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世間知らずのチョロインが奴隷にペロリと食べられる話〜ヴィンセント編〜

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 俺の名はヴィンセント。貧しい村で、ど貧乏な家の五男として生まれた。
 一家は当時貧窮の極に達し、食う物にも事を欠く毎日であった。それなのに両親はヤることだけはしっかりヤっていたもんだから、ぽこぽこ子を産んで俺の下には更に五人の弟妹が生まれた。

 このままでは家族共々飢え死にだ。兄たちは十歳を迎えると次々と出稼ぎに家を出て行った。姉たちは両親によってどこかへ売られて行ったが、それがどこなのか俺は知らない。俺も十歳を迎えるタイミングで出稼ぎに行かされるだろう。俺はそれを悲観するどころか、待ち遠しく思っていた。

 両親は死ぬまでヤっていればいい。けれど何の罪もない弟妹が苦しむのは不憫でならず、はやく金を稼いで引き取ってやりたかった。
 けれど俺は十歳を迎える前に、街からやって来た奴隷商に売られた。兄弟の中でも際立って見目の良かった俺に目をつけた奴隷商が、金になると見込んでかなりの額を落として行ったようだった。最後に見た両親は、「これでヤりまくれる!」と言って部屋に転がり込んで行く姿だった。

 奴隷商は、ぼろ布を纏っただけの俺を馬車に乗せると、街へ向かう道中これからにつて話して聞かせた。

 「たった今から、お前は人ではなく商品だ。幸運なことにお前は人目を引く容姿をしている。だからきっとすぐに買い手はつくだろう。どこぞのお貴族様に買われて性奴隷として精々尽くすんだな、ひひひ」

 当時まだ八つだった俺は、彼の言うことがよく分からなかった。けれど着いて早々買われた俺は、貴族のジジイによってそれが何を意味するのかを知ることとなる。

 「あっ、あっ、ズンドコベロンチョ様ぁ!そこ、そこが気持ちぃの……もっと舐めてぇぇ」
 「そうか、そんなに良いか。レロレロ、何じゃと?もっと欲しいとな。くれてやるぞ、ほ~れレロレロレロ(以下省略)」

 その様子を部屋の隅から冷めた目で見ている俺がいた。見られる事で性的興奮を得る頭のイカれた老人は、若い女を組み敷いてひたすら股ぐらを舐めている。

 「いやぁ!見られてるぅ、らめぇ、見ないでぇ!」
 「良いぞ良いぞ、聖水じゃ聖水じゃ」

 そう言ってイカれジジイは女が噴射した潮をごくごくと飲み干す。すると今まで縮こまっていたジジイのジジイが、目の前でむくむくと大きくなっていくではないか。それを嬉々として受け入れる淫乱女。

 こんな日が続き、うんざりした俺は目を開けたまま寝るという特殊なスキルを習得した。このスキルによって、後に俺は数多の危険を掻い潜ることが出来たのだが、それはまた別の話になるのでここでは割愛する。そんなある日のことだった。

 「あん、あん、あん、いいのぉ!もっと奥まで来てぇ!!」
 「愛いやつめ!そ~ら、そ~ら、そ~……ぎゃっ!!」

 パコパコ腰を振っていたジジイが、突然潰れたカエルのような声をあげて事切れた。腹上死である。
 俺は泣き叫ぶ女と、それを聞きつけた執事やらが騒ぐ様子を他人事のように見つめていた。後に知ったことだが、ズンドコベロンチョという男は、王族に連なる三大貴族の一人であったらしい。人伝に聞いた話によると、変態ジジイは市民の血税で国葬されたらしく、葬儀には多くの著名人が参列したようだった。

 主人を無くした俺は、次なる主を探すため奴隷商に買い戻された。そこには、死んだ目をした多くの奴隷たちが檻に入れられて買われるのを待っていた。奴らは人としての尊厳を踏みにじられ、心身ともども奴隷としてどん底まで落とされていた。
 幸運なことに身姿が良かった俺は、商品としての価値を下げてしまわないよう、他の奴隷たちとは違って鞭打ちなどの折檻を免れることが出来た。

 「おい、出て来い。お前の買い取り手が決まったぞ」

 それほど待たずして次の主人は決まった。今度の奴はひょろっとした優男で、そいつは殴られる事で性的興奮を得るという、これまたとんでもない変態貴族だった。

 「さぁさぁ、僕の可愛い奴隷ちゃん。今日も思う存分殴っておくれ!」

 ボコッ!「ぐぉっ」
 バキッ!「へぶっ」
 
 「ああ、良い!もっとだ……ぐはっ、イク、イクよっ!うぁぁ!!」

 殴られながら発射する様子を冷めた目で見る。もう何年こんなことを繰り返しているんだろう。こいつに買われた時、俺は十二歳だった。サンドバッグにする時以外は好きにしていいという考えの人物だったので、食べるものに困ることもなく奴隷としては破格の待遇だった。

