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クロス村編
痴話喧嘩(?)
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「あ゛ぁ゛……久々に飲んだ……」
宴も夕刻には解散して、俺はアナと共に帰路についていた。こっちの世界にきてからはアナの家に酒がないのもあって飲んでなかったからなあ……リアルではよくスト◯ロとか飲んでたのに、酒弱くなったなあ。
「みんながついてきてくれなくて、寂しくなりますね」
「そうだな……」
ジータまでもが村に残る選択をして、旅を共にする仲間はアナただ一人になってしまった。……いや、もしくは……。
「なあアナ」
「はい、なんでしょう」
「アナは村に残りたくはないのか?」
これだけ村で顔が広いアナだ。みんなと離れ離れになるのは嫌だろう。それに一応は一軒家もあるわけだし……間違いなく実家だろうから、それを放って外に出るのはなかなか勇気のいることだ。
「残りたくないわけではありませんよ。ジータちゃんほどではないですけど、両親の形見である家の管理もしていましたし」
やっぱりそうなのか。ジータといいアナといい、親を早くに亡くしてるんだな……。その分村全体で助け合ってきたんだろう。
「……あのさ」
「はい?」
「アナがここに残りたいなら、俺はそれでもいいんじゃないかと思うんだ」
俺がそう言うと、アナは足を止めて驚いた顔をして振り返った。
そもそも俺は勇者として働きたいわけではない。なりゆきでなんとなくエロゲRPGをプレイしていただけだ。
神様に「世界の命運をお前にかかっている」なんてことを言われても、俺に世界が助けられるかどうかなんて分からない。というか多分クソ難しいだろう。
だったら別に馬鹿正直にそれに従う必要もないだろうし……何より仲間がみんな残るんだったら、なんというか、もういいじゃないか。
「俺もこの村に残ってさ、みんなでまったりスローライフを……」
送りたいなあ、という俺の言葉はアナの涙を見て引っ込んでしまった。
えっ、えっ、これはどういう涙? なんか心なしかこっちを睨みつけてるようにも見え
「ヒロキ様の馬鹿!!」
アナはボロボロと涙をこぼしながら村中に響くくらい大きな声で叫んだ。怒ってる。間違いなく怒ってる。
「あ、アナ……」
「私はっ……勇者ヒロキの仲間になりたかったんです……! 勇者の天命を投げ捨てるようなヒロキ様とは……ぜ、絶っ交ですっっ!!!」
アナはそう吐き捨てると、踵を返して真っ直ぐ駆け出していった。突然のことに頭がクエスチョンマークで覆い尽くされている俺は、そのあとをすぐに追いかけることができなかった。
ぜっこー……って、つまり絶交だよな……? 脇汗が半端ない。あ、修羅場に陥ったカップルの彼氏ってこんな気持ちなんだ。リアルでは童貞だったから知らなかったよ。知りたくもなかったけど。
ど、どど、どうしよう。
俺の帰る家、アナの家なんだけど。
宴も夕刻には解散して、俺はアナと共に帰路についていた。こっちの世界にきてからはアナの家に酒がないのもあって飲んでなかったからなあ……リアルではよくスト◯ロとか飲んでたのに、酒弱くなったなあ。
「みんながついてきてくれなくて、寂しくなりますね」
「そうだな……」
ジータまでもが村に残る選択をして、旅を共にする仲間はアナただ一人になってしまった。……いや、もしくは……。
「なあアナ」
「はい、なんでしょう」
「アナは村に残りたくはないのか?」
これだけ村で顔が広いアナだ。みんなと離れ離れになるのは嫌だろう。それに一応は一軒家もあるわけだし……間違いなく実家だろうから、それを放って外に出るのはなかなか勇気のいることだ。
「残りたくないわけではありませんよ。ジータちゃんほどではないですけど、両親の形見である家の管理もしていましたし」
やっぱりそうなのか。ジータといいアナといい、親を早くに亡くしてるんだな……。その分村全体で助け合ってきたんだろう。
「……あのさ」
「はい?」
「アナがここに残りたいなら、俺はそれでもいいんじゃないかと思うんだ」
俺がそう言うと、アナは足を止めて驚いた顔をして振り返った。
そもそも俺は勇者として働きたいわけではない。なりゆきでなんとなくエロゲRPGをプレイしていただけだ。
神様に「世界の命運をお前にかかっている」なんてことを言われても、俺に世界が助けられるかどうかなんて分からない。というか多分クソ難しいだろう。
だったら別に馬鹿正直にそれに従う必要もないだろうし……何より仲間がみんな残るんだったら、なんというか、もういいじゃないか。
「俺もこの村に残ってさ、みんなでまったりスローライフを……」
送りたいなあ、という俺の言葉はアナの涙を見て引っ込んでしまった。
えっ、えっ、これはどういう涙? なんか心なしかこっちを睨みつけてるようにも見え
「ヒロキ様の馬鹿!!」
アナはボロボロと涙をこぼしながら村中に響くくらい大きな声で叫んだ。怒ってる。間違いなく怒ってる。
「あ、アナ……」
「私はっ……勇者ヒロキの仲間になりたかったんです……! 勇者の天命を投げ捨てるようなヒロキ様とは……ぜ、絶っ交ですっっ!!!」
アナはそう吐き捨てると、踵を返して真っ直ぐ駆け出していった。突然のことに頭がクエスチョンマークで覆い尽くされている俺は、そのあとをすぐに追いかけることができなかった。
ぜっこー……って、つまり絶交だよな……? 脇汗が半端ない。あ、修羅場に陥ったカップルの彼氏ってこんな気持ちなんだ。リアルでは童貞だったから知らなかったよ。知りたくもなかったけど。
ど、どど、どうしよう。
俺の帰る家、アナの家なんだけど。
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