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クロス村編

結界を破壊したい

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「イルナが人を助けるなんて……!」

「さすがヒロキ様の人徳ですね!」

 スンとした顔でジータの入れたお茶を飲むイルナを見て、ジータとアナの二人はびっくりしていた。まあ俺自身もびっくりだ。

 あのあとイルナと手分けして四人をここまで担いできて一、二時間休憩させて今に至る。なおソフィはまだ寝ている。

「おねーさん助けてくれてありがとー!」

「……どういたしまして」

 メンバーに感謝されてイルナも満更でもないようだ。

「それで、淫魔石へと通ずる扉が開かないという話でしたよね」

「確かに学校でそんなことを教わったような教わってないような」

 ジータはどうにか思い出そうと首を捻っている。脳筋のイメージがあるけど子供の頃は勉強できたのだろうか。

「それでイルナの心当たりってのを聞かせてもらってもいいか?」

 例の結界が張られているらしき扉の前でイルナは心当たりがあると言っていた。突破する手掛かりになるかもしれない。

「あぁ。それはだな……聖水を使えばいいんじゃないかと思ったんだ」

「聖水?」
「なるほどね」
「それならいけるかもしれません」

 俺はピンときてないがアナとジータは意図が読み取れたらしい。

「聖水ってのはつまりキ……神様関係のあれだよな」

 キリスト教と言いかけて言い直したがなんだかしどろもどろになってしまった。まあ伝わるだろ。

「そうです。教会で儀式をすることで得ることができる聖なる水のことです」

「聖水には強大な魔力が込められているから、小さな結界程度ならきっと破壊できるんじゃないかな」

 強大な魔力か。魔法に魔法をぶつけて相殺するイメージなのかな? あの結界を張ったのが淫魔なのか人間なのかは分からないが、とりあえずどちらにも有効そうだ。

「その聖水ってのはすぐにもらえるのか? それとも買うのか?」

「多少の寄付はした方がいいですが……勇者様が教会に行けば基本的にはその場で儀式をしてくれると思いますよ」

 多少の寄付か……。村を守るためってことでまけてもらえないだろうか。

「じゃあとりあえず教会に行くとするか?」

「了解です」
「早く行こう!」
「いくー!」

「イルナはどうする? ここから先は多分俺らだけでもどうにかなると思うが」

「……乗りかかった船だ。最後まで見届ける」

「りょーかい」

 なんだかんだこの雰囲気気に入ってんだろ……と口に出したら最後首がなくなる気がしたのですんでのところで飲み込んだ。
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