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平原の遺跡編
肉体派淫魔
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「うげー、全身がいてーぞ……」
翌朝、馬車の中でガルは主に腰を押さえて悶えていた。まあそんな小さな身体で激しく致したらそりゃあ筋肉やら何やら諸々痛くなるだろうな。
「昨夜はお楽しみだったんですね」
「なっ! そんなんじゃねえし!」
無理矢理激しくしたことに関しては直接怒ってくることはないが、とはいえ俺に向けてくる目つきは明らかに仲間に対するそれではないんだよなぁ。アナの言うことは聞くから別にいいんだけども。
「ヒヒィン」ガタッ
「おおっ? なんだ?」
馬車を引いていた馬がいなないたかと思うとその場で急停止する。バプラスが双眼鏡を取り出して前方を確認した。
「……さて、用心棒の出番だネ」
「俺たちの出番……ってことは」
剣だけ持って馬車から飛び降り、馬車の進行方向に目を凝らす。まだかなり先だが何かしらの生き物がいるのは確認できた。
「行くぞ」
「「はい」」「言われなくても行くに決まってンだろ!」
走っていこうとする俺ら三人の脇をガルが四足走行でぶち抜いていく。おお、これが獣人とやらの力か。
「ヒロキ様、あれは……」
少し走るとそいつらの全容が見えてきた。タチバックウルフの群れ。それが少し突き出た岩場の陰に溜まっているのだった。
「俺のナワバリに入ったヤツはギッタンギッタンに切り刻んでやる!!」
ガルが手の爪を立てて五、六匹いるタチバックウルフの中に突っ込んでいく。いくら身体能力が高いからって多勢に無勢でかかるのは無茶だ。
「アナ! スピカ! ガルを援護しろ」
「「はい」」
スピカの魔法には少し不安があるが今そんなことも言ってられない。俺も剣を構えてタチバックウルフの群れに突っ込んでいく。
「おらおらおらおらぁ!!」
……だが、予想に反してガルの爪はタチバックウルフを一息に切り裂いていく。流れるように振るわれた爪の先は他ならない剣のようにウルフを肉片と化させていく。
「まじかよ……」
俺も強くなったとはいえタチバックウルフに剣を食い込ませることがようやくできるようになった程度。それを肉片にまで切り刻むとは……ガルの強さを見くびっていた。
「おー、俺の爪今日はちょーしいいな」
と思いきやガルはガルで不思議そうに自分の手を見ている。どうやら勇者の仲間としての加護を受けたからのようだ。いやそれにしても強いけども。
「案外あっさりと終わったな。早く馬車に戻……」
「まて!」
俺が完全に気を抜いて帰ろうとしている時だった。ガルが叫んだかと思うとドスンッッッと重いものが地面に落下する音が響いた。
振り返るとそこには……3メートルはあろうかという巨大なゴリラが佇んでいた。こいつ……まさかこの岩の上にいたのか……。
「こいつはサードゴリラ……ウルフとは比にならないほどの強敵です」
「サード……一体どんなヤツなんだ?」
「執拗に相手を殴り付けて相手が弱っていくのを見て興奮する、淫魔の中でも特に気性が荒い種族です……!」
それサードじゃなくてサドじゃないかーい! ……とか言ってる場合じゃなくて。
「ガル! 離れろ!」
ガルは今ゴリラの真ん前にいる。ガルが強いとはいえゴリラに勝てるとは限らない。近接戦は避けるべきだ。
「うるせぇ! こいつは俺の獲物だ!」
「あ……おい!!」
あろうことかガルはさっきの再放送のように巨大ゴリラに向かって突っ込んでいく。さっきはたまたまうまくいったけどそんなにたまたまが続くわけ……。
「ぐるぁぁああ!!」
ゴリラの耳をつんざくような咆哮のあと、「バキィッッ」と交通事故のような音が平原に響いた。反射的に瞑った目を恐る恐る開くと、ゴリラの手の甲から白い煙が上がっていてガルの姿はなくなっていた。
「が……ガル!?」
「ヒロキ様、あそこです!」
見るとさっきいたところから20mほど離れた岩の壁にガルがめり込んでいた。一撃で下着まで粉砕され、辛うじて意識だけ残っている状態だ。
……まったく言わんこっちゃない……。この世界ではダメージがHPの減少へ反映されるからまだ助かっているが、現実なら全身複雑骨折で即死しているところだ。
「アナ、スピカ、集中攻撃だ」
「「はい!」」
アナとスピカは声を揃えて返事をすると同時に火の玉をゴリラに放ち始める。俺もゴリラの動きに警戒しつつ近付き、通過しながら腕を斬りつけた。
「……っ! またこの感覚か……」
ダメージは与えているはずなのに手応えがない。最初のタチバックウルフの時と同じだ。レベル差があると傷ひとつ付けられない……つまり、このゴリラはそれだけ格上の相手ってことだ。
「ぐおおおおおお!!!」
「くるか!?」
ゴリラの咆哮を受けて咄嗟に飛び退くが、予想に反してゴリラは俺とは別の方向に移動し始めた。逃げるのか……と思いきや、そんな生易しくはなかった。
ゴリラが向かったのは満身創痍のガルのところだったのだ。
「まて!!」
必死に後ろから切り付けても、アナの特大火の玉が着弾してもゴリラは動じない。おもむろにガルの髪の毛をガシッと掴んで持ち上げると、無表情のままその腹を拳で殴り始めた。
「あがっ……!」
ガルは苦しそうな悲鳴を上げて苦悶の表情を浮かべる。いくら肉体に直接ダメージが入らないとはいえ痛みは同等のはずだ。早くゴリラを倒さねえとガルが痛みでどうにかなっちまうぞ……!
