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赤の誘惑2【1話完結】

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 ワタシの人生に良いことなんて起こらない。

そう思っていた。

でも、それはある日突然ガラリと変化する。

これまでの薄暗い灰色の世界は、彼に出会ってから極彩色の色を帯びていく。

こんなに幸せで良いのかしら?みんなにも分けてあげたいくらい

そんな気持ちになったのは初めてだけれど、今のこの気持ちは確かだった。

その封筒は朝起きたら、そっとテーブルの上に存在していた。

早朝から仕事のため出かけた夫。

彼からのサプライズか何かかしら?

結婚記念日も近い。あと数日で一周年だ。

記念日にどこかステキなホテルに泊まるとか、コンサートのチケットが入ってたりして。

そんなことを考えて、思わず顔が綻ぶ。

メモではなく、真っ白な封筒に入ってるところもまた何か特別さを感じる。

大事な物を開けるように丁寧に封を開ける。

『貴方を永遠に健やかな世界へと導きます』

そこには硬質でデジタルな文字で一文のみ。

そして真っ赤な錠剤がひとつ。

何だろうこれ?健やかな世界?

あ、分かった。昨日私がちょっと風邪気味って言ってたから、きっとあの人が用意してくれたのかな?そういうさり気ない優しさが大好きなのだ。

想いが溢れる。

ワタシはなんて素敵な夫と結婚したんだろう。

そう思って迷いなく薬を口に運んだ。

薬は眠くなる成分を含んでいたのか、そのあとすぐに眠くなった。







スマホの着信音で目が覚めた。

気づけば窓の外は真っ暗で、それだけよく眠っていたんだと思う。

スマホの時計を見る。

「え?22時??」

よく眠りすぎた。

慌てて起き上がって、スマホを手にとる。

『杉山さんの奥さんの携帯ですか?』

「はい?…あの、どちらさま?というか、これ主人の番号ですよね?」

『杉山さんが突然、倒れられまして‥‥』

その電話で、

──ワタシの世界から全ての色が消えた。

***

黒い衣装に身を包み、ワタシは人形のような瞳で、煙突から立ち上る煙を見上げた。

あれから何を食べても味はしない。ドアの前まで母に身体を支えられながら家へと戻った。

ふらつきながらリビングのテーブルに寄りかかるようにしてなんとか歩く。そうしないと立ってさえいられない。

その時、何かが手に触れた。あの日の白い封筒。床に落ち、封筒の裏が目に映る。

────様へ

夫の名前。

それを見た瞬間、彼を思い出し涙で前が見えなくなった。





◯月×日某インターネット掲示板にて

「赤い薬の都市伝説って知ってる?」

「なんか聞いたことはあるー。突然薬が来るらしいねー」

「実はね、しちゃいけない禁忌があるんだって」

「え?そうなの?」

「宛名の本人以外が飲んじゃいけないんだって‥‥もしも飲んじゃうと」



──呪われちゃうんだってさ‥‥

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