キミはダレ？【少し奇妙な話/ショートショート集】

夏祭り2

　

　──祭りの間、境内への侵入を禁ず

　神社の入り口にはそう書かれた立て札が立ち、両脇に聳そびえ立つ木に括くくり付けられたロープによって内と外は仕切られていた。

それを眺めながら、敦あつしは言った。

「なぁ、去年の祭りの日に女の子が行方不明になっただろ？あれって実はここに入ったんじゃないかって話を聞いたんだよな」

「えー、敦そんな話信じてるんだー。そんなわけないじゃん、かっわいいー」

ワタシの言葉に敦は少しムッとしたような表情を浮かべた。

でもそういうの素直に信じちゃう敦だから好きなんだよ、と言葉を続けるとなんとか機嫌を直してくれた。

そして、

「今日の夜さぁ、ここに来て動画回したら面白そうじゃない？」

悪戯っ子のように楽しそうに敦は言った。

「もう、仕方ないなー。どうせ次にアップする動画のネタさがしてたんでしょ？」

ワタシの言葉に少し照れ笑いを浮かべて、お願いというようなしぐさをしてみせる敦に、

「わかったわよ。付き合うわ」

そう答えた。

♦︎♢♦︎

逢魔おうまが刻とき。

それは闇の中から静かに現れた。

「おい、狐火。新しい贄にえが2人も入ったんだ。そろそろ迷子は返してやれ」

その言葉に、フルフルと首を振る小さな影。

「迷い込んだものと、飛び込んだものは違う。あまりに勝手が過ぎると消えることになるぞ」

小さい影は一瞬ビクリとした後、震え出す。

「わかればいい」


♢♢♢



それから数日後、

あるニュースが流れた。

─── 〇〇市で、昨年から行方不明になっていた10歳女児を山中で発見、無事保護されました。なお───