11 / 13
3
1. 見えない先-2
しおりを挟む
ずっと単一民族として生活してきたロベルトには、目が眩む程の量であった。
「どうして、そんなに…侵略って、要は他国の領土を脅かすって事だよな。なんで、そこまでして…」
「さあ?さすがに、そこまでは分からないわよ。…で、話を戻すけど、わたし達がこれから向かおうとしているのは、そのロウゼン帝国のすぐ側にある、ゼファという港町なのよ」
ソーシャとロウゼンが接する最も南側に、リイナは小さくしるしをつける。
それは、ちょうど大陸の最南端にも当たる場所で、その先に広がっているのは、海と呼ばれる青い湖なのだと、昔、ノルンに聞いた事をロベルトは思い出した。
「…海」
ぽつりと呟かれたロベルトの言葉に、リイナは顔をあげる。
「そういえば、月の国には海ってあるの?あんな小さな島にあるとは思えないのだけれど…」
「ああ、ないよ。どんなところなんだろう…想像がつかない」
すると、リイナは嬉しそうに破顔した。
「なら、きっと驚くわ!わたしも、幼い時に見たきりだけど、あの圧倒感といったら…!わたし、海がとても好きなの。絶対、貴方も気に入ると思うわ」
「そんなに凄いのか…!ああ、楽しみにしているよ!」
ロベルトはまだ見ぬ海に思いを馳せ、期待に胸を膨らませた。
「なら、善は急げよ。早く寝て、明日に備えましょう」
「そうだな…俺、もうくたくただし…」
「もう、貴方って人は、本当に体力がないんだから」
大きな欠伸をするロベルトに、リイナは腰に手を当てて怒ってみせた。けれど、すぐに彼女も同じように欠伸を漏らし、恥ずかしそうに笑う。
「でも、確かに疲れたわ…。もう、寝ましょうか」
「うん…」
「じゃあ、先に天幕へ入っていて。わたしが火を消しておくから」
「ああ、ありがとう…」
言われた通り、ロベルトは大人しく天幕に向かった。横になって毛布に包まると、リイナの声が聞こえてくる。
「おやすみなさい、ロベルト」
「おやすみ、リイナ…」
それから、すぐにロベルトの意識は遠ざかり、深い眠りへと落ちていった。
「どうして、そんなに…侵略って、要は他国の領土を脅かすって事だよな。なんで、そこまでして…」
「さあ?さすがに、そこまでは分からないわよ。…で、話を戻すけど、わたし達がこれから向かおうとしているのは、そのロウゼン帝国のすぐ側にある、ゼファという港町なのよ」
ソーシャとロウゼンが接する最も南側に、リイナは小さくしるしをつける。
それは、ちょうど大陸の最南端にも当たる場所で、その先に広がっているのは、海と呼ばれる青い湖なのだと、昔、ノルンに聞いた事をロベルトは思い出した。
「…海」
ぽつりと呟かれたロベルトの言葉に、リイナは顔をあげる。
「そういえば、月の国には海ってあるの?あんな小さな島にあるとは思えないのだけれど…」
「ああ、ないよ。どんなところなんだろう…想像がつかない」
すると、リイナは嬉しそうに破顔した。
「なら、きっと驚くわ!わたしも、幼い時に見たきりだけど、あの圧倒感といったら…!わたし、海がとても好きなの。絶対、貴方も気に入ると思うわ」
「そんなに凄いのか…!ああ、楽しみにしているよ!」
ロベルトはまだ見ぬ海に思いを馳せ、期待に胸を膨らませた。
「なら、善は急げよ。早く寝て、明日に備えましょう」
「そうだな…俺、もうくたくただし…」
「もう、貴方って人は、本当に体力がないんだから」
大きな欠伸をするロベルトに、リイナは腰に手を当てて怒ってみせた。けれど、すぐに彼女も同じように欠伸を漏らし、恥ずかしそうに笑う。
「でも、確かに疲れたわ…。もう、寝ましょうか」
「うん…」
「じゃあ、先に天幕へ入っていて。わたしが火を消しておくから」
「ああ、ありがとう…」
言われた通り、ロベルトは大人しく天幕に向かった。横になって毛布に包まると、リイナの声が聞こえてくる。
「おやすみなさい、ロベルト」
「おやすみ、リイナ…」
それから、すぐにロベルトの意識は遠ざかり、深い眠りへと落ちていった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。


もう一度7歳からやりなおし!王太子妃にはなりません
片桐葵
恋愛
いわゆる悪役令嬢・セシルは19歳で死亡した。
皇太子のユリウス殿下の婚約者で高慢で尊大に振る舞い、義理の妹アリシアとユリウスの恋愛に嫉妬し最終的に殺害しようとした罪で断罪され、修道院送りとなった末の死亡だった。しかし死んだ後に女神が現れ7歳からやり直せるようにしてくれた。
もう一度7歳から人生をやり直せる事になったセシル。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる