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プロローグ
しおりを挟むここは魔物と人間が対立している世界.....
人間達は魔物に襲われる危険と隣り合わせで過ごしていた。
誰もが助けを求めていた時、ある一人の人間が立ち上がった。
後に《勇者》と呼ばれるその者は
魔物の頂点である《魔王》を倒し、
人間界は平穏を取り戻した。
「....."勇者"......か。」
牧師のノア=ライズマンは、街外れの草原に横になりながら、来る前に図書館で借りた
"勇者について"の本を読んでいた。
「もう少しインパクトがあった方が.....」
ノアは自前の白髪を掻きながら、勝手に文章を書き変えていく。
街外れのこの草原はノアにとって"助手"からの最高の隠れ場所なのだ。
「牧師様!見つけましたよ!」
そばで女性の高い声が聞こえる。
ノアは大きく背伸びをすると、ゆっくりと
起き上がった。
「....ふぅ。今日は早かったなオリヴィア。
ベストタイムを更新したんじゃないか?」
ノアはそばに立つ牧師見習い兼助手、
オリヴィア=スカーレットに話しかける。
オリヴィアは乱れた赤髪を整えながら、
ノアに厳しい目を向ける。
「脱走するのもいい加減にしてください!
探しに来るのも大変なんですからね!」
オリヴィアは草原中を探し回ったようで、
足元はすでに泥だらけになっていた。
「悪かった悪かった。帰りにカツテラ買ってやるから許せ。」
カツテラはこの地方の名産品で、フワフワの生地にカラメルを塗った甘いお菓子だ。
オリヴィアの大好物でもある。
「カ、カツテラ...!.....ま、まぁいいです!
次脱走したら容赦しませんからね!」
言葉とは裏腹に、オリヴィアの頬は緩んで
いる。
「で、仕事は何だったっけ?」
ノアは街に向かって歩きながら質問した。
「牧師様に祈願して欲しいという旅人の方が来ていましたよ!えーと名前は.....」
オリヴィアはメモを取り出した。
「アメリダ=スパンコールさんです!」
オリヴィアはメモを読み上げる。
「アメリダさんには悪いが、今日は俺の体の調子が良くない。教会は早々に閉めよう。」
ノアは面倒臭そうに欠伸をした。
「またですかぁ?流石に今日くらいはしっかり働いてくれないと怒りますよ!」
オリヴィアはノアに厳しく当たる。
ノアは面倒臭がりで、よく教会を閉めているからだ。
「いや、今日は本当に調子悪いから.....」
ノアはいかにもダルそうに歩く。
「しっかり働かないとお金がなくなっちゃいますよ?牧師だって生きていくにはお金がかかるんですから。」
オリヴィアは頬を膨らませる。
「......はぁ、今日は本当に厄日だ。」
ノアは溜息を吐きながら二人の暮らす街、
"ラムリア"の門をくぐっていった。
これが、ノア=ライズマン(職業:牧師)と
オリヴィア=スカーレット(職業:牧師)の
日常だ。
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