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第十一話
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あらすじ
能力の説明回だったね!文字多すぎ!
何だかんだでようやく戦闘!怖スギ!
あとお兄さん足速スギィ!!
階段を下りて一階に着いた時、僕は既に虫の息だった。
だって段差の大きい階段を六階分。運動不足の僕からすれば拷問に等しいんだよなぁ。
一階に着くと、既に彼は兵士たちに混ざって巨人と相対していた。
彼は持っている斧を巨人に叩きこむ。すると当たった箇所を中心に巨人の肉が拉げた。
どうやら彼の斧は人間ではありえないほどのとんでもない威力を出しているらしい。
「気張れぃ!!!ここを凌がねば、我々は退路を失うのだ!!!」
彼は兵士たちに向かって叫んだ。兵士の前では英雄の威厳を醸し出している。
兵士たちは英雄の勇ましい声に鼓舞され、負けじと前に進んでいく。
「凄い....」
僕は思わず声を漏らした。そこには、中世の神話のような、命を懸けた戦士たちの姿があった。
『何をしておる!お主も早う彼に加勢するのじゃ!』
煉が声を掛け、僕の体を鼓舞する。
だが僕はあの兵士たちとは違う。巨人の姿を見た恐怖で足は止まり、声は蚊の鳴き声のようにしか
出せない。流れる血は死への不安を駆り立てる。
『...ええい、小童めが!』
煉はそう言うと僕の右手を操り、右手にギュッと力を込めさせた。
「な、何をするんだ!?」
僕がハッと我に返った瞬間、僕の体がふっ、と軽くなる。
巨人に対する恐怖は消え、自分が死ぬ不安は消え、そして兵士たちの勇猛さへの感動も消え失せる。
「なんだ...これ...」
体の震えは止まり、階段を下りてきた時の疲労も感じなくなった。
ふと前を見る。兵士たちは奮戦しながらも、数人の兵士は巨人に殺され、血飛沫を上げながら
倒れていく。だが、僕の心は動かない。何も恐怖を感じないのだ。
「俺の体、どうなってるんだ...?」
『ふむ...この麻酔とやら、やはりお主の恐怖心やら何やらを麻痺させられるようじゃな。しかし、
この感覚は...』
どうやら煉は先程の僕の能力、『麻酔』を僕自身の体に使ったらしい。
つまり僕は今、麻酔効果を得ていることになるのだろうが...
「こ、これ....気持ち悪い....」
今まで感じたことのない違和感、体が言うことを聞かない程の倦怠感、自分が自分でないような感覚が
僕を襲う。
皮膚の感覚や血の匂いは感じるのに、それに恐怖を感じない。まるで強制的にサイコパスの思考に
させられたみたいだ。
その違和感を抑えきれず、僕はその場でうずくまる。
『お、おい!お主!敵が来ておる!急いで逃げるんじゃ!!』
煉はそう叫ぶ。
目を上げてみるとほんの十メートル先ほどの位置から3mはあろう巨人がこちらに向かって歩いて
来ていた。どうやら兵士たちの乱戦から抜けてきたはぐれ巨人のようだ。
だが、僕には足を動かすどころか指の一本でさえ動かせない。
僕と感覚を共有している煉自身も、そのことは分かっているだろう。
「う、動けない...」
『たわけ!!無理をしてでも動け!ここで死ぬわけにはいかんじゃろ!!』
そもそも原因はあなたなんですがね...
巨人が目と鼻の先まで来る。
それでも僕の体は動かない。
巨人が持っている石柱を振りかぶる。
先程僕がここに来た瞬間に見た光景を思い出した。
あの時振りかぶった巨人は砲撃を喰らってその獲物を振り下ろすことは無かったが、もしも
振り下ろされていたとすれば、石の城壁など一瞬で粉々に砕け散っていただろう。
そんな攻撃が、僕に対して行われようとしている。結果はお察しだろう。
(動け!!動け!!僕の体!!!)
すると、脳内に器械音声が響く。
【一定の経験値を確認。レベルアップします。】
その途端、僕の体は跳躍した。
能力の説明回だったね!文字多すぎ!
何だかんだでようやく戦闘!怖スギ!
あとお兄さん足速スギィ!!
階段を下りて一階に着いた時、僕は既に虫の息だった。
だって段差の大きい階段を六階分。運動不足の僕からすれば拷問に等しいんだよなぁ。
一階に着くと、既に彼は兵士たちに混ざって巨人と相対していた。
彼は持っている斧を巨人に叩きこむ。すると当たった箇所を中心に巨人の肉が拉げた。
どうやら彼の斧は人間ではありえないほどのとんでもない威力を出しているらしい。
「気張れぃ!!!ここを凌がねば、我々は退路を失うのだ!!!」
彼は兵士たちに向かって叫んだ。兵士の前では英雄の威厳を醸し出している。
兵士たちは英雄の勇ましい声に鼓舞され、負けじと前に進んでいく。
「凄い....」
僕は思わず声を漏らした。そこには、中世の神話のような、命を懸けた戦士たちの姿があった。
『何をしておる!お主も早う彼に加勢するのじゃ!』
煉が声を掛け、僕の体を鼓舞する。
だが僕はあの兵士たちとは違う。巨人の姿を見た恐怖で足は止まり、声は蚊の鳴き声のようにしか
出せない。流れる血は死への不安を駆り立てる。
『...ええい、小童めが!』
煉はそう言うと僕の右手を操り、右手にギュッと力を込めさせた。
「な、何をするんだ!?」
僕がハッと我に返った瞬間、僕の体がふっ、と軽くなる。
巨人に対する恐怖は消え、自分が死ぬ不安は消え、そして兵士たちの勇猛さへの感動も消え失せる。
「なんだ...これ...」
体の震えは止まり、階段を下りてきた時の疲労も感じなくなった。
ふと前を見る。兵士たちは奮戦しながらも、数人の兵士は巨人に殺され、血飛沫を上げながら
倒れていく。だが、僕の心は動かない。何も恐怖を感じないのだ。
「俺の体、どうなってるんだ...?」
『ふむ...この麻酔とやら、やはりお主の恐怖心やら何やらを麻痺させられるようじゃな。しかし、
この感覚は...』
どうやら煉は先程の僕の能力、『麻酔』を僕自身の体に使ったらしい。
つまり僕は今、麻酔効果を得ていることになるのだろうが...
「こ、これ....気持ち悪い....」
今まで感じたことのない違和感、体が言うことを聞かない程の倦怠感、自分が自分でないような感覚が
僕を襲う。
皮膚の感覚や血の匂いは感じるのに、それに恐怖を感じない。まるで強制的にサイコパスの思考に
させられたみたいだ。
その違和感を抑えきれず、僕はその場でうずくまる。
『お、おい!お主!敵が来ておる!急いで逃げるんじゃ!!』
煉はそう叫ぶ。
目を上げてみるとほんの十メートル先ほどの位置から3mはあろう巨人がこちらに向かって歩いて
来ていた。どうやら兵士たちの乱戦から抜けてきたはぐれ巨人のようだ。
だが、僕には足を動かすどころか指の一本でさえ動かせない。
僕と感覚を共有している煉自身も、そのことは分かっているだろう。
「う、動けない...」
『たわけ!!無理をしてでも動け!ここで死ぬわけにはいかんじゃろ!!』
そもそも原因はあなたなんですがね...
巨人が目と鼻の先まで来る。
それでも僕の体は動かない。
巨人が持っている石柱を振りかぶる。
先程僕がここに来た瞬間に見た光景を思い出した。
あの時振りかぶった巨人は砲撃を喰らってその獲物を振り下ろすことは無かったが、もしも
振り下ろされていたとすれば、石の城壁など一瞬で粉々に砕け散っていただろう。
そんな攻撃が、僕に対して行われようとしている。結果はお察しだろう。
(動け!!動け!!僕の体!!!)
すると、脳内に器械音声が響く。
【一定の経験値を確認。レベルアップします。】
その途端、僕の体は跳躍した。
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