 時は経ち、俺は少年から青年へと成長していった。痩せっぽちだった身体には程よい肉と筋肉がつき、ぐんぐんと背が伸びた俺は気づけば主人を見下ろすほどに育っていた。変態優男はそれを喜び、魔力の高かった俺に魔法師を、また腕の良い剣士を呼び寄せて俺にあれこれ習得させた。
 主人を殴り飛ばしてイカせ、魔法と剣を使った戦闘技を学ぶ。とても充実した日々を送っていた。

 「さぁさぁ、今日も存分に僕を痛めつけてイかせておくれ。いつも言っていることだけど手加減は不要だよ」
 「……わかりました。それでは先日習得した必殺技を使いたいと思います」
 「うんうん、良いねぇ。聞いただけでイキそうだ!」

 ワチョウ、ワァチャチャチャチャチャ(以下省略)

 「南斗、爆裂拳!!」
 「こ、これは……ヘブッ!!」

 流れの格闘家から教えてもらった必殺技を主人の身体に叩き込んだ。すると優男は潰れたカエルのような声をあげて死んでしまった。
 あ、と思った時にはすでに遅く、メイドや執事が入り乱れその場は阿鼻叫喚となった。俺はその様子を他人事のように見つめていることしか出来なかった。

 再び主を失った俺は奴隷商に舞い戻った。そうしてまた新たな飼い主に買われる。足で踏まれることで興奮する大富豪、往復ビンタされないと中折れする領主、次もその次も、俺を買う主人はどいつもこいつも変態ばかりだった。

 こんな日々が何年も続き、俺は二十歳はたちになっていた。そして再び主を失った俺が奴隷商に戻ると、そこには既に俺を買いたいと言う客が待ち受けていた。痩せ細った狐目の男は、俺を視界に入れると更に目を細めてニヤリと笑った。

 奴隷商の話によると、奴は旅をするにあたって護衛を探しているらしかった。そこで白羽の矢が立ったのが丁度出戻って来た俺だったというわけだ。剣技にも魔法にも自信があった俺は、あらゆるモンスターを薙ぎ倒して主の期待に応えた。

 お気に召した主人は、貸し出しではなく正規の奴隷として俺を雇う事にした。彼は裏の世界では名の知れた人物らしく、運び屋として合法から違法な物まで、手に入らないものはないという肩書きを持つ男だった。

 「もし奴隷でなければ確実にSランクであっただろうに……。しかし奴隷であるが故、お前には私の手足となってもらう」

 そう明言した通り、男は俺を使ってあらゆる苦難を乗り超えていった。そうこうしているうちに五年経ち、十年が経ち、気づけば二十年の月日が流れていった。そしてある日、俺はこれ以上続けられないとあるじに伝えた。

 傭兵紛いの事を続けて二十年。若かりし頃に持っていた溢れんばかりのエネルギーは、歳を重ねることで消え失せ、搾取され続けた人生に意味を見出せなくなっていた。

 だが主人はそれを許さなかった。なので俺は食事を絶った。どんなに強靭な肉体を持った人間でも、食事をとらなければ衰弱して使い物にならなくなる。俺は主人を前に、

 「殺したければ殺せばいい。己の最期くらい自分で決める」

 と言った。怒り狂った主人は俺を散々痛めつけた後、利用価値がないと見極めるとゴミのように捨てた。捨てられた俺は数十年ぶりに奴隷商のもとに戻った。

 そしてこう思った。叶うなら、家族が欲しかった。誰かに愛されたかった。愛というものが何なのかよく分からないが、俺は誰かを愛したかったんだと今更ながらに思った。

 奴隷商に戻っても、俺は食事を拒んだ。緩やかな死は確実に肉体をむしばんでいった。これでいい。最期ぐらい俺は自分の意志で天寿を全うするのだ。俺は最奥の檻の中で緩やかな死と戦っていた。

 そんなある日、一人の天使が俺の前に現れた。暗闇に浮かぶ白い肌。何もかも見透かしたような漆黒の目に見つめられ、脳天に雷が落ちたような衝撃を受けた。

 一目惚れだった。

 この女が欲しい。胸の奥から湧き上がる熱い想いに、頭がどうにかなってしまいそうだった。

 「初めまして、由美といいます。こんな見た目のせいでいろいろ困ってます。護衛を探しているんですけど引き受けてくれますか」
 
 天使がしゃべった!!やはりこれは現実なのか!?飢餓による幻覚ではないと!?

 「奴隷と言っても期限は一年。一年もあれば私も自立の目処が立つと思うので、そのタイミングであなたを解放すると約束します」

 解放だと!?つ、つまり合法で彼女を手に入れられると!?い、いかん!そう思ったら勃ってきた!!

 「あの、聞こえてます?」
 「……いいだろう」

 奴隷として、どんな無理算段をしても彼女を手に入れる。

 これは俺の女だ。



 【完】 


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みんなの感想(1件)

tefu
2024.07.29 tefu

ヴィンセントサイドありがとうございます!何がなんでも手に入れようと言うヴィンセントの気持ちが伝わって来ました。有言実行してますね(*´w`*)

エトカ
2024.07.30 エトカ

感想ありがとうございます。楽しんでいただけたようで嬉しいです(^^)

解除

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