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クロス村編
ここは一体……?
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「……か……ぶ…すか……」
ん……。身体が重い……。二日酔いでもしたんだろうか。
身体と同時に瞼も重い。クソ、こりゃあ今までになくひどい二日酔いだな。
「……ぶですか……大丈夫ですか!」
そこでやっと俺は誰かに声を掛けられているのに気付いた。大丈夫ですか、だって? まさか俺、飲みすぎて道端で眠り込んでるんじゃあ……?
「すみません! すぐ帰ります!」
一瞬で脳が覚醒して飛び起きる。……しかし、上半身を起こして目に飛び込んできたのは何軒もそびえ立つ高層ビル群でもなく、そして閑静な住宅街でもなかった。
そこは鬱蒼とした森だった。見渡す限り大木が植わっていて、広がった枝葉が心地よい日陰を作り出している。地面や岩は苔むしていて、あちらこちらにシダ植物のようなものも飛び出ていた。
そして何よりも驚いたのは、僕を起こそうとしていたのが婦警さんでもホステスさんでもなく、「二次元キャラクター」だったことだった。
いや、二次元キャラクターと言っても現に今肩を触られているのだから現実の物体であることに間違いはない。でも、だからといってバーチャルユーチューバーのような3Dモデルみたいなものかというとそうでもない。本当に「触れる二次元キャラクター」っていう、そんな感じだ。
「やっと気付きましたね! いやぁ、もしかして死んでるのではと心配してしまいましたよぉ」
目の前の二次元キャラクターは表情豊かにそんなことを言う。本来ならただのいい子なのだが、流石に突然二次元キャラクターが目の前で流暢に喋り出したら困惑もする。
「えーと、君は?」
「あ、申し遅れました! 私、見習い魔法使いのアナって言います」
アナ、と名乗った少女は手に持っている杖と頭の帽子をジェスチャーで強調した。二次元キャラクターが喋っている衝撃がやっと薄れてきて、アナの格好に気が回るようになった。
確かにアナは典型的な魔女って感じの格好をしていた。紺っぽい魔女帽子に金色の髪、白いブラウス、スカートや上着はアリスを思わせる水色で統一されている。そして手にはほうき。
あれ? このキャラクター、どこかで見たような……。
「それより勇者様、あなたの名前はなんて言うんですか?」
「へ? ゆ、勇者?」
「はい。だってその格好」
アナに言われて自分の身体を見てみれば、これまたビックリ。見るからにRPGの勇者の初期装備のような毛皮でできた衣類を着ているに、ザ・剣って感じの大きい剣まで近くに転がっていた。
俺は一体全体なんだってこんな格好を。
「と、とりあえず俺の名はヒロキだ」
「ヒロキ様? なんだか変わったお名前ですね」
「そんな変わってるか? 俺の名前」
「はい。勇者様といえば特に人気の名前が『あああああ』様で、最近では『ロリマンしこしこ』様や『ク◯ニイキぐるいサムライ』様などもお目にかかりました」
あああああまでは分かるけど他の奴らはなんつー名前で登録してんだよ。こんなかわいいキャラに『ク◯ニイキぐるいサムライ』なんて言わせるな馬鹿野郎。
……とりあえず今ので俺がどういう状況なのかはだいたい把握した。俺はどうやら何かのゲームの世界に迷い込んでしまったんだな。俗に言う転生ってやつか。そう考えると意外に悪くはないかもしれない。
「それにしても、ヒロキ様はどうしてこんなところに倒れていらっしゃったのですか?」
「それが……俺も覚えてないんだ」
自分が誰で何をしていた人間なのか、それは覚えてる。K州大学を卒業して新卒でM山製紙に就職して二年目の二十四歳独身。ついでに童貞。
それは覚えてるのに……なんでか直前のことだけが思い出せない。家で寝た記憶もないし、かと言ってトラックに轢かれた記憶もない。ここで目覚めるまで、まるで記憶がすっぽり抜け落ちているような、そんな感じだった。
「そう、なんですか……。あの、もしよかったら私の家にいらっしゃいませんか?」
「え? 君の部屋に?」
「行くアテがないのであれば、と思ったのですが……。ご迷惑だったでしょうか」
「いや、そんなことない。むしろすごく嬉しい」
正直こんな森の中で一人で動いてても何もできそうにない。だったらアナと一緒に行動してこの世界がどんな場所なのかを案内してもらいたい。
「本当ですか!? それじゃあ一緒に家へ帰りましょう! まずはこの森を抜けて村を目指しますね」
そう言ってアナは張り切って俺の前を歩き始めた。俺は内心わくわくした状態でその頼もしい背中のあとをついていったのだった。
ん……。身体が重い……。二日酔いでもしたんだろうか。
身体と同時に瞼も重い。クソ、こりゃあ今までになくひどい二日酔いだな。
「……ぶですか……大丈夫ですか!」
そこでやっと俺は誰かに声を掛けられているのに気付いた。大丈夫ですか、だって? まさか俺、飲みすぎて道端で眠り込んでるんじゃあ……?
「すみません! すぐ帰ります!」
一瞬で脳が覚醒して飛び起きる。……しかし、上半身を起こして目に飛び込んできたのは何軒もそびえ立つ高層ビル群でもなく、そして閑静な住宅街でもなかった。
そこは鬱蒼とした森だった。見渡す限り大木が植わっていて、広がった枝葉が心地よい日陰を作り出している。地面や岩は苔むしていて、あちらこちらにシダ植物のようなものも飛び出ていた。
そして何よりも驚いたのは、僕を起こそうとしていたのが婦警さんでもホステスさんでもなく、「二次元キャラクター」だったことだった。
いや、二次元キャラクターと言っても現に今肩を触られているのだから現実の物体であることに間違いはない。でも、だからといってバーチャルユーチューバーのような3Dモデルみたいなものかというとそうでもない。本当に「触れる二次元キャラクター」っていう、そんな感じだ。
「やっと気付きましたね! いやぁ、もしかして死んでるのではと心配してしまいましたよぉ」
目の前の二次元キャラクターは表情豊かにそんなことを言う。本来ならただのいい子なのだが、流石に突然二次元キャラクターが目の前で流暢に喋り出したら困惑もする。
「えーと、君は?」
「あ、申し遅れました! 私、見習い魔法使いのアナって言います」
アナ、と名乗った少女は手に持っている杖と頭の帽子をジェスチャーで強調した。二次元キャラクターが喋っている衝撃がやっと薄れてきて、アナの格好に気が回るようになった。
確かにアナは典型的な魔女って感じの格好をしていた。紺っぽい魔女帽子に金色の髪、白いブラウス、スカートや上着はアリスを思わせる水色で統一されている。そして手にはほうき。
あれ? このキャラクター、どこかで見たような……。
「それより勇者様、あなたの名前はなんて言うんですか?」
「へ? ゆ、勇者?」
「はい。だってその格好」
アナに言われて自分の身体を見てみれば、これまたビックリ。見るからにRPGの勇者の初期装備のような毛皮でできた衣類を着ているに、ザ・剣って感じの大きい剣まで近くに転がっていた。
俺は一体全体なんだってこんな格好を。
「と、とりあえず俺の名はヒロキだ」
「ヒロキ様? なんだか変わったお名前ですね」
「そんな変わってるか? 俺の名前」
「はい。勇者様といえば特に人気の名前が『あああああ』様で、最近では『ロリマンしこしこ』様や『ク◯ニイキぐるいサムライ』様などもお目にかかりました」
あああああまでは分かるけど他の奴らはなんつー名前で登録してんだよ。こんなかわいいキャラに『ク◯ニイキぐるいサムライ』なんて言わせるな馬鹿野郎。
……とりあえず今ので俺がどういう状況なのかはだいたい把握した。俺はどうやら何かのゲームの世界に迷い込んでしまったんだな。俗に言う転生ってやつか。そう考えると意外に悪くはないかもしれない。
「それにしても、ヒロキ様はどうしてこんなところに倒れていらっしゃったのですか?」
「それが……俺も覚えてないんだ」
自分が誰で何をしていた人間なのか、それは覚えてる。K州大学を卒業して新卒でM山製紙に就職して二年目の二十四歳独身。ついでに童貞。
それは覚えてるのに……なんでか直前のことだけが思い出せない。家で寝た記憶もないし、かと言ってトラックに轢かれた記憶もない。ここで目覚めるまで、まるで記憶がすっぽり抜け落ちているような、そんな感じだった。
「そう、なんですか……。あの、もしよかったら私の家にいらっしゃいませんか?」
「え? 君の部屋に?」
「行くアテがないのであれば、と思ったのですが……。ご迷惑だったでしょうか」
「いや、そんなことない。むしろすごく嬉しい」
正直こんな森の中で一人で動いてても何もできそうにない。だったらアナと一緒に行動してこの世界がどんな場所なのかを案内してもらいたい。
「本当ですか!? それじゃあ一緒に家へ帰りましょう! まずはこの森を抜けて村を目指しますね」
そう言ってアナは張り切って俺の前を歩き始めた。俺は内心わくわくした状態でその頼もしい背中のあとをついていったのだった。
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