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シズリーへの復讐

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「あなたから、きていいわよ」
「……なめた真似を!!!」

シズリーが、空中に手をかざした。
すると、木々が震え始め……。

頭上に、大きな火の塊が出来上がっていく。
なるほどね……。言うだけのことはある。

確かに、彼女は強い。
ただ……。その力の使い方を、間違えた。
力はいつだって、弱い者を守るために、使うものだ。

決して……。
弱い者を虐めるために、あるわけじゃない。

「くらええええ!!」

シズリーが、火の塊を、こちらに投げてきた。
こんなの……。杖を使うまでもないわね。

私は火の塊に向けて……。小さく息を吐いた。
すると、まるでろうそくの火が消えるかのように。

火の塊は、綺麗さっぱり、失くなってしまった。

「えっ……?」

何が起きたのかわからない。
そう言った様子で、シズリーが茫然としている。

「いいかしら。次は私の番ね」
「待って……。なんですか、それ」
「待たないわ」

私は、杖で地面を叩いた。

それに応えるかのように、地面から、木の根っこがメキメキと現れ、シズリーを拘束した。

かなり強い力で拘束しているので、シズリーが苦しそうな顔をしている。

「かっ……はぁっ……」
「シズリー。話せる?」

シズリーは白目を剥いてしまっている。
ちょっと強すぎちゃった……。

少しだけ、締め付けを緩めるように、木の根っこに指示を出した。

「ごほっ……。うええっ!」

シズリーが、思いっきり血を吐いてしまった。
しまったな……。
骨が何本か、折れてしまったのかもしれない。

殺すわけにはいかないので、私はシズリーに、回復魔法をかけてあげた。

「大丈夫? お話できる?」
「……」

シズリーが、まるで化け物でも見るかのような目を向けてきた。

「いいのよ? 次はあなたの番なんだから……。どんな魔法を見せてくれるの?」
「……あなたは、何者ですか」
「ハムリンも同じことを言っていたわね……。だから、私はユーラの姉の、ローザって言ったでしょう?」
「そんなことを訊いているのではありません! こんな力……、おかしいです! 私はバッテンガルムで一番の魔法使いですよ!?」
「浅はかなのよ。あなたの中の世界って、バッテンガルムだけなのね……。そういうのを、井の中の蛙って言うの。あのね? 世界には、あなたよりもず~っと優秀な魔法使いが、うじゃうじゃいるんだから。天狗になってたら、足元救われちゃうの。こんな風にね」

信じられない。
そう言いたそうな顔をしている。

「さて、どうしてあげようかな~シズリーさんは」
「やめて……。命だけは」
「心配しないで? 後日、ハムリンたちと一緒に、ユーラに直接謝ってもらうから……。少なくとも、それまでは殺さないわ?」
「それまでは……?」
「えぇ。もし……。ユーラが、あなたたちを許さないって言えば、容赦なく殺すけどね」
「いやぁ! 許してください! 私には、大事な家族がいるんです! 家族を守らないと」
「私の家族を傷つけたあなたが、それを言うの?」

思わず笑ってしまった。
シズリーの家庭のことは、調べてある。

母が病気で、父が戦死。
まだ幼い弟と、二人で暮らしているのだとか。

「ごめんなさい……」
「私じゃなくて……。ユーラに謝るのよ」
「わかりました! 謝りますから!」
「う~ん。でもね? あなたの場合、ハムリンと違って、魔法っていう、圧倒的に有利な道具を使って、彼女をいじめていたから……。そう簡単に、許すわけにはいかないの」

シズリーの表情が、絶望に変わった。

そんな彼女には……。

「や、嫌です。いやぁ……」

大粒の涙を流すシズリーのおでこに、手を当てた。

そして……。彼女の魔力を、無効化していく。
魔法の才能も、全部全部……。溶かしていって……。

「いやぁ!!! やめてよぉ!!!!!」

泣き叫び、暴れようとしたので、木の根っこに再び締め付けを強くしてもらった。

「魔法がぁあああ!!!! いやだああ!!!!」

うるさいなぁ……。

しばらくして、シズリーから、魔法というものを、完全に消し去ることに成功した。
魔力を消しただけじゃない。

魔法を学ぶための能力も、魔力を受け取るための器も、全て壊した。

だから、シズリーは二度と、魔法を使うことができない。

「あ、あぁぁああ! ううぅう……!」

木の根っこに解放されたシズリーは……。泣き崩れてしまった。

心が痛まないわけじゃない。

でも……。ユーラの悲しみを考えれば、こんなの、生易しいくらいだ。

「じゃあね。シズリー……。魔法が使えなくたって、生きていけるわ。頑張って」

シズリーは……。何も答えなかった。

最後は……。
主犯格、スイーナ・ヤンカレアね。

この子は本当に……。

……うん。
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