(R18)エロゲRPGの中に転生してしまったので仕方ないからプレイする

前花しずく

文字の大きさ
上 下
122 / 128
メイランの古い洋館

シスターの決意

しおりを挟む
「こっちがマーテルで、こっちがエンヒです」

「ど、どうも……」

 まるで嫁の実家にでも来たかのように肩をすくめて挨拶をする。マーテルと呼ばれた、ツンツン頭の女の子は、腰に手を当てて歩み出た。

「今回はスピカが世話になったみてえだな。この通りだ」

「い、いいよそういうのは……」

 姉御肌なのか言葉遣いは荒くてもたいへん律儀だ。言われてるこっちが緊張する。

「俺も一応は勇者って役割を授かった身だし、その一歩を踏み出させてくれたのがスピカってわけだからな」

「スピカちゃんがいなければヒロキ様は村を出ようとしなかったかもしれませんし。ね?」

 う、アナから笑顔の圧力が……。まあ結果として勇者の仕事をこなしてるんだから終わりよければなんとやらだ。

「うちのスピカはご迷惑をかけませんでしたかぁ?」

 もう一人のエンヒと呼ばれた涙ぼくろが目立つ彼女は、ゆったりとした動作でそう言った。マーテルとは対照的だ。

「いやそれはもう、ドジという言葉では片付けられないくらいで」

「ガーン!」

 正直に言うとスピカはショックを受けた顔をする。いや、それはさすがに誤魔化せないわすまん。

「でしょう?昔からガラス製のものを全て割っちゃうし、魔法で家を全焼させちゃうし、魔物を自ら連れ帰ってくるし、何回命の危機にあったか……」

 マーテルもそれを聞いてやれやれとため息をつく。二人とも相当苦労してきたみたいだ。

「それもこれもアカツキ様がなんとか収めてくれてたんだが……」

「アカツキ?」

「ああ、私らがメンバーに加わってたパーティの勇者だよ。町の結界が解けて以来行方知れずだけどな」

 そうか、一応設定的には主人公がスピカの暴走をなんとかしてるんだな。で、主人公がいなくなったから暴走してしまったと。

「それから二人はどうしてたんだ?」

「どうもこうも、一応は教会の周りに来た淫魔は退治してるけど勇者がいないんじゃ力が半分も出やしねえし……。正直今できることは何もないな」

「せめて本気を出せる状態になればいいんだけどねぇ」

 そうか、勇者の力はパーティメンバーの力を増幅させる。それがないとマトモに戦うことすらできないんだな。

「そしたらヒロキ様のパーティに入れて貰えばいいんじゃないかな?」

 そう提案してきたのはスピカだった。もちろん俺もそれを考えはしたが、二人からすればずっと連れ添ったアカツキとやらがいるわけで、おいそれと何処の馬の骨とも知らん男と契りを結んでくれるのやら……。

「……正直私は戦い方を忘れちまった部分がある。外に出られないから、剣の素振りすらろくにできやしない。今私が出しゃばっても足を引っ張るだけだと思うんだ」

 マーテルは思ったより冷静な意見を出した。エンヒもそれに同意するように頷く。

「魔法を試す機会もしばらく奪われてしまって……おまけにこの街に出てくる淫魔はどれも強いでしょう?スピカが逃げ出した時のことを考えたら、あまり戦う気は起きないわぁ……」

 そうか……。ここで即戦力を手に入れられたら心強いと思ったのだが。本人たちが乗り気でないなら仕方がない。

 さて、アナとスピカはいいとして残り二人をどう集めるか……そう考えあぐねている時、後ろから声を掛けてくる者があった。

「あの、私に行かせてはいただけませんか」

 声の主は、先程外で教会まで案内してくれたシスターだった。ローブの端をぎゅっと握って、瞳をじっとこちらに向けている。

「私に……って、シスターに?」

「我々、神職に携わる者には教会を、町を守る責務があります。大司教様もきっと認めてくれることでしょう」

 その意気込みやよし。しかしシスターの戦闘力やいかに……。

「私は一通りの攻撃魔法と治癒魔法を扱うことができます。威力は本職の魔導士に及びませんが、魔力量なら自信があります」

 なるほど、ずっと誰かを回復させ続ける、みたいなことができるわけか。それはそれでありがたい。魔法使い三人になるけど。

「それじゃあ、ええと……」

「フーリと申します」

「フーリ、早速契りを交わして教会の周りを探索しようか。現状どうなってるのかを早めに把握しておきたい」

「はい……ただ、夜になってからでよいでしょうか……子供たちもいることでふし……」

 フーリは急にもじもじしだす。あー、なんか感覚バグっていたが今の俺の発言はずばり「えっちしよう」になるわけだな。すまない、そういうゲームなんだ。

「じゃ、今日の夜な」

 とりあえずはこれで一人、パーティメンバーが埋まったわけだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...