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シャガ―・ゼンドルム

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「準備は良いか!」
「はいっ! 第一部隊! いつでも侵攻可能であります!」
「うむっ! ……シャガ―様。いつにいたしましょうか」
「……あと三十分だ。かつて、大国、マキシンガルドに快勝した時と、同じ時刻に、国を出る」
「かしこまりました……。皆の物! しばし待たれい! 気持ちを緩めるなよ!!!」

部隊の隊長らしき男の呼びかけで、兵が大きな声をあげた。

……なんてこと。
我が国に、侵攻するつもりなの?

愚か……。
だけど、間に合ってよかった。

残念だけど、部隊は出撃する前に、壊滅させてもらう。

「私は部屋に戻る。集中させろ」
「はっ!」

シャガ―が、王宮に引っ込んでいった。

部屋に……? 
妙だ。あと三十分で、出撃するというのに。

私は例の如く、透明化して、後を追った。

王宮のとある一室。
……そこに、娼婦らしき女が、二人も待ち構えていた。
まさか……。
こんな時に、女と?

信じられない……。
私は転移魔法で、シャガ―と共に、地下へと移動した。

「はれっ? サリムは……」
「……信じられない」
「お、おおぉ? ここは地下……。なぜだ」
「王太子、シャガ―・ゼンドルム!!!!」
「っ!?」

背後から話しかけた私に、シャガ―が大げさに驚いた。
……なんて情けない。

軍国の王太子が、これでいいのだろうか。

「お前……。誰だよ」
「私は、あなたの婚約者……。ユーラ・ボーデンの姉、ローザよ」
「ユーラ……。はんっ。あの女との婚約は、とっくにおじゃんだ。今から……。まさに、その国へ攻め入るところだからなぁ!」

言葉遣いが汚い……。
こんな男と、ユーラは半年も暮らしていたのか。

信じられない。吐き気がする。

「ってなわけだ。すぐ国に戻って、逃げるやつは逃げな。まぁもっとも……。国の方は、征服させてもらうがな」
「……魔女の噂は、聞いていないのかしら」
「魔女……? 知らねぇよ。なんだ?」

……学園長のカーフは、学園を破壊した私のことを、言わなかったのか。
彼女なりの、プライドがあったのだろうか。

なんにせよ、間抜けな話だ。

「私が、バッテンガルム学園を、崩壊させたのよ」
「お前……。なんで学園のことを知ってるんだ?」
「……だから、私が破壊したからよ。バカなの?」
「バカぁ? てめぇ! 調子に乗るんじゃねぇ!」

シャガ―が、私に向かって、剣を振り降ろしてきた。
女性に対して、攻撃を仕掛けてくるなんて……。

私はその剣ごと、シャガ―を吹き飛ばした。

「がはっ!」

壁に打ち付けられたシャガーが、血を吐いた。

「て……てめぇ……」
「痛いでしょう? でも……。ユーラは、もっと痛かったはずよ」
「知らねぇよ!」
「ユーラに……。謝って!」
「バカ野郎がぁ! クソ女!」
「……」

涙が出そうだった。
結局、ユーラをいじめた、ほとんどのバカ共が、謝罪をすることなく……。

……もう、疲れてしまった。
制裁を加えるのだって、楽しいわけじゃない。
身を削りながら、やってるのに。

どうして、こんなにバカが絶えないの?

「あと少しで……。俺がいなくても軍が出発するさ。そしたらお前の国は!」
「見ましょうか」
「え?」
「一緒に……。バッテンガルムが、崩壊する様を」

私は、シャガ―と共に、転移魔法で、王宮の外に出た。
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