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クロス村編
愛の告白
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「……」
「……」
トントントントン。
まな板で野菜を切っている音だけがひたすら聞こえてくる。気まずい。すげー気まずい。
そりゃこうなるよなあ、俺ここ以外に帰るとこないんだもの。ジータのうちとかに行くこともちょっと考えたけどそんなことしたら余計にアナを怒らせる気もするし……結局詰んでるじゃねえか。
「あのー……アナさん?」
「なんでしょうか」
うん、怒ってますね。まだ全然余裕で怒ってますね。本当にどうすんのこれ。
そもそもの話、なんでアナは怒ったんだろうか。俺はただアナに気を使ってアナが残りたいなら一緒に残ろうという話をしただけなのに。
確かさっき俺の仲間になりたかったとか言ってたよな……。よくよく考えてみれば最初会った時も「仲間になりましょう」ってことで同棲し始めたんだったな。
……えっ、ということは俺ビジネスライクな関係だと思われてる?? あれだけ体重ねておいて私とは仕事だけの関係だったの!?(誰視点だよお前)
そんな……俺はもう妻として嫁として奥さんとしてアナを見ているのに……ひどいわ!(だから誰だよ)
……こればかりは本人に聞いてみるっきゃないな……。返答次第では泣いてジータの家に全力疾走する自信があるけど、だからといってこのまま微妙な雰囲気を引きずるのもよくない。
とぼとぼとおぼつかない足取りでアナのもとまで行って、後ろからぎゅっと抱きついた。
「ひゃっ……? そ、そんな手には乗りませんよ!」
「アナ……アナは俺のこと嫌いか?」
「はい?」
言い方が明らかに病んでる人間のそれだけど、まあ実際フラれかけて病んでると言っても過言ではないからな。鼓膜の神経を集中させてアナの返答を待つ。
「……そんなの……嫌いなわけ、ないじゃないですか」
「ほんとか?」
「本当です」
「じゃあ、好きか?」
「好きに決まってるじゃないですか……そうじゃなければ仲間でい続けるわけがないです」
「それは仕事仲間としてってことなのか?」
「……さっきからどうしたんです? ヒロキ様」
「俺はアナのことが好きだ」
アナを抱きしめる手に力が入る。リアルでもしたことがない、人生で初めての告白だった。
「だから俺はアナと一緒にいたい。もちろん戦う仲間としてもそうだけど、そうでない時も一緒に過ごしたいと思ってる。だから……だからさ……
俺についてきてはくれないか どこへ行くにも 」
感極まって声が震えた。渾身の告白の言葉。返事を聞くのが怖いけど、男として、勇者ヒロキとしてその答えを聞かなきゃならない。
「私は……」
アナは包丁を置いてこちらを振り返る。
「私はヒロキ様の仲間です。女子は勇者様につき戦う、そういう風習だから一人でいるヒロキ様に仲間にしていただけるよう申し込みました」
アナはそう言いながら俺の胸に手を当ててくる。
や、たっぱりそうなのかっっっただ風習だから仲間にしてほしいと頼んできただけなのk「でも!」
「……でもそのあとヒロキ様と行動を共にしてきたのは私の意志です。やる気がないように見えて周りに優しいし、大事なところでは熱くなるし、私の手料理をおいしいねって褒めてくれます。夜の営みだって、強引な勇者様も多い中で愛を感じる抱き方をしてくださいます。……私はそんなヒロキ様が好きです。だから」
アナは俺の力なく垂れ下がった手を取って、両手でそっと包み込んだ。
「先ほどの質問の答えは、イエスです。むしろどこへでも連れ回してください。ヒロキ様がみんなのために戦う、それを私はお支えしたいのですから」
「アナ……」
思わずもう一度アナを抱きしめてしまう。くぅ、やっぱり君はいい女だよ!!
「それともう一つだけ……俺の奥さんになってくれるか?」
「えっと……こんな私で良ければ……」
「あ、というか結婚っていう概念はここに存在するのか?」
せっかくいい感じの雰囲気だったのに急に我に返ってしまった。婚姻届を出す役所もないし、そもそも勇者は大量の女と肉体的関係を持つわけだから妻という概念があるかどうかも怪しい。
「もちろん、お互いの了承の上に夫婦という関係を公言することはありますよ。その言葉に強制力はないですけど」
自称するだけの概念っていうことか。ゲームの世界だから現実の概念がぐちゃぐちゃになって存在してるな。
「じゃあアナを奥さんにする。……まあ仲間と契ることはあるわけだが……一番はアナだから。絶対」
「ふふふ……そんなこと気にしなくてもいいですよ。ヒロキ様が私のことを好きであることは今日よく分かりましたから。あっ、ヒロキ『様』っていう呼び方はこれに慣れてしまったのでこのままでもいいですか?」
「自由にしてくれていいよ。……それじゃあこれからよろしくな、アナ」
「はい! ヒロキ様!」
「……ああ! もう我慢できねえ!」
「きゃっ! もう、まだご飯の支度が……あんっ……」
こうして俺たちはめでたく結ばれて、二人で勇者の旅をすることが決定したのであった。俺のこの世界での冒険は始まったばかり。
「……」
トントントントン。
まな板で野菜を切っている音だけがひたすら聞こえてくる。気まずい。すげー気まずい。
そりゃこうなるよなあ、俺ここ以外に帰るとこないんだもの。ジータのうちとかに行くこともちょっと考えたけどそんなことしたら余計にアナを怒らせる気もするし……結局詰んでるじゃねえか。
「あのー……アナさん?」
「なんでしょうか」
うん、怒ってますね。まだ全然余裕で怒ってますね。本当にどうすんのこれ。
そもそもの話、なんでアナは怒ったんだろうか。俺はただアナに気を使ってアナが残りたいなら一緒に残ろうという話をしただけなのに。
確かさっき俺の仲間になりたかったとか言ってたよな……。よくよく考えてみれば最初会った時も「仲間になりましょう」ってことで同棲し始めたんだったな。
……えっ、ということは俺ビジネスライクな関係だと思われてる?? あれだけ体重ねておいて私とは仕事だけの関係だったの!?(誰視点だよお前)
そんな……俺はもう妻として嫁として奥さんとしてアナを見ているのに……ひどいわ!(だから誰だよ)
……こればかりは本人に聞いてみるっきゃないな……。返答次第では泣いてジータの家に全力疾走する自信があるけど、だからといってこのまま微妙な雰囲気を引きずるのもよくない。
とぼとぼとおぼつかない足取りでアナのもとまで行って、後ろからぎゅっと抱きついた。
「ひゃっ……? そ、そんな手には乗りませんよ!」
「アナ……アナは俺のこと嫌いか?」
「はい?」
言い方が明らかに病んでる人間のそれだけど、まあ実際フラれかけて病んでると言っても過言ではないからな。鼓膜の神経を集中させてアナの返答を待つ。
「……そんなの……嫌いなわけ、ないじゃないですか」
「ほんとか?」
「本当です」
「じゃあ、好きか?」
「好きに決まってるじゃないですか……そうじゃなければ仲間でい続けるわけがないです」
「それは仕事仲間としてってことなのか?」
「……さっきからどうしたんです? ヒロキ様」
「俺はアナのことが好きだ」
アナを抱きしめる手に力が入る。リアルでもしたことがない、人生で初めての告白だった。
「だから俺はアナと一緒にいたい。もちろん戦う仲間としてもそうだけど、そうでない時も一緒に過ごしたいと思ってる。だから……だからさ……
俺についてきてはくれないか どこへ行くにも 」
感極まって声が震えた。渾身の告白の言葉。返事を聞くのが怖いけど、男として、勇者ヒロキとしてその答えを聞かなきゃならない。
「私は……」
アナは包丁を置いてこちらを振り返る。
「私はヒロキ様の仲間です。女子は勇者様につき戦う、そういう風習だから一人でいるヒロキ様に仲間にしていただけるよう申し込みました」
アナはそう言いながら俺の胸に手を当ててくる。
や、たっぱりそうなのかっっっただ風習だから仲間にしてほしいと頼んできただけなのk「でも!」
「……でもそのあとヒロキ様と行動を共にしてきたのは私の意志です。やる気がないように見えて周りに優しいし、大事なところでは熱くなるし、私の手料理をおいしいねって褒めてくれます。夜の営みだって、強引な勇者様も多い中で愛を感じる抱き方をしてくださいます。……私はそんなヒロキ様が好きです。だから」
アナは俺の力なく垂れ下がった手を取って、両手でそっと包み込んだ。
「先ほどの質問の答えは、イエスです。むしろどこへでも連れ回してください。ヒロキ様がみんなのために戦う、それを私はお支えしたいのですから」
「アナ……」
思わずもう一度アナを抱きしめてしまう。くぅ、やっぱり君はいい女だよ!!
「それともう一つだけ……俺の奥さんになってくれるか?」
「えっと……こんな私で良ければ……」
「あ、というか結婚っていう概念はここに存在するのか?」
せっかくいい感じの雰囲気だったのに急に我に返ってしまった。婚姻届を出す役所もないし、そもそも勇者は大量の女と肉体的関係を持つわけだから妻という概念があるかどうかも怪しい。
「もちろん、お互いの了承の上に夫婦という関係を公言することはありますよ。その言葉に強制力はないですけど」
自称するだけの概念っていうことか。ゲームの世界だから現実の概念がぐちゃぐちゃになって存在してるな。
「じゃあアナを奥さんにする。……まあ仲間と契ることはあるわけだが……一番はアナだから。絶対」
「ふふふ……そんなこと気にしなくてもいいですよ。ヒロキ様が私のことを好きであることは今日よく分かりましたから。あっ、ヒロキ『様』っていう呼び方はこれに慣れてしまったのでこのままでもいいですか?」
「自由にしてくれていいよ。……それじゃあこれからよろしくな、アナ」
「はい! ヒロキ様!」
「……ああ! もう我慢できねえ!」
「きゃっ! もう、まだご飯の支度が……あんっ……」
こうして俺たちはめでたく結ばれて、二人で勇者の旅をすることが決定したのであった。俺のこの世界での冒険は始まったばかり。
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