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メイランの古い洋館
メイランの古教会
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「大丈夫でしたか?」
俺らのことを呼んでいたのは黒いローブに身を包んだ……いわゆるシスターだ。そして案内された場所は木造の古びた教会で、祭壇に向かって固い木の長椅子が十列ほど置いてあった。
「俺は大丈夫……だけど二人は……」
と、二人の方を振り返ると、いつの間にか二人の破れた服は元通りになっていて、ケロッとした顔でそこに立っていた。
「私たちも教会に入った瞬間から元気を取り戻しました」
戦闘で敗れた服が元に戻り体力が回復する……この現象には心当たりがある。
「もしかしてここはセーフティポイントなのか?」
本来、結界が張ってある村や街へ戻ると体力が回復し、それに伴って服も元に戻る。メイランの町の結界は今壊れてしまっているが、どうやらこの教会の中はその効果が残っているらしい。
「この教会は大司教様の力によって結界が張り直されているのです。さ、疲れた身体をお休めください」
シスターは奥へどうぞと俺たちを案内する。教会の中には子供を含め三十人ほどが集まっていて(いずれも女)、椅子の上や床には毛布などが敷いてあった。
「この町で何があったか、教えてもらえますか」
ずばり俺が切り込むと、シスターは残念そうな顔をして答え始めた。
「元々はこのメイランも普通の町だったはずなのですが、ある時急に淫魔が町の中に現れたのです。最初は一匹でしたが、その後数が増えていき……。その時にはもう結界の効力は失われていました。だからこの教会に結界を張り、町の人たちの避難所としたのです」
やはりこの人たちは家を追われてこの教会に避難しているんだな……。スピカが助けを求めに来て以来ずっとこうだと考えると、かれこれ一ヶ月はこのままというわけだ。
「そうなった理由に心当たりは?」
「いえ……大司教様も当然このようなことは初めてだと申しておりました。それにもっと酷いことに、元々たくさんいたはずの勇者様らがことごとく姿を消してしまって、淫魔を討伐する人間が誰もいなくなってしまったのです」
それは……俺がこっちの世界に来たタイミングでこのゲームのプレイヤーが消えてしまったことによるものだろう。スピカが元々いたパーティの勇者と同じだ。
「あれ?そういえばスピカ、ここに仲間がいたんじゃなかったか?」
「あ!そ、そうでした!えーと……いました!あそこです!」
スピカが指差した方には三人の女の子が集まっていた。三人ともお姉さん気質の大人っぽい人たちで、スピカを見るなりガタッと立ち上がった。
「スピカ!!無事だったのね!!」
「心配かけてごめんなさ……いっ!?」
感動の対面……という瞬間、スピカは何もないところで躓いてそのまま三人を巻き込んで転がった。未だにドジ過ぎることは変わらない。
それでも流石に慣れているのか三人は笑ってスピカの背中を叩いている。微笑ましいやり取りを聞きながら、俺とアナは空いている椅子に静かに腰掛けるのだった。
俺らのことを呼んでいたのは黒いローブに身を包んだ……いわゆるシスターだ。そして案内された場所は木造の古びた教会で、祭壇に向かって固い木の長椅子が十列ほど置いてあった。
「俺は大丈夫……だけど二人は……」
と、二人の方を振り返ると、いつの間にか二人の破れた服は元通りになっていて、ケロッとした顔でそこに立っていた。
「私たちも教会に入った瞬間から元気を取り戻しました」
戦闘で敗れた服が元に戻り体力が回復する……この現象には心当たりがある。
「もしかしてここはセーフティポイントなのか?」
本来、結界が張ってある村や街へ戻ると体力が回復し、それに伴って服も元に戻る。メイランの町の結界は今壊れてしまっているが、どうやらこの教会の中はその効果が残っているらしい。
「この教会は大司教様の力によって結界が張り直されているのです。さ、疲れた身体をお休めください」
シスターは奥へどうぞと俺たちを案内する。教会の中には子供を含め三十人ほどが集まっていて(いずれも女)、椅子の上や床には毛布などが敷いてあった。
「この町で何があったか、教えてもらえますか」
ずばり俺が切り込むと、シスターは残念そうな顔をして答え始めた。
「元々はこのメイランも普通の町だったはずなのですが、ある時急に淫魔が町の中に現れたのです。最初は一匹でしたが、その後数が増えていき……。その時にはもう結界の効力は失われていました。だからこの教会に結界を張り、町の人たちの避難所としたのです」
やはりこの人たちは家を追われてこの教会に避難しているんだな……。スピカが助けを求めに来て以来ずっとこうだと考えると、かれこれ一ヶ月はこのままというわけだ。
「そうなった理由に心当たりは?」
「いえ……大司教様も当然このようなことは初めてだと申しておりました。それにもっと酷いことに、元々たくさんいたはずの勇者様らがことごとく姿を消してしまって、淫魔を討伐する人間が誰もいなくなってしまったのです」
それは……俺がこっちの世界に来たタイミングでこのゲームのプレイヤーが消えてしまったことによるものだろう。スピカが元々いたパーティの勇者と同じだ。
「あれ?そういえばスピカ、ここに仲間がいたんじゃなかったか?」
「あ!そ、そうでした!えーと……いました!あそこです!」
スピカが指差した方には三人の女の子が集まっていた。三人ともお姉さん気質の大人っぽい人たちで、スピカを見るなりガタッと立ち上がった。
「スピカ!!無事だったのね!!」
「心配かけてごめんなさ……いっ!?」
感動の対面……という瞬間、スピカは何もないところで躓いてそのまま三人を巻き込んで転がった。未だにドジ過ぎることは変わらない。
それでも流石に慣れているのか三人は笑ってスピカの背中を叩いている。微笑ましいやり取りを聞きながら、俺とアナは空いている椅子に静かに腰掛けるのだった。
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