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第一章
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しおりを挟む琉璃は普段から、機能性を重視して服を選んでいる。着心地が良くて、ついでに周りから極端に浮かなければそれで良い。
つまり、目の前の過剰なほど装飾的なこのドレスは明らかに琉璃の好みではなかった。
しかし、他のドレスも手元のドレスと似たり寄ったりで機能性とは程遠いデザイン。しかたなく、鏡の前で自分に合わせてみる。
「……」
日本人特有の、彫りが浅くすっきりとした顔立ちの琉璃には、致命的に似合わない。
鏡の向こう側で、首を傾げながらこちらを見つめている彼女の表情は、明らかに引きつって見えた。
そうこうしてると、ふと、なにかが聞こえた気がして、耳をすませる。
音の元との距離が遠いのか、微かに拾う程度の音だったけれど、さっきまでと違ってなんだか外がざわついているようだ。
(なんだろう?)
と、気になった琉璃は、部屋の扉を少しだけ開けて見た。予想通り、ザワザワした音はさっきより少しだけ大きくなった。
(すこし部屋から出てみようか?)
今まで抑えていた好奇心が急に湧き上がる。
一瞬、片手に持ったままのドレスに着替えた方が良いのかと考えたりもしたが、そもそも着方が分からない。それに比べて、琉璃が今着ている白いワンピースのような服は少し少女趣味的なフワフワ感はあるものの、手元のドレスより明らかに自分に似合っていて動きやすい。そう考えて、静かにドレスをクローゼットに戻した。
(さっきの女の子に待っててって言われたように感じたけど。ちょっとだけなら動いても大丈夫だよね。うん、だいじょーぶ、だいじょーぶ。)
と心の中で言い訳しながら、今度はさっきよりも大きく開いた扉から、こっそりと顔だけを出して、左右を見渡す。
一番先に視界に映ったのは、日の光が差し込でいる窓の大きさと数。次に目に入ったのは赤い絨毯の敷かれた廊下だった。
「うっわ、広っ!」
思わず声が出る。
(なに、この廊下すごい。学校の廊下くらいあるんじゃない? ってか、なにこれ? 絵画とかも飾ってあるんですけど、……お城? お城なの?)
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