ、気になる黒猫の黒くて小さな背中を追いかけた。
黒猫は、琉璃と付かず離れずの距離を取り、まるでこちらを先導するように前を歩いた。
少し進むたびに周りの装飾品や調度品などの煌びやかさにいちいち戸惑ったが、琉璃が何かに気を取られて止まれば、猫も立ち止まり、追いつこうと急いで走れば猫もまた走り出すので、琉璃が猫を見失う心配はなかった。
そうしてたどり着いた広い空間。そこには階下へと続く大きな階段があった。どうやら屋敷は二階建てのようだ。上を見上げると豪華なシャンデリア。それから、どこかの美術館なのかと思うくらいの大きさの天井が広がっている。
気づけば琉璃の口はポカンと開いていた。そして戸惑いと感嘆混じりの息を吐きつつ、広い天井から下の階へと徐々にその視線をおろしていった。
そこもやはり、どこかのイベント会場のホールかと思う程のエントランスが広がり、その先に両開きの大きなドアがあった。
乳白色で埋め尽くされた床を、1人の少年らしき人物が歩いているのが見えた瞬間、琉璃は自然と駆け出していた。
「あ、あの! ちょっと!」
そう声を出しながら、焦って長い階段を駆け降りる。
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