「もっとだアナ!!」
もうこっちに構うつもりがないのは分かっている。相手の反撃を恐れることもなく背中を連続で斬りつける。
「がはっ……ぐぇ……」
ガルは何度も殴りつけられて涙と鼻水と涎に塗れて目は虚になっている。もう既に意識はないかもしれない。
早く……できるだけ早く……! 必死で剣を振り下ろし続けてどのくらいだろうか、急に剣が空を切ってバランスを崩した。蓄積ダメージでゴリラを何とか倒したのだ。
「ガル!!」
すぐさま三人でガルに駆け寄って抱き起こす。酷い有様だがちゃんと呼吸しているのは確認できた。
……と、ガルの瞼がゆっくりと開く。あれだけやられたのにもう意識を取り戻すのか……さすが獣人は違うな……。
「ガル、大丈夫か」
「……」
「うん? どうした? ガr……」
と言いかけて左腕の激痛に言葉が詰まった。なんだ? 一体何が……。痛むところを見てみると左の二の腕がガルに掴まれていて、その長い長い爪が腕の中に全て食い込ん
「うわああああああああ!!?!?!!?」
痛い!!!! 痛い痛い痛い痛い!!!!!
全身の血の気が引いて飛び退く。だが爪が抜けた傷口からドクドクと血が溢れ出てどうにもならない。クソ……勇者だけ復活できるから無敵なしって仕様意味分からなすぎだろクソ……!!
「快楽堕ちかよコノヤロー!!!」
虚な目で近付いてくるガル。焦るアナ、スピカ。血まみれの俺。平原の暑さも相まって俺の意識は薄まってき……て……
翌朝、馬車の中でガルは主に腰を押さえて悶えていた。まあそんな小さな身体で激しく致したらそりゃあ筋肉やら何やら諸々痛くなるだろうな。
「昨夜はお楽しみだったんですね」
「なっ! そんなんじゃねえし!」
無理矢理激しくしたことに関しては直接怒ってくることはないが、とはいえ俺に向けてくる目つきは明らかに仲間に対するそれではないんだよなぁ。アナの言うことは聞くから別にいいんだけども。
「ヒヒィン」ガタッ
「おおっ? なんだ?」
馬車を引いていた馬がいなないたかと思うとその場で急停止する。バプラスが双眼鏡を取り出して前方を確認した。
「……さて、用心棒の出番だネ」
「俺たちの出番……ってことは」
剣だけ持って馬車から飛び降り、馬車の進行方向に目を凝らす。まだかなり先だが何かしらの生き物がいるのは確認できた。
「行くぞ」
「「はい」」「言われなくても行くに決まってンだろ!」
走っていこうとする俺ら三人の脇をガルが四足走行でぶち抜いていく。おお、これが獣人とやらの力か。
「ヒロキ様、あれは……」
少し走るとそいつらの全容が見えてきた。タチバックウルフの群れ。それが少し突き出た岩場の陰に溜まっているのだった。
「俺のナワバリに入ったヤツはギッタンギッタンに切り刻んでやる!!」
ガルが手の爪を立てて五、六匹いるタチバックウルフの中に突っ込んでいく。いくら身体能力が高いからって多勢に無勢でかかるのは無茶だ。
「アナ! スピカ! ガルを援護しろ」
「「はい」」
スピカの魔法には少し不安があるが今そんなことも言ってられない。俺も剣を構えてタチバックウルフの群れに突っ込んでいく。
「おらおらおらおらぁ!!」
……だが、予想に反してガルの爪はタチバックウルフを一息に切り裂いていく。流れるように振るわれた爪の先は他ならない剣のようにウルフを肉片と化させていく。
「まじかよ……」
俺も強くなったとはいえタチバックウルフに剣を食い込ませることがようやくできるようになった程度。それを肉片にまで切り刻むとは……ガルの強さを見くびっていた。
「おー、俺の爪今日はちょーしいいな」
と思いきやガルはガルで不思議そうに自分の手を見ている。どうやら勇者の仲間としての加護を受けたからのようだ。いやそれにしても強いけども。
「案外あっさりと終わったな。早く馬車に戻……」
「まて!」
俺が完全に気を抜いて帰ろうとしている時だった。ガルが叫んだかと思うとドスンッッッと重いものが地面に落下する音が響いた。
振り返るとそこには……3メートルはあろうかという巨大なゴリラが佇んでいた。こいつ……まさかこの岩の上にいたのか……。
「こいつはサードゴリラ……ウルフとは比にならないほどの強敵です」
「サード……一体どんなヤツなんだ?」
「執拗に相手を殴り付けて相手が弱っていくのを見て興奮する、淫魔の中でも特に気性が荒い種族です……!」
それサードじゃなくてサドじゃないかーい! ……とか言ってる場合じゃなくて。
「ガル! 離れろ!」
ガルは今ゴリラの真ん前にいる。ガルが強いとはいえゴリラに勝てるとは限らない。近接戦は避けるべきだ。
「うるせぇ! こいつは俺の獲物だ!」
「あ……おい!!」
あろうことかガルはさっきの再放送のように巨大ゴリラに向かって突っ込んでいく。さっきはたまたまうまくいったけどそんなにたまたまが続くわけ……。
「ぐるぁぁああ!!」
ゴリラの耳をつんざくような咆哮のあと、「バキィッッ」と交通事故のような音が平原に響いた。反射的に瞑った目を恐る恐る開くと、ゴリラの手の甲から白い煙が上がっていてガルの姿はなくなっていた。
「が……ガル!?」
「ヒロキ様、あそこです!」
見るとさっきいたところから20mほど離れた岩の壁にガルがめり込んでいた。一撃で下着まで粉砕され、辛うじて意識だけ残っている状態だ。
……まったく言わんこっちゃない……。この世界ではダメージがHPの減少へ反映されるからまだ助かっているが、現実なら全身複雑骨折で即死しているところだ。
「アナ、スピカ、集中攻撃だ」
「「はい!」」
アナとスピカは声を揃えて返事をすると同時に火の玉をゴリラに放ち始める。俺もゴリラの動きに警戒しつつ近付き、通過しながら腕を斬りつけた。
「……っ! またこの感覚か……」
ダメージは与えているはずなのに手応えがない。最初のタチバックウルフの時と同じだ。レベル差があると傷ひとつ付けられない……つまり、このゴリラはそれだけ格上の相手ってことだ。
「ぐおおおおおお!!!」
「くるか!?」
ゴリラの咆哮を受けて咄嗟に飛び退くが、予想に反してゴリラは俺とは別の方向に移動し始めた。逃げるのか……と思いきや、そんな生易しくはなかった。
ゴリラが向かったのは満身創痍のガルのところだったのだ。
「まて!!」
必死に後ろから切り付けても、アナの特大火の玉が着弾してもゴリラは動じない。おもむろにガルの髪の毛をガシッと掴んで持ち上げると、無表情のままその腹を拳で殴り始めた。
「あがっ……!」
ガルは苦しそうな悲鳴を上げて苦悶の表情を浮かべる。いくら肉体に直接ダメージが入らないとはいえ痛みは同等のはずだ。早くゴリラを倒さねえとガルが痛みでどうにかなっちまうぞ……!
「もっとだアナ!!」
もうこっちに構うつもりがないのは分かっている。相手の反撃を恐れることもなく背中を連続で斬りつける。
「がはっ……ぐぇ……」
ガルは何度も殴りつけられて涙と鼻水と涎に塗れて目は虚になっている。もう既に意識はないかもしれない。
早く……できるだけ早く……! 必死で剣を振り下ろし続けてどのくらいだろうか、急に剣が空を切ってバランスを崩した。蓄積ダメージでゴリラを何とか倒したのだ。
「ガル!!」
すぐさま三人でガルに駆け寄って抱き起こす。酷い有様だがちゃんと呼吸しているのは確認できた。
……と、ガルの瞼がゆっくりと開く。あれだけやられたのにもう意識を取り戻すのか……さすが獣人は違うな……。
「ガル、大丈夫か」
「……」
「うん? どうした? ガr……」
と言いかけて左腕の激痛に言葉が詰まった。なんだ? 一体何が……。痛むところを見てみると左の二の腕がガルに掴まれていて、その長い長い爪が腕の中に全て食い込ん
「うわああああああああ!!?!?!!?」
痛い!!!! 痛い痛い痛い痛い!!!!!
全身の血の気が引いて飛び退く。だが爪が抜けた傷口からドクドクと血が溢れ出てどうにもならない。クソ……勇者だけ復活できるから無敵なしって仕様意味分からなすぎだろクソ……!!
「快楽堕ちかよコノヤロー!!!」
虚な目で近付いてくるガル。焦るアナ、スピカ。血まみれの俺。平原の暑さも相まって俺の意識は薄まってき……て……
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