月の目覚めの時

永田 詩織

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1. 見えない先-2

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 ずっと単一民族として生活してきたロベルトには、目が眩む程の量であった。
「どうして、そんなに…侵略って、要は他国の領土を脅かすって事だよな。なんで、そこまでして…」
「さあ?さすがに、そこまでは分からないわよ。…で、話を戻すけど、わたし達がこれから向かおうとしているのは、そのロウゼン帝国のすぐ側にある、ゼファという港町なのよ」
  ソーシャとロウゼンが接する最も南側に、リイナは小さくしるしをつける。
 それは、ちょうど大陸の最南端にも当たる場所で、その先に広がっているのは、海と呼ばれる青い湖なのだと、昔、ノルンに聞いた事をロベルトは思い出した。
「…海」
  ぽつりと呟かれたロベルトの言葉に、リイナは顔をあげる。
「そういえば、月の国には海ってあるの?あんな小さな島にあるとは思えないのだけれど…」
「ああ、ないよ。どんなところなんだろう…想像がつかない」
 すると、リイナは嬉しそうに破顔した。
「なら、きっと驚くわ!わたしも、幼い時に見たきりだけど、あの圧倒感といったら…!わたし、海がとても好きなの。絶対、貴方も気に入ると思うわ」
「そんなに凄いのか…!ああ、楽しみにしているよ!」
 ロベルトはまだ見ぬ海に思いを馳せ、期待に胸を膨らませた。
「なら、善は急げよ。早く寝て、明日に備えましょう」
「そうだな…俺、もうくたくただし…」
「もう、貴方って人は、本当に体力がないんだから」
 大きな欠伸をするロベルトに、リイナは腰に手を当てて怒ってみせた。けれど、すぐに彼女も同じように欠伸を漏らし、恥ずかしそうに笑う。
「でも、確かに疲れたわ…。もう、寝ましょうか」
「うん…」
「じゃあ、先に天幕へ入っていて。わたしが火を消しておくから」
「ああ、ありがとう…」
 言われた通り、ロベルトは大人しく天幕に向かった。横になって毛布に包まると、リイナの声が聞こえてくる。
「おやすみなさい、ロベルト」
「おやすみ、リイナ…」
 それから、すぐにロベルトの意識は遠ざかり、深い眠りへと落ちていった。
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