キミはダレ？【少し奇妙な話/ショートショート集】

運命なアナタ【1話完結】

夜道を歩いていると雨が降ってきた。

傘を忘れた。同じような人が多いのか皆突然の雨に右往左往している。

雷も鳴り始めた。本格的にやばい。

コンビニで傘を買わないとこのままじゃ家に辿り着くまでにびしょ濡れだ。そういえば最近この辺りにコンビニが出来ていた気がする。

うろ覚えの記憶を辿る。この脇道から行けば近道かも。

そう思って脇道を入った。

そこは街灯も少なくとても暗かった。緊急事態で仕方ないとはいえ、1人で歩いていると徐々に不安が増してくる。

コツコツコツコツ

後ろから音がした。

あっ、同じような人が居たんだ。少し安心して味方を見つけたような気持ちで振り返る。

音が止まる。

暗がりでしかも雨、相手の姿は見えない。

音が止まった事で逆に不安になる。

もしかして変質者とか？それなら急がないと

焦る気持ちで早歩きであるく。

コツコツコツコツ

そのたびに後ろの足音は大きくなっていく。

その時目の前に、ある人物が現れた。

「雨だったから心配になってきてみたら、やっぱりだね」

ニコッと爽やかに笑う彼。最近一緒に住み始めた彼がそこに立っていた。

安心して身体の力が一気に抜ける。

彼の傘に一緒に入って、2人で楽しく会話しながら帰った。

後ろの足音などもうどうでも良くなっていた。

「でも、よくこの場所がわかったね。すごい運命みたい‥‥」

「うん、君のことならなんでも知ってるよ」

そう言った彼の笑顔は今まで見た誰よりも輝いていた。