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一つになる二人。

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「一つに――ですか?」
「そうです。彼のように魔力を合わせれば、僕たちもきっと一つの大きな存在になることができるはず」
「わかりました。しかしどのようにすれば良いのでしょう」
「……おそらく、キスをすることが必要なのではないかと」

 照れている場合ではありませんが――。
 それでも私は、頬を赤く染めてしまいました。

 ウィン様に抱きかかえられながら、岩のつぶてを躱します。

「……優しくしてください」
「もちろんです」

 ゆっくりと――。
 美少年の顔が、近づいてくるのです。
 長いまつげ。きめ細やかな肌。
 私よりもずっと、綺麗な顔をしています。

 そして――。
 合わさりました。

 確かな熱を感じるのと同時に、魔力が流れ込んできます。

 気が付くと、私の背中から、大きな羽が生えていました。

「……ほほう。天使ときたか」

 ジャギー様のとばしてきた岩のつぶてを、今度は片手で受け止め、握り潰すことができたのです。

『リラ様――。今であれば、あの男を楽に倒すことができるはずです』

 愛が溢れてきます。 
 魔力がそのまま心に流れこんでくるようで、体の内側が熱いです。

 おそらく、私のウィン様を想う気持ちと――。
 ウィン様が、私を想ってくださっている心が、合わさったのです。

 大きな光の剣を作り出しました。

 ジャギ―様も、嬉しそうな顔をしながら、鉄の斧を生み出しています。

「いつでもかかってくるがいいさ……。君たちを打ち砕いてあげるから!」
「ウィン様。行きますよ――」
『はい。……魔力を――愛を、最大限届けます』

 コントロールしきれないほどの魔力が溢れ――。
 光の剣が、眩しいほどに輝き始めます。
 
 その光で、戦わずして、ジャギー様の斧は解けてしまったのです。

「嘘だろ――。この力は……」

 言葉を待たずして、私はジャギー様に斬りかかりました。
 叫んだのは、私の方かそれともウィン様の方か――わかりません。

 とにかく強い力が溢れてきて、爽快感のようなモノに駆られるまま声を出し――。

 ジャギー様を斬ったのです。

 ◇

「国王を倒せば……。それでこの戦いは終わりです」

 瓦礫の山の上で、私はウィン様と肩を寄せ合っています。
 勝利の余韻の中――。

 愛を確かめ合った人と、二人きりの時間を過ごしているのです。

 と言っても、何事かと様子を見に来た市民たちで、周りは大騒ぎになっています。
 それでも、不気味で黒々としている瓦礫にまで昇ってこようという人はいません。

「リラ様――」

 ウィン様が、頬にキスをしてくれました。
 今度は照れることなく、私もキスを返します。

 魔力は偉大です。
 たった一度、交わっただけで、何年も一緒にいたかのような――。気持ちの強さを生じさせます。

「行きましょうか。戦いを終わらせるために……」
「……はい」

 私はウィン様と手を握り……。
 王宮を目指しました。
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