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平原の遺跡編
砂漠の終わり
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「出てきたわけだが……ここって……」
ポルルトの近道から出ると、そこはガルが快楽落ちした例の巨石の根本だった。こんなところに入り口が隠してあったとは……。
「ここから真っ直ぐ東に進むとメイランの町だって言ってましたね」
そう言われても百八十度地平線まで砂漠なんだが……半日歩けば着くとの話だし……。とりあえずは東に進めばいいのかな。
「俺らはそのままメイランの街を目指すけど、バプラスたちはどうするんだ?」
バプラスは聖水を得るためなら、と遺跡についてきたわけだが、その聖水は得てしまった。メイランの町の場所も分かっているなら馬車に乗せてもらう必要もない。
「私は入り口に置きっぱなしの馬車を取りに行って、そのまま北上しようと思っているよ。そもそも私は砂漠を縦断していたところなんでね」
バプラスの言うそれは、つまりここで離別するということだ。半分分かってはいたが、バプラスのねじ曲がった性格にも慣れてきたところだったから少し寂しくもある。
「ガルさんは?」
「俺のナワバリはこの砂漠だからな! お前たちが砂漠の向こうに行くっていうんなら見送るぜ!」
「ガルさんもここに残るんですね」
ガルの爪攻撃も心強くはあったが、ガルの家はここなのだから仕方ない。ここからは三人旅になりそうだ。
「それじゃ、二人とも達者でな」
「おう! ユウシャの仕事頑張れよ!」
ガルは八重歯を剥き出しにして大きく手を振る。バプラスは何も言いはしなかったが、後ろを向いたまま片手を軽く上げてそのまま北へと歩いていった。
もう日が暮れそうな時間で、西に傾いた太陽に背を向けて三人で歩き続けた。なんとなく水平線に砂漠の終わりが見えてきた気がする。
「私の仲間たち……助けられますかね」
「スピカの仲間? ……そうか、そんな話だったか」
砂漠を通る過程ですっかりスピカが仲間になった流れを忘れていたが、そういえばメイランでは魔物が街中に現れて大変なんだっけか。スピカは一人逃げてきたけど他の仲間は無事かどうか……というか町の人たちは無事なのだろうか。
「まあ、大丈夫だと思って行くしかないな」
「はい……」
スピカはそう言われてもしょんぼりしている。逃げてきた引け目もあるだろう。というかこれだけの距離をよくがむしゃらに逃げたな。
「二人とも、そろそろこの辺りで野宿にしません? あたりも暗くなってきましたし……」
太陽と反対方向に歩いているので、日が沈むといち早く水平線が闇に消えた。明かりのない砂漠で変に移動し続けるのは危険だ。
「そうするか。わざわざ持ってきたキャンプセットの出番だ」
バプラスに色々世話してもらって使う機会があまりなかったが、一応簡易テントの類は揃えてある。軽く夕飯を作って明日に備えて早く寝よう。
ポルルトの近道から出ると、そこはガルが快楽落ちした例の巨石の根本だった。こんなところに入り口が隠してあったとは……。
「ここから真っ直ぐ東に進むとメイランの町だって言ってましたね」
そう言われても百八十度地平線まで砂漠なんだが……半日歩けば着くとの話だし……。とりあえずは東に進めばいいのかな。
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「私は入り口に置きっぱなしの馬車を取りに行って、そのまま北上しようと思っているよ。そもそも私は砂漠を縦断していたところなんでね」
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「それじゃ、二人とも達者でな」
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「私の仲間たち……助けられますかね」
「スピカの仲間? ……そうか、そんな話だったか」
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「まあ、大丈夫だと思って行くしかないな」
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「そうするか。わざわざ持ってきたキャンプセットの出番だ」
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