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ベトリア・ダンテクルス

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王太子、シャガ―・ゼンドルムには、複数の愛人がいたらしい。

……ユーラと婚約しているのに。
なんてふしだらな男なんだろう。

その内の一人で……。
特に、ユーラに対して、対抗心を燃やしていた女。

侯爵令嬢の、ベトリア・ダンテクルス。
婚約しているわけでもないのに、なぜかこの女は、王宮に自分の部屋があった。

なんでも、シャガ―とまぐわうためだけに、その部屋を使用しているのだとか。
なんて気持ちの悪い話だろう。
軍国というのは、どこか気品が無くて……。旧時代的だ。

改めて、こんな国にユーラを嫁がせたことを、後悔してしまう。

「はぁ……。シント、遅いわね」

ベトリアの部屋に忍び込む。
何やら、独り言をつぶやいていた。

「どうして、今日に限って他の国に行かれてしまっているのかしら。つまらないわ」

どうやら、シャガ―に会いに来たが、留守だったらしい。
他の国……。
王族が、国民への示しも無しに、他の国に行くことなど、あるだろうか。

適当な言い訳をして、別の愛人のところへ行っているのだ。

それも知らずに……。バカな女。

「ユーラがいなくなったから、彼女との婚約を破棄して、私と婚約してくれるって、言ったのに」

……もうそんな話になっているのか。
勝手に惚れて、勝手に連れていったくせに。

シャガ―への制裁は、最後の最後だ。
ド派手にやってやる……。

「帰ろう……。シントも来ないし」

ベトリアが、部屋から出て行こうとしたので。
私はドアに、鍵をかけた。

「ちょっと……。開かないじゃない。どうして?」

ドンドンと、ドアを叩くベトリア。
そんな物理的な方法で、開くはずがないのに。
侯爵令嬢なのに、まともな教育を、受けてこなかったのだろうか。

「誰か~! 誰かいないの!?」

ベトリアがそう言ったので、私は透明化の魔法を解除し……。

「呼んだかしら?」
「ひゃあぁっ!?」

背後から、声をかけてやった。

「だ、誰よ……。あんた」
「私は、ユーラの姉のローザよ」
「ユ、ユーラの……」
「全部聞いていたわ。今の話。シャガ―と婚約するつもりなのね」
「……関係無いでしょ? 国から出て行った女の姉に」
「……」

ベトリアは、ユーラに対して、散々な嫌がらせをしていた。
精神的なものから、物理的なものまで……。

彼女もまた、スイーナと同じで、全て復讐していたら、キリがない部類に入る。

「ユーラに謝りなさい。そしたら見逃してあげる」
「謝る……? あなた、どうかしてるわよ。私から、シャガ―様を奪い取ったあの子の方こそ、私に謝罪すべきだわ?」
「そう……。残念」

復讐――決定ね。